フィットテストインストラクター養成講座
医療従事者をエボラウイルス感染症から守る 全10回〔労働の科学/2014年〕
火山噴火時に健康を守る〔労働の科学/2013年〕
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東京検疫所東京空港検疫所支所検疫衛生課 阪口洋子 (2013年5月掲載)
第1回フィットテストインストラクター養成講座を受講させて頂き、インストラクターの称号を頂いた後、インストラクターとしてどのような活動をしているのか報告させていただきます。 私は、日本に常在しない病原体を海外から持ち込まないように水際で食い止めることを目的として、設置されている検疫所で看護師として働いています。 検疫所では、海外で公衆衛生上脅威となる感染症が流行すれば検疫を強化し、自分たちの身を守るために個人用防護具(PPE)を装着します。 その装備のひとつとして、呼吸用防護具として用いられるN95レスピレーターは重要な役割を占めています。 検疫を強化すれば乗客対応に翻弄されるため、その時にフィットテストを実施する余裕はありません。 よって、日頃から自分に合ったN95レスピレーターを把握して、着脱訓練をしておくことは必須であり、定期的にフィットテストを行わなければなりません。 しかし呼吸用防護具に特化して教育を受ける場がなかったため、フィットテストキットの説明書に沿って淡々とフィットテストを行うという状況でした。
フィットテストインストラクター養成講座を受講して、感染に関する基礎知識やマスクの種類や特徴、実際のフィットテストの方法を学び、インストラクターに必要な知識や技術が身につきました。 職場では得られたスキルを活用して、フィットテストを行っています。 私一人では全職員のフィットテストを行うのは難しいため、フィットテストを実施できる者を養成すべく、本講座で学んだフィットテストのやり方を指導しています。 今回私が職場で行った研修を受講してくれた人は、検疫官としての感染症に関する基礎知識はあるものの、N95レスピレーターの特徴やフィットテストの正しい知識については、 十分ではなく、私が本講座で学んだことを説明すると興味深く聞き入り、熱心に学んでくれました。 やはりフィットテストインストラクターとしての専門性と技術は本講座を受けることで得られるものであったと思います。 インストラクターとして、第2回以降のフィットテストインストラクター養成講座のお手伝いをさせて頂き、知識やスキルが深まり、職場で行った研修では、充実した内容で指導ができました。
全国の各検疫所においては、インストラクターとしての知識や技術を熟知せず、職員間でフィットテストを実施している現状があります。 検疫所は未知の感染症に遭遇する可能性がある現場です。呼吸用防護具はそのような現場では必要なものであり、適正使用が求められます。 よって、今後は、呼吸用防護具の正しい知識の普及とフィットテストの重要性を認識してもらえるような取り組みをフィットテストインストラクターとして行っていきたいと思っています。
フィットテスト、呼吸器保護に関する研究成果
震災関連報告
「震災後の現場のニーズに応える:フィットテスト研究会の取り組みから」
東日本大震災においてフィットテスト研究会は、フィットテストインストラクターの経験を生かして、被災地における建物からの粉じんやアスベストに対する対策について提言のまとめや、現地での呼吸用保護に関するセミナーを実施し、震災関連の呼吸器保護の活動を行った。震災に関連した取り組みを行うにあたっては、本研究会の運営委員と、本研究会が開催しているフィットテストインストラクター養成講座の修了生が本研究会のネットワークを通じて知り得た情報や、活動機会を活用して多面に被災地における種々の取り組みを行った。 本報告では、今後の震災後の石綿曝露防止の取り組みへの示唆をまとめた。
震災発生直後から、被災地における呼吸器保護の重要性が指摘されていたことから、呼吸用保護に関心フィットテスト研究会(事務局、労研)による呼吸用保護具の適正使用に関するセミナーを企画、開催した。 フィットテスト研究会は、呼吸用防護具の正しい使用法を普及するために2010年に設立された研究会である。 2011年3月19日には第2回のフィットテストインストラクター養成講座が予定されていた。しかし、東北地方太平洋沖地震がその開催一週間前の3月11日に発生したことから研究会メンバーで急遽相談し、特に粉じん・アスベスト対策に関して緊急に知見を整理し、現場ですぐに行える呼吸保護対策をまとめ提案する企画へと変更した。 2011年3月19日に、日本産業衛生学会、日本保安用品協会、産業医学推進研究会等の協賛を得て、緊急特別セミナーを開催した。