医系会長
並木隆雄
(国際医療福祉大学成田病院)
薬系会長
堀江俊治
(城西国際大学薬学部)
この度、第41回和漢医薬学会学術大会を、2024年8月24日(土)、8月25日(日)の2日間にわたり、千葉大学亥鼻キャンパス(医薬看護系)で開催いたします。今回も皆様に現地で討論してほしいとの意味から、現地開催のみとしました。久しぶりの千葉地区での開催になり、医系と薬系の2名の会長で運営させていただきます。両名とも、実は過去の大会において実行委員長経験者で、本大会を熟知しております。さらに礒濱洋一郎理事長も実行委員会に所属に加わっていただき、オール千葉での開催する運びとなりました。
大会のテーマは「基礎と臨床の橋渡しの実践-二刀流を極める-」としました。
学会のスローガンの一つが基礎と臨床の橋渡しであることと、今回2名の会長で医系と薬系それぞれの分野での期待の若手・定評ある重鎮の方々をお招きして、皆様が注目・興味のある内容での企画を組んで両分野の最善の学術大会にしたいという意気込みからの命名であります。
今回は2つの特別講演をご依頼しました、1つが理化学研究所環境資源科学研究センターの齊藤和季先生に「ファイトケミカルゲノミクス」という新しい研究分野の開拓のご講演を、もう一つが国立医薬品食品衛生研究所,生薬部部長にご就任になった伊藤美千穂先生によるご講演を賜ります。
【医系会長の一言】
漢方医学の科学化が20世紀から叫ばれていますが、漢方医学の個別化医療と多数の結果から普遍性を導く科学との間に大きな溝があります。最先端の技術であり、多くの皆様の興味があるAIは漢方医学と親和性が良いと考えられているため、その問題のブレイクスルーとなりうる可能性があります。本年の日本東洋医学会の総会でも、AIの話題は取り上げられていますが、本大会ではそれを踏まえたさらに一歩踏み込んだ内容「AIによって和漢医薬学はどう変わるか-現状と未来-」(シンポジウム1)を企画しました。このセッションではAIによる光と影を考えたいと思います。また、エビデンスが重要視されている昨今、さらに重要さのます臨床研究のための学びのワークショップを、COVID-19の学会主導研究で中心的に推進した東北大学の高山真先生にお願いしました(ワークショップ2)。若い医療関係者が症例登録(CRF)の体験をする場とし、中堅の研究者の方にも役立つ統計の講義なども組んでおります。
土曜日の午前のセッションに漢方医学教育に医学/薬学のモデルコアカリキュラムに採用されてからの20年以上たちますが、その後の未解決な医学薬学教育の問題点を討論し(シンポジウム2)、その一つの解決策ともなる最先端の漢方教育や診断のための医療機器の引き続き体験できるワークショップ1に参加できるようにしました。今回のワークショップに参加することでワンランクアップができる臨床研究の知識の習得を目指します。
北里大学の日向須美子先生のコーディネートされた「和漢薬によるがん治療-アートとサイエンス」(シンポジウム3)では、基礎と臨床の二刀流を極められ、明日からの診療にもその発想が役立てられる内容と期待しています。
ユニークなシンポジウム6としては、昨今の解熱剤と鎮咳剤の不足の問題がありましたが、症状から見た場合「発熱と咳」は、生体防御反応であるということを再認識するための特別提言を行なうことを、会長として発案しました。このことに呼吸器内科の漢方診療の大家の巽浩一郎千葉大名誉教授が、ご賛同いただき、開催にこぎつけることとなりました。委員会報告としては、最近インパクトファクターが付いたTraditional & Kampo Medicine誌の編集委員会が最近の話題を紹介します(シンポジウム5)。いずれの特別講演、シンポジウム、ワークショップともども、見ごたえ、聞きごたえのある内容と自負しております。
【薬系会長からの一言】
和漢薬研究はその過程で悩まされる課題が多くあり、その解決のために様々なアプローチが試みられてきました。そこで、今回の薬系では“異次元”の研究論争を展開したいと考えております。そこで、次世代を担う若手研究者の会との共同シンポジウムも組み、本学会と若手の会の立ち位置で独自の研究方法論を説く「和漢薬研究の流儀」シンポジウムを立てました。このように様々な研究領域から和漢薬研究を展開している先生方の視点を伺い、深掘りしてみたいと考えております。また、恒例となりました「医師・薬剤師のための実践漢方教育講座」(2日目午後)、さらに、両分野にまたぐ「医学薬学教育」のワークショップ(ワークショップ1)では、和漢薬に関する情報交換を行うことで新たな治療学体系を構築し、その成果を社会に還元できればと思います。これらのプログラムにご参加の皆様による熱い討議を通して、和漢医薬学研究の道しるべが見えてきたらと願っております。
さらに追加で最後に、『薬屋のひとりごと』の原作者として、若者に絶大な人気のある日向夏先生が、天然薬物を専攻する若者に向けて、応援メッセージをいただけることになりました(驚)。先生の言葉に励まされて、自分の好きなことを極めていただければと、先生をお招きした主催者としては、切に若い方々の学会参加とこの学会の名前の普及並びに、天然薬物を専門とするものが一人でも増えることを期待したいと思います。
今回は、対面型学会の醍醐味である懇親会も久しぶりに復活する予定です。大会の目的の「和漢薬を様々な形で研究の対象とする薬学者、医学者、医師、歯科医師、薬剤師などが一堂に会して研究情報の交換」を楽しみにしております。ぜひ多くの学生にもお声掛けいただき、病院・薬局・研究室ご一同様での参加をお待ち申し上げております。
2024年3月吉日