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− カーバメイト系農薬による免疫機能への影響 −

  当研究室の李(卿)らは、カーバメイト系農薬による免疫機能への影響について検討を行い、その結果をArchives of Toxicology誌において公表しました。

  カーバメイト系農薬は化学物質過敏症やアレルギー等の免疫関連疾患などに関与していることから、カーバメイト系農薬の免疫系に対する影響を明らかにすることは、予防医学・社会医学上極めて重要ですが、 現状では免疫系に対する影響の機序は解明されていません。

  そこで、本研究では、まずカーバメイト系農薬であるジラムによる免疫系の主役であるナチュラルキラー細胞(NK)、リンフォーカイン活性化キラー細胞(LAK)及び 細胞傷害性T細胞(CTL)活性への影響について検討しました。
  その結果、ジラムが処理量と処理時間に依存してNK、 CTL及びLAK活性を抑制することを明らかにしました(図1)。

  またこれらの免疫細胞ががん細胞を傷害する際、抗がんタンパク質パフォーリン、グランザイム及びグラニューライシンを放出してがん細胞の細胞死を誘導します。そこで、さらにジラムによるこれらの抗がんタンパク質へ の影響についても検討したところ、ジラムが量依存的にNK細胞内の抗がんタンパク質パフォーリン、グランザイム及びグラニューライシンのレベルを減少させることも明らかにしました (1)。
  さらにジラムがヒトT細胞及び単球細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することも明らかにしました(2, 3)。

  以上の結果より、ジラムが免疫細胞内の抗癌タンパク質のレベルを低下させ、さらに免疫細胞の細胞死を誘導することによってNK、CTL及びLAK活性を抑制することが示唆されました。

  本研究は、平成22-25年度文部科学省科学研究費補助金(22590554)により行われました。

(原著)
(1) Li Q, Kobayashi M, Kawada T. Effect of ziram on natural killer, lymphokine-activated killer and cytotoxic T lymphocyte activity. Arch Toxicol 2012; 86 : 475-481. [PubMed]

(2) Li Q, Kobayashi M, Kawada T. Mechanism of ziram-induced apoptosis in human T lymphocytes. Arch Toxicol 2012; 86: 615-623. [PubMed]

(3) Li Q, Kobayashi M, Kawada T. Ziram induces apoptosis and necrosis in human immune cells. Arch Toxicol 2011; 85: 355-361. [PubMed]



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