日本産業衛生学会 医療従事者のための産業保健研究会
最終更新日:2024年04月09日 English  
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医療機関での産業保健の手引き
増補新訂
医療機関における
産業保健活動ハンドブック


医療機関での産業保健の手引き
医療機関での
産業保健の手引き
(絶版)



医療機関における
産業保健活動ハンドブック
(絶版)


日本産業衛生学会


代表世話人からのご挨拶

小川真規(2019年から)
(自治医科大学 保健センター 教授)


2019年度より、和田耕治先生の後任として代表世話人を務めております自治医大の小川と申します。
医療機関の産業保健は、徐々に浸透してきているものの、過重労働といった患者要因が絡むものは、なかなか手を付けづらい部分も存在しています。
本研究会では、医療機関従事者における産業保健に関心の高い、さまざまな職種の方に参加いただいております。皆様からの知恵を借りながら、医療機関における産業保健上の課題の解決に向け、糸口を見出していきたいと考えております。
皆様のお力添え、何卒よろしくお願いいたします。



和田耕治(2016年から2019年)
(国際医療福祉大学医学部・医学研究科公衆衛生学専攻教授)

医療従事者の健康と安全を守る取り組みは、医療機関が働きやすい職場を作り、良い人材を確保するという観点から進められるようになりました。取り上げられるテーマも年が経つにつれ、変化してきました。

過重労働は今でも課題としてはあるものの、以前よりは改善されてきた傾向がみられています。一部の患者さんからの暴言や暴力は、医療機関としても対応が進んできました。一方で、これまではとりあげられにくかった、職員間のハラスメントも話題としてあげられ、取り組みがなされるようになってきました。エボラウイルス感染症やMERSなど医療従事者の健康を脅かす課題が現れていますが、基本となる対策はすでに明らかになっています。

現段階では、医療従事者の健康と安全を守る取り組みの基本的な考え方や取り組みはすでに明らかになっています。今後の課題としては以下のような点があると考えています。

  1. より多くの医療機関で取り組みが実践されるようにすること。
    まだまだ取り組みがなされていない医療機関も多くあります。
  2. 医療機関が産業看護職を配置する仕組みをつくること。
    現段階では、診療報酬が個別についていないこともあり、医療機関が自主的に選任の産業看護職を配置するという考えにはいたっていないようです。診療報酬がないから産業保健をやらないというのもおかしな話ですが。
  3. 医療機関で産業看護職としての役割を担える人材が少ないこと
    現段階では、医療機関における産業看護職の認定などの資格がないため、医療機関としてもそうした人材を確保できないようです。

こうした課題を解決するために研究会では、

  1. 医療機関での良好な取り組み事例を共有する仕組みを検討します
  2. 医療機関が産業看護職を配置するような法的、または診療報酬上での仕組みを提案します
  3. 医療機関の産業医ならびに産業看護職の能力強化のための講演や、資格の仕組みの検討を行います。また、「産業保健」になじみがない場合には看護管理や病院管理としての活動への知識や経験の共有を図ります。

を今後の数年に検討を重ねたいと考えております。

医療従事者の健康と安全を守る取り組みは、医療従事者のみならず、医療の質にも関係します。つまりは、患者さんのためにもなります。医療の質の改善の観点からもますます取り組みがなされるよう尽力して参りたいと考えております。ご指導のほどどうぞよろしくお願いいたします。


織田 進 (2007年から2011年)

代 表 世 話 人 : 織田 進 20世紀の医療においては、病院がスケールメリットと自己完結型サービスを追及し、病院は大型化してきた。しかし、最近の医学の進歩、疾病構造の変化、社会の熟成、医療費の高騰などによって、病院と診療所の棲み分けおよび病診連携が必要になり、診療所はプライマリ・ケアを、病院は専門外来を開設するようになっている。また、第4次医療法改正で、一般病床が急性期病床と慢性期病床に区分され、急性期病床の平均在院日数の短縮が求められており、病院および診療所の平均在院日数は29.2日(1996年)であるが14日が目標にされている(濃沼より)。さらに、平成20年にはメタボリック症候群およびその予備群を対象に特定健康診査や特定保健指導の導入が計画されるのど予防医学を重要視する医療改革も進められている。

新臨床研修医制度の導入をきっかけに、指導医はますます忙しくなり病院離れが促進され、その診療科を閉鎖する事態も発生している。また、医師の偏在による地域病院の医師不足や労働条件の過酷さに加え医療訴訟のリスクなどにより小児科医や産婦人科医の不足も社会的に大きな問題になっているのは周知のことである。

また、競争、財源縮小、費用対効果の改善、組織の再編成や作業手順の見直しなどが医療分野でも求められている。このため、診療部門以外の外注化、公的機関からの民営化などが実施され、医師を含む人員不足や労働条件の悪化が進んでいる。一方、医療の質を向上させるため、EBM、クリティカルパス、カルテ開示などが一般的となり、電子カルテの導入にも対応しなければならないことから医師の負担はますます重くなっている。

以上、従来から存在する腰痛などの筋骨格系障害や放射線被爆、有機溶剤による疾患などに加え、医療従事者には、サービス業としての対人ストレス、人命の責任感とその重圧、長時間労働による過労および医療過誤に対する訴訟の増加などのストレスがあり、さらに、サリン事件のような化学テロ、SARSのような感染症など新たな脅威にも暴露する可能性がある。しかし、医療従者者のその仕事の性質上長時間労働が当然のこととして考えられ、ストレスなど医学的なことはよく理解していると誤解されてきた。このため、医療機関には産業保健に関する様々な課題があるにも拘らず産業医活動の重要性はあまり認識されていなかった。臨床研修医の過労死を契機に労働者性が認められるなど、より良い医療を提供するためには医療従事者自身が心身ともに健康であることの重要性が最近やっと注目されるようになった。2004年より、国立大学や国立研究機関・病院等の独立行政法人化が実施され、労働安全衛生法の適応を受けるようになったこともあり、医師の労働環境の改善等医療機関における産業医活動を活性化しなければならない。

参考文献
濃沼信夫:医療のグローバルスタンダード、エルゼビア・ジャパン、2000年




事務局 小森友貴 (2016年より)


この度、事務局を担当させていただきます小森と申します。私は臨床研修後、中小企業の嘱託産業医を経験した後、2009年より現職(京都第一赤十字病院)に専属産業医として就職いたしました。私が担当していた一般企業では衛生管理者や人事労務担当者、保健師(産業看護師)を中心に安全衛生チームがしっかりと構成されており、当時、法改正で導入されたばかりの過重労働面談を産業医活動の大半に充てていた日々でした。ふとそんな中、研修医時代を過ごした病院では「誰が産業医だったのか」「病院産業医はどういった活動をしていたのか」と考えることもあり、病院のソファーでほぼ毎日寝泊まりしていた心臓外科医らの姿を想い出しながら、改めて医療従事者の健康管理、産業保健活動の必要性を感じたことが現職に就いたきっかけの一つでした。
 現職に入職したころは、「産業保健」という言葉も理解してもらえず、職員の健康管理に時間を割いてくれる労務担当者もおらず、 誰にも相談できない中でやれるところから少しずつ産業医活動を行っていました。ちょうどその頃より本研究会に参加したことで外部の病院産業医や産業保健師の方々と面識を持つことができ、今まで情報を得ることができなかった他施設での活動事例などを学ぶことが出来るようになりました。これは自分の活動にとって非常に大きなプラスでした。
院内感染対策や化学物質管理、放射線被ばく、過重労働、メンタルヘルス対策、暴言暴力対策など様々な分野で産業保健の視点からの介入が必要です。 あまりにも莫大な量にて未だ何も手つかずの状態で産業保健活動が進んでいない施設も日本中にはたくさんあると推測します。 産業医や産業看護師、病院の健康管理担当者が何から手をつけ、どのように医療機関の産業保健活動を行っていくべきかなど、 この研究会を通して土台づくりから最新のトピックスまであらゆるテーマを議題に挙げ、皆さまと一緒に検討していければと考えております。
 まだこの研究会も発足して日は浅いですが、一人でも多くの病院産業医、産業看護師の皆さまに本研究会へご参加いただき、 各医療施設の安全衛生の繁栄に貢献いただければ幸いです。簡単ではございますが、事務局のほうから挨拶とさせていただきます。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。




世話人 (2023〜 )
 荒川 梨津子(石巻赤十病院)
 太田 由紀(帯広厚生病院)
 小川 真規(自治医科大学)
 小森 友貴(京都第一赤十字病院)
 中村 賢治(大阪社会医学研究所)
 槇本 宏子(海辺の杜ホスピタル)
 松崎 賢 (量子科学技術研究開発機構 放射線医学研究所)
 三木 明子(関西医科大学)
 吉川 徹 (労働安全衛生総合研究所)
 吉田 和朗(NHO長崎病院)
 和田 耕治(国際医療福祉大学)


歴代代表世話人
 和田 耕治(2015-2019)
 古川 徹   (2011-2015)
 織田 進   (2007-2011)


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