緊急セミナーには医師、看護師、都市防災専門家、ライフライン・物流関連企業、検疫官、NPOや保護具メーカーの専門家等が参加し、当日の議論に基づいて、「復旧作業に従事する人や管理者が知っておきたいほこり(粉じん)・アスベストに関する7つのポイント」を作成しウエブ上などで公開した(資料1参照)。 本セミナーでは平時は競合他社であるメーカー3社、測定機器メーカー1社の共同により実施できたことは特筆すべき点である。 セミナーでは防じんマスクの正しい装着方法やフィットテストの演習を実施し、災害時に必要な情報を迅速に整理して、有害化学物質(特にアスベスト等)による健康被害を最小源にするためのネットワークつくりも進んだ。 その後、3月19日でのセミナー本研究会は、防じんマスクの提供を南三陸地区・気仙沼地区で行うと共に、4月上旬に現地調査の実施し、災害時の有害化学物質からの呼吸用防護の重要性の周知に取り組んだ。
A) 2011年3月19日 呼吸用保護に関する現地セミナーの開催
「復興現場作業者のための呼吸用保護具(防護具)の適正使用に関する緊急特別セミナー」
「復旧・復興作業に携わる者のための呼吸用保護具(防護具)の適正使用に関する現地特別セミナー」
B) 2011年5月14日 現地セミナー第1回(石巻)
1. 開催概要
日時:2011年5月14日(土曜日)14時~16時30分
会場:石巻赤十字病院 2階 会議室
主催:フィットテスト研究会
共催:石巻赤十字病院、日本産業衛生学会医療従事者のための産業保健研究会、中皮腫・じん肺・アスベストセンター
協力:スリーエムヘルスケア、興研株式会社、重松製作所株式会社、柴田科学株式会社、株式会社日本イーライリリー
2. セミナー報告
被災地においては多くのボランティアが被災家屋のかたづけなどの支援を行い、また復興に向けて専門事業者によるがれき撤去作業が本格化している。
しかし、非常時であっても、自分や同僚の健康と安全を守ることを忘れてはいけない。被災地での粉じんの吸入により、肺炎などの健康障害の発生が疑われている。
また、これまで行われた現地調査により、被災地のがれきの中にアスベストを含有する製品が含まれていることが確認されている。
よって、粉じんによる急性呼吸器障害や、アスベストによる中皮腫やじん肺など慢性呼吸器疾患の予防のためには、がれきを処理する時に適切な防護対策をとることが必要である。
事実、阪神大震災の復旧作業に関わった男性が中皮腫を発症し、労災認定を受けた事例がある。
国としても、これらに対応するため、3月下旬には環境省から「東北地方太平洋沖地震における損壊家屋等の撤去等に関する指針(環境省 2011年3月25日付)」、
さらに3月下旬に厚労省から被災地における安全衛生対策に関する通知があり、
特に4月下旬には、「東日本大震災に係るがれき処理に伴う労働災害防止対策の徹底について(基安発0422第1号2011年4月22日付」が相次いで出されている。
フィットテスト研究会は、本セミナーにおいて、上記の行政からの通達等を踏まえ、がれき処理の際の粉じんやアスベストの危険について再確認した。
また同時に、呼吸器を守りながら作業をするために必要な呼吸用防護具(呼吸用保護具、マスク)の使用法について知っておくべきことを紹介し、呼吸用保護具のフィットテストの実習を行った。
1)セミナーの目的
2)セミナー参加者
現地で活動するNPO所属のボランティア看護師およびボランティア医師、被災した石巻市民病院の看護師、保健所職員、自治体現場担当者、がれき処理活動を行っている企業の現場責任者、消防署員、現地高校養護教諭(高校の隣にがれきの集積所あり)、石巻赤十字病院の医師、および全国の赤十字病院から派遣されてきた看護師など、約30名が参加した。
3)セミナーのスケジュール
<前半:講義・トピックス>14:00-15:30
<後半:マスクの正しい使用方法の実習>15:40-16:30
4)参加者の感想
参加者1:榮留富美子、フィットテストインストラクター 自衛隊中央病院感染管理認定看護師
「今」「この時間に」「ニーズをうけ」やることの重要性を実感しました。 きっと、石巻赤十字病院の呼吸器内科の矢内先生の熱き思いが、吉川先生、太田先生、外山先生へとつながり、そこからのネットワークで、 それぞれの関係者の心に響いての今回のセミナーにつながったのだと思います。 そしてセミナーには、消防、医療関係者、保健所、建設関係、商業高校の先生、ボランティアなどなど40名以上の多くの参加者がありました。(報道関係もきていました) 印象に残ったのは、ボランティアが活動している湊中学校の避難所の悲惨な様子、商業高校の瓦礫の中での生徒さんをどのように守るかと必死だった先生です。 心が痛みました。生活環境と作業環境が密着する中、がれきの作業による粉じんやアスベストの脅威は大きいと思います。粉じんによる急性呼吸器障害や、 アスベストによる中皮腫やじん肺など慢性呼吸器疾患に罹患する可能性があるからです。 これらの予防のためには、がれきを処理する時をはじめ、適切な防護具を選ぶこと、 適切に防護具を使用する防護対策が重要であることが理解できたと思います。 復興作業に関わる際に、必要な呼吸用保護具を多くの方に知って頂き、正しいN95マスクの装着で予防できればと願っております。 今回私は、被災された方へ少しでもお手伝いができ、自分の勉強もさせて頂きました。 ありがとうございました。
参加者2:小池昭夫、フィットテストインストラクター 埼玉協同病院 健康増進センター所長
今回の震災で最大の被災地である石巻で、この時期に現地で活動する医師,看護師、消防隊、解体業者、支援活動をする方たちに呼吸保護具についての講習が行われたことは労働者への保健予防の面から考えて大変重要なことです。 3月に埼玉のスーパーアリーナへ福島県双葉町の市民が集団避難をして来ました。 私はそこへ医療支援に行っていましたが現地に入ったのは今回が初めてでした。 3/15には塩釜の病院に寄りましたが被災地の様子ではやはり石巻の被害の方が大きいと感じました。
参加者3:長瀬仁 フィットテストインストラクター 小牧市民病院 感染管理認定看護師
震災後N95マスクはかなりの数があったらしいのですが、サージカルマスクと同様なイメージで避難所等に配布されたようです。 マスクは現物と着用方法とをセットで配布しないと意味をなさないものであるため、このようなセミナーを随時開催することはとても重要だと思いました。 また、仙台から石巻赤十字病院に行く間に被災地を通りました。車から見える範囲においても津波による家屋の建材が山積みされ、道路にはヘドロが乾燥した埃が堆積し車や風が吹くたびに舞い上がっていました。 これからも、N95マスクの正しい選択と着用方法をフィットテスト研究会で広められるよう、今後も参加できればと思います。
C) 2011年6月18日 現地セミナー第2回(石巻)
榮留富美子1,2、矢内勝3、外山尚紀4,5,6、金成千鶴1,7, 長瀬仁1,8、太田寛1,9
1. 開催概要
日時:2011年6月18日(土曜日) 13時~16時30分
会場:石巻赤十字病院 2階 会議室
主催:フィットテスト研究会、石巻赤十字病院 共催:日本産業衛生学会医療従事者のための産業保健研究会
協力:スリーエムヘルスケア、興研株式会社、株式会社重松製作所、柴田科学株式会社、株式会社日本イーライリリー
2.セミナー報告
1) はじめに
今回の東日本大震災は、地震と巨大な津波を伴ったことにより、未曾有の災害となり、沿岸部は破滅的な状況、そして多くの方々が避難生活を余儀なくされている。 今回、セミナー前日に石巻に入り、東京労働安全衛生センターの外山尚紀氏のアスベストの環境調査に同行させて頂いた。石巻や女川の町や商業高校脇の一次仮置き場周辺は、粉じんが舞い、臭いも漂い、無数のハエが飛び交っていた。場所によっては、目が痛くなるところもあり、がれきに含まれる人体に有毒な物質などが、気温の上昇と雨により、より悪影響を及ぼすことになるのではないかと危惧する。マスコミによると、宮城県は東日本大震災で発生したがれきの撤去を進めるために、二次仮置き場の設置場所を5ヵ所に決定したようである。そして、この1年間に県内から排出されるがれきの総量は、一般廃棄物(ごみ)の約23年分に及ぶとも言われ、今回の震災で発生した災害廃棄物の総量は1500万から1800万トンと推計されている。現在、市町村が設置している一次仮置き場に集められ、今後、二次仮置き場に廃棄物を運搬し、可燃物の焼却や破砕処理を行うこととなり、多くの粉じんが舞うであろう。劣悪な環境の中、がれき作業に関わる方々や地域の住民にも呼吸用防護具の必要性を伝えていく必要性が重要である。 今回の第2回セミナーは、第1回セミナー後、矢内勝呼吸器内科部長との話し合いや第1回セミナー参加者の様々な思いを検討した結果、この時期に被災地のニーズをうけ、関係者の熱き思いから開催することとなった。第1回セミナー当日の夜もNHKニュースでは、粉じんに対する防護の必要性が報道され、そのニュースを見た一般の人から反響もあった。また、地元新聞「河北新聞」にも掲載された*1)。今後も復興・復旧作業が続けられる中で、呼吸用防護具のセミナーを必要とする方々がいる限り、粉じんやアスベストの危険性や呼吸用防護具の重要性を継続的に注意喚起していくことが必要である。
また、フィットテスト研究会としてさらに研修の内容を精選して、セミナーを継続していく必要があると考える。
2) セミナーの目的
3) セミナー参加者
現地で活動するNPO所属のボランティア、診療所の医師、現地高校養護教諭、石巻赤 十字病院の医師・看護師など、約15名が参加した。
4) セミナーのスケジュール
<前半:講義・トピックス>13:00-14:30
<後半:マスクの正しい使用方法の実習>1450-1630
5) セミナー内容
本セミナーも、主催者である石巻赤十字病院呼吸器内科の矢内勝氏の挨拶から始まった。震災・津波後3か月が経過した被災地では、粉じん対策の重要性がさらに増しており、呼吸用保護具は肺や気管を守るためにも重要であり、今回のセミナーを開催し、使用法を学ぶ意義を強調された。
<前半>
1. 北里大学 医学部公衆衛生学 太田寛氏による「地震・津波、復興支援における呼吸用保護具の重要性」についての講義
被災地のがれき撤去時に発生する粉じんの危険性と呼吸器用保護具の必要性や粉じんに混じるアスベストに対しての防護が重要であることを強調した。
厚労省からの2つの通達、「東日本大震災に関わるがれき処理に伴う労働災害防止対策の徹底について」(4月22日)、「初めてがれき処理に従事する労働者等の労働災害防止について」(4月25日)について触れ、
厚労省が健康被害を危惧していることを示した。さらに環境省において「東日本大震災におけるアスベスト調査委員会」が設置され、国としてもがれき作業における呼吸器疾患予防の重要性を認識していることについて説明した。
次に、サージカルマスクとDS2(N95)マスクの違いを分かりやすく説明したうえで、特に、それらを正しく使用することの重要性について説明した。
そのためには、フィットテストをおこなうことが重要であることを伝え、また被災地で活動する人すべてにDS2マスクが必要なわけではなく、作業のリスクに応じた対応をすることが重要であることを強調した。
2. 赤十字病院企画調整課の阿部雅昭氏による「震災・津波の発災直後の石巻赤十字病院の診療状況、受診者数の推移などについて」報告がなされた。
発災直後の混乱の状況と、刻々と変わる医療ニーズについてグラフや写真を示しながら報告した。直後には、電気・水道・ガスなどライフラインが途絶し、通常の医療が行えないなかで、いくつかの幸運も重なり、何とか医療を行うことができた。例えば、ヘリポートの場所が屋上ではなく地上に設置されていたことは、エレベーターが完全に使えないという状況では、とても有利に働いた。診療をスムースに行う工夫をしつつ、当時の現場の苦悩を交えての報告であった。
3. 赤十字病院呼吸器内科医師の矢内勝氏による「被災地の拠点病院として呼吸器内科を中心とした動きについて」の報告
地震直後の在宅酸素治療者が停電のために、一時的に石巻赤十字病院にHOTセンターを開設し収容したことについての対応や震災後60日間で、肺炎や気管支喘息など呼吸器疾患で同病院に入院した患者は、前年度同時期の3倍に及ぶ患者数であるなど患者の推移についても説明された。 さらに、地震・津波直後の肺炎の増加、肺炎の原因として3つの可能性を挙げた。1.高齢者の誤嚥性肺炎、2.津波による溺水による肺炎、3.空中の粉じんによる感染性/化学性/アレルギー性の肺炎の3つである。 また、がれき処理などにより発生した粉じんにアスベストが含まれている可能性があり、がれき処理のボランティアや土木作業者が将来、中皮腫などの呼吸器疾患を罹患する可能性があることに強い危機感を表明した。
これらの疾患を予防するために、呼吸用保護具の使用や水の撒布等による予防策の必要性について説明した。
4. 東京労働安全衛生センターでアスベストの研究者の外山尚紀氏による「がれきの中にみられるアスベスト含有建材の具体例や対策」の講義
外山氏は今回の震災に対して環境省が「東日本大震災におけるアスベスト調査委員会」の委員でもある。その中で、アスベストの特徴や危険性を分かりやすく画像で示され、また、第1回のセミナーで参加された現場監督と現地の環境調査のときに出会い、呼吸用保護具や散水などのアスベスト対策を行っていた事例を示し、興味深く聞くことができた。
また今回の被災地での環境測定で発見したアスベストの実例や今後も環境省と協力してアスベストの安全な処理を目指しての活動を継続することを報告された。
<後半>
1. マスクの正しい使用方法の実習
DS2(N95)マスクを正しく使用するために、その特徴とフィットテスト、シールチェックについての説明を行った。正しく装着する方法やポイントを協力メーカー及びフィットテストