腎移植患者さんへの投薬について
サンディミュン、ネオーラル、プログラフは優れた免疫抑制効果で移植成績の向上をもたらしていますが、同時に副作用(腎毒性、高血圧、高脂血症、糖尿病など)も生じさせるため、血中濃度を適切に保つことが必要です。
これらの薬剤はチトクロームP450Ⅲ A 4で代謝を受けますが、この酵素を誘導あるいは阻害する薬剤との併用、さらに併用薬自身がこの酵素によつて代謝を受けるような場合、サンディミュン、ネオーラル、プログラフの血中濃度が変動することがあります。また、併用薬自身が腎毒性を有する場合、これらの持つ腎毒性が増強される可能性があります。種々感染症に対する抗生物質の使用においても、ほとんどのものが腎排泄型で腎毒性を有しておりますので、選択する薬剤はもちろんのこと、投与量の調節も必要となります。
つきましては、薬剤投与の際には下記を参照していただき、また、御不明な点がございましたら、御一報下さいますようよろしくお願いいたします。
医療法人 衆済会 増子記念病院 菜局
(052)451-1884
名古屋第二赤十年病院 3病棟 3階 腎臓病総合医療センター
「移植110香」
(052)832-1121(代)


抗生物質の投与について(商品名)
<第一選択>
ベニシリン系抗生物質(腎機能に応じて用量調節)ビクシリン、ユナシンなど
セフェム系抗生物質(腎機能に応じて用量調節)ケフラール、パンスポリンT、セフゾン、 トミロンなど
ミノマイシン(肝排泄型にて用量調節不要、金属イオンを含む栗剤の併用に注意、キレート生成による吸収低下)
<十分な注意を要する栗剤>
ニューキノロン系抗菌剤(強腎毒性、腎機能に応じて用量調節)バクシダール、クラビット、ロメバクト、シプロキサンなど
ST合剤(強腎毒性、腎機能に応じて用量調節)バクタ、バクトラミンC
抗結核剤(腎機能に応じて用量調節)エブトール
<血中濃度モニタリング下で使用できる薬剤>
マクロライド系抗生物質(CYP450ⅢA4阻害による血中濃度上昇)エリスロマイシン、ルリッド、クラリスなど(クラリスは用量調節老、要、他は肝代謝型にて不要)
抗結核剤(C Y P 4 5 0ⅢA 4誘導による血中濃度下降)リファンピシン(肝代謝)
<通常量可であるが使用頻度の少ない薬剤>
グラシン
< 内服では吸収されない薬剤>
塩酸バンコマイシン、カナマイシン
<薬物相互作用に注意すべき薬剤等一覧>
※注意する主な薬剤等を以下に記載してありますので、注意してください。
ネオーラル・サンディミュンについて
★併用禁忌(併用しないこと)
・生ワクチン ・プログラフ ・リバロ ・トラクリア ・クレストール
☆併用注意(併用に注意すること)
◎ネオーラル、サンディミュン血中濃度上昇
・Ca措抗剤:ヘルベッサー、ペルジピン、ワソラン
・マクロライド系抗生物質:エリスロマイシン、ジョサマイシン等
・クロラムフェエコール ・抗真菌剤:ジフルカン、イトリブール等
・卵胞・黄体ホルモン斉J ・アロシトール ・デプロメール、ルボックス
・フリンペラン ・ダイアモックス ・バクシダール _グレープフルーツジュース
◎ネオーラル、サンディミュン血中濃度低下
・リファンピシン・パナルジン ・サンドスタチン
・抗てんかん剤:フェノバール、アレビアチン、テグレトール
・シンレスタール、ロレルコ
・セイヨウオトギリツウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
◎ ネオーラル、サンディミュン腎毒性の増強
・非ステロイド性消炎鎮痛剤:ボルタレン、ロキソニン、ポンタール等
◎ その他の相互作用
・コルヒチン・・・ミオハシー、筋痛、筋力低下
・HMG― CoA遠元酵索阻害剤・・・重篤な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症の(リボバス・メバロチン等) 出現
・ジゴキシン・・・ ジゴキシンの血中濃度上昇
・テオフィリン・・・テオフィリンの血中濃度上昇
・不活化ワクチン・・・ ワクチン無効化
・アグラート・・・歯肉肥厚
・カリウム保持性利尿剤・・・高カリウム血症
・チアジド系利尿剤・・・高尿酸血症
(ラシックス等)
プログラフについて
★併用禁忌(併用しないこと)
・生ワクチン ・ネオーラル、サンディミュン ・トラクリア ・カリウム保持性利尿剤
・クレストール
★併用注意(併用に注意すること)
◎プログラフ血中濃度上昇
・抗生物質:エリスロマイシン、ジョサマイシン、クラリシッド、クラリス
・抗真菌剤:ジフルカン、エンペシド、イトリブール
・Ca措抗剤:アグラート、ニバジール、ペルジピン、ヘルベッサー
・プロセキソール ・グラングキシン ・グレーブフルーツジュース
◎プログラフ血中濃度低下
・抗てんかん剤:テグレトール、フェノバール、フェニトイン
・抗生物質:リファンピシン
・セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ•ワート)含有食品
◎プログラフ腎毒性の増強
・非ステロイド性抗炎症剤:ボルタレン、ロキソニン、ポンタール等
◎その他の相互作用
・不活化ワクチン・・・ ワクチンの効果を減弱
・免疫抑制作用を有する薬剤・・・過度の免疫抑制