血小板型フォンビルブランド病
【血小板型フォンビルブランド病とは】
血小板膜蛋白質であるGPIb/IX/V複合体の中のGPIbの異常症の一種で、フォンビルブランド因子に対する親和性が亢進している病態です。GPIb/IX/V複合体の異常症としてはBernard-Soulier症候群が知られていますが、同疾患ではフォンビルブランド因子に対する親和性が低下しており、その結果、血小板のいわゆる粘着が低下し、出血傾向を呈する疾患です。これに対して血小板型フォンビルブランド病では逆に親和性が亢進しており、その結果、フォンビルブランド因子が不必要かつ過度に血小板に吸着し、血漿中のフォンビルブランド因子が低下し出血傾向を呈する病態です。特に高分子マルチマーが吸着するため、抗原と活性の乖離が認められます。フォンビルブランド因子に異常はないため、フォンビルブランド病には分類されず、偽フォンビルブランド病(Pseudo-von Willebrand's disease)と呼ぶ場合もあります。


【遺伝形式】
常染色体優性遺伝形式をとります。


【臨床症状】
小児期からの鼻出血や歯肉出血、抜歯時止血困難、皮下出血、外傷後の止血困難などいわゆるフォンビルブランド病type1などに認められる出血傾向と同様の症状を呈します


【臨床検査所見】
PT正常、APTT延長
第VIII因子活性の低下
ただしAPTT延長はフォンビルブランド因子抗原量や活性に直接依存するものではなく、付随して低下する凝固第VIII因子活性に依存するため、必ずしもAPTTが延長するものではありません。APTTが基準値内である症例を経験することもしばしば経験します。延長したAPTTは直後および混和2時間後の補正試験で補正されます。

フォンビルブランド因子活性および抗原量は低下しますが、正常〜正常下限の例もあります。
血漿中の高分子マルチマーは低下している場合が多いものの、血小板中の高分子マルチマーは正常です。

血小板数は低下する例が多いものの、正常である例もあります。

血小板機能検査ではリストセチン誘発血小板凝集反応(RIPA)は亢進しており、特に通常凝集が惹起されないような低濃度のリストセチンでも凝集が認められる場合があります。また正常血漿やクリオプレシピテートなどによっても(正常なフォンビルブランド因子を補充するだけ)凝集が認められる場合があります。



【鑑別疾患】
  • フォンビルブランド病
    特にフォンビルブランド病type2Bとの鑑別は必要です。血小板機能検査における正常人のPRPとPPPとの組み合わせによって鑑別は可能です。また正常血漿添加による凝集惹起は本疾患に特異的な反応です

【治療】
デスモプレッシンは血小板凝集を惹起する可能性があるので、一般には禁忌とされています(この点はフォンビルブランド病type2Bと同じです)。
フォンビルブランド因子濃縮製剤の補充を行いますが、補充により血小板凝集が惹起され、血小板が減少したり血小板血栓が形成される可能性があるため、その補充は典型的なフォンビルブランド病より少量で必要最低限の投与に止める必要があります(この点はフォンビルブランド病type2Bとは異なります)。