麻疹の流行について(免疫抑制剤の投与を受けている方は麻疹の予防接種は禁忌となっています)

昨年の春(2007 年5~6 月)、若者中心に麻疹が流行しました。それをきっかけに文科省と,厚労省は中学1年生、高校3年生に対して4月から麻疹ワクチンの追加摂取を推奨し始めます。それを受けて、 健康な方でも、麻疹に罹ったことがあるかどうかを調べる抗体検査を受けたり、予防のためのワクチン接種が
行われているかたも見受けられます。 しかし、腎移植後に免疫抑制薬を内服している患者さんが、麻疹のワクチン接種を受けることは危険であり、禁忌となっているため,接種してはいけません。間違って接種を受けないようにお願いします。 ワクチン接種をすると、麻疹に感染する可能性があるためです。 麻疹の潜伏期は約10 日です。免疫抑制薬を内服しているともう少し短くなると思います。空気感染、飛沫感染、接触感染いずれの方法でも感染し、感染力は極めて強いと言われています。学校での感染が多いのは空気感染するためです。もし、罹患してしまった場合, 治療としては接触から5 日以内にガンマグロブリン製剤を点滴すること以外にはありません。感染者と接触した可能性がある人は、移植外科外来に至急連絡をしてください。 私たちは、移植前に麻疹の抗体をチェックしており、ほとんどの患者さんは抗体を持っています。しかし、抗体を持っていても感染する可能性あります(ただし、軽症で終わることが多いです)。
尚,麻疹の抗体価を検査する方法は色々あり,その中のCF 法は早期に低下するため使用せず,EIA 法またはPA 法または中和法を用いてください。
以下に麻疹の症状の現れ方を書いておきます。
約10 日潜伏期ののち、発熱で発症します。発熱期は咳、鼻水、結膜炎症状が強く、38℃以上の発熱が数日続きます。病気の経過中、いちばん感染力が強い時期です。その後、いったん解熱傾向を示しますが、すぐに耳後部付近から発疹が現れるとともに、39℃以上の発熱が数日続きます。発疹出現前後1、2日間に、口腔粘膜(臼歯(きゅうし)の横付近)に白い粘膜疹(コプリック斑)が現れます。この粘膜疹は麻疹に特徴的であるため、これを確認して麻疹と臨床診断されることがほとんどです。発疹はその後、顔面、体幹、手足に広がって全身の発疹となり、数日後、色素沈着を残して回復に向かいます。
2008.4 月

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター 小児科
文責 後藤芳充