SARS直後台北の食事(03年7月15日夕食・昼食、16日夕食)
←戻る

 2003年7月15日〜17日の三日間、サーズが終焉した直後の台北に院生の久保君と出かけた。というのも二泊三日で二名一室のホテル・朝食付きパック旅行が、サーズの渡航禁止が解除された直後のため一人約25000円というバカ安だったから。格安なのは、旅行社に台湾政府観光局から一人あたり1万円も補助が出たからという。むろん一名一室なら1万円以上は高くなるので、昼夜の飲食は私持ちということで久保君を調査助手にさそった。

 今回の目的は、故宮博物院図書文献館本と内閣文庫本の 『仲景全書』が別版らいしいと気づいたので確認するするためと、もし別版なら善本らしい故宮本を将来の復刻にそなえて複写しておくため。あいにく故宮では中国 医薬関係の特別展示をしていて原本の閲覧ができなかったが、マイクロフィルムで別版に間違いないのが確証され、肝心の
『仲景全書』本『宋板傷寒論』も久保君の助力でおよ そ複写できた。

 さて問題の食事だが、7月15日に到着したその夜は、ホテル近くの捷運西門駅から数駅の龍山寺にある夜市の海鮮食堂にでかけた。ここはかつて台北に留学 していた卒業生の大平君とも来たことがあり、安くて美味い。入り口付近にある魚貝類や野菜を選んで味付けを指示する方式で、台湾には多い。下写真のように貝料理
ばかり3品を注文しているが、理由は忘れた。たぶん食べたかったのが第一で、第二に貝やイカ・タコなど軟体動物に多いタウリンで免疫能が高まり、サーズ予防にもいいなどと考えたのかもしれない。

 それで上写真中央の巻き貝だが、牡蠣ソースの甘口炒めで、蒜苗(ニンニクの茎)が風味付けに入っている。左下はおなじみ生シジミの老酒漬けで、ニンニク・唐辛子のピリ辛で酒によく合う。右下は牡蠣と香菜の炒めあえで、きざみネギ・ショウガ・豆板醤・醤油をまぜたソースがかかっている。左上の瓶は台湾の陳年紹興酒で、まーまーのレベルだが辛口で私は好きだ。右上の台湾ビールは久保君が飲んでおり、これもまーまーで、台湾で最も庶民的ビール。この日は暑さと旅疲れがあり、すぐにホテルに帰って寝たと思う。値段は忘れたが、全部で2000円程度かなー。

 16日は朝から故宮。さすがにサーズ禍の直後ゆえ外人観光客はチラホラで、普段の喧騒がまったくない。しかし
クーラーに弱い久保君は図書文献館が寒くて鼻風邪をひき、台湾を出る時にサーズと間違われないよう風邪薬で熱を下げたり、成田入国では医務室に駆け込むなど、当時ならではの面白い事件だった。

 昼食はここのレストラン「上林賦」でいつもの特餐を食べた。写真上左は久保君ので、牛肉・ピーマンの炒め煮、豆腐の豆{豆+支}煮、キュウリとシラスの和え物、それと金針菜(ユリの花蕾)のスープ。眠気覚ましに缶コーヒーもある。上右は私ので牛肉・ピーマンの炒め煮、緑野菜(レタス?)炒めの唐辛子ソースかけ、キュウリとシラスの和え物、得体不明(練り物?)の焼き物、それと美味しくないけど無料のスープ。値段はまったく記憶にないが、二人しめて300元、1000円強だろう。

 さて今回最後の16日夕食は、中央研究院歴史語言研究所の蔡哲茂助教授に陽明山の 屋外レストラン(店名は知らない)に招かれた。彼の奥さんは故宮善本書庫主任の呉璧雍さんで、それで知り合い、よく食事に招いていただく。彼は陽明山の山 頂近くにあるこのレストランが好きなようで、以前も3回ほど彼の愛車で連れて行ってもらったことがある。下界より7、8度は低く、真夏でも夜はクーラー不 要なため、屋外が主なレストランが多い。しかし一般観光客が来られる場所ではなく、私も久保君もいい体験をした。当夜は蔡さんの博士課程生も故宮から車で 同行してくれ、帰りは院生が送ってくれたように思う。料理は4種しか写真に写っていないが、他に当レストラン特製の美味しい壷蒸しスープもあったはず。

 ここは付近で採れる山菜や野菜を使った料理が多いとのことで、今回もそうした品々だった。左写真の左奥は塩水(で煮た)鶏で、鶏肉本来の味わいが分かる。左側の炒め野菜(山菜?)は初体験だったが、美味しかった以外は味も名も思い出せない。中央はたしか紫○菜とか説明された珍しいもので、アップした右写真のようにブルーベリーで話題のアントシアン系色素があるため、紫○菜というのだろう。ツルムラサキに似たとろみのある食感だったが、あの臭いはなく、とても美味しかった。私は久保君に食べさせたくて土瓜(サツマイモ)葉もリクエストした記憶があるので、左写真右側の皿はその炒め物だろう。かつてサツマイモ葉は貧しい農民しか食べなかったというが、いま台湾でよく食べており、私も好きだ。どうして日本で食べないのか不思議に思う。ただこの時、久保君は故宮のクーラーによる風邪で発熱し始め、それどころではなくてかわいそうだった。

 ともあれ私も久保君も野菜好きなのでこうした料理にしてくれたのだが、いつも蔡さんにはご馳走ばかりで感謝している。来日する時は日本の珍味をと話すのだが、いまだその機会がなくて残念でしかたない。