総会長挨拶
第68回日本腎臓学会学術総会
総会長 南学 正臣
(東京大学大学院医学系研究科腎臓・内分泌内科学 教授)
第68回日本腎臓学会学術総会開催の機会をいただきましたことを、関係者の皆様に深く感謝申し上げます。日本の腎臓病学は現在も世界トップレベルにありますが、研究費や研究時間の不足などから、日本の研究力の深刻な低下が指摘されています。
今回の学術総会のテーマは「腎臓病の克服を目指して~Pride and Poise~」といたしました。「腎臓病の克服を目指して」は柏原直樹前理事長が掲げてこられたスローガンで、まさに日本腎臓学会の方向性を示すものです。柏原先生がコロナ禍で開催された第63回日本腎臓学会学術総会のテーマも「腎臓病の克服を目指して ―サイエンス、実践、英知―」でした。この目標を念頭に置き、達成を目指すべく、柏原先生のご許可をいただき、このスローガンを今回の学術総会のテーマといたしました。
“Pride and Poise”は、私が学生の頃、最強と言われたアメリカのプロフットボールチーム Raiders のスローガンとして、"Commitment to Excellence"とともに掲げられていたものです。日本語にすると「誇りと忍耐」というような意味になります。日本の医学界は非常に厳しい状況にありますが、自分たちの取り組みに誇りを持ち、つらい状況の中でも忍耐を持って誇りを持てる仕事を続けることで、世界トップレベルの診療と研究をさらに発展させると考え、この言葉をテーマに加えました。
2026年3月には、36年ぶりに国際腎臓学会の総会であるWorld Congress of Nephrology (WCN) を日本で開催できることが決定しました。これは、諸先輩方のご尽力と現会員の皆様のご支援・ご協力によるものです。WCN の母国での開催は、キャリアの中で1回あるかないかの貴重な機会です。今回の日本腎臓学会学術総会は、WCN の開催を目前に控えた非常に重要な総会となります。
“Science is global. Implementation is local.”であり、科学は世界共通のものですが、その成果を臨床に実装するためには、各国の事情に合わせた方法が必要です。今回の日本腎臓学会総会にも多くの海外の第一人者の先生方をお招きしました。国際標準と日本の現状を十分に理解することで、最適・最善の医療を患者さんに提供できると考えています。
本大会のプログラムは、このような趣旨に基づき、横尾隆先生のご指導のもと、プログラム委員会によって卓越した内容が作成されています。関係者の皆様に改めて感謝申し上げます。また、学会開催にあたり多大なご貢献を頂いた、山本事務局長、白根様をはじめとする、日本腎臓学会事務局の皆様に心から感謝いたします。
会員の皆様には、この記念すべき総会にぜひ積極的にご参加いただき、最新の知見を得るとともに、交流を深めていただけましたら幸いです。
横浜で皆様にお目にかかれることを楽しみにしております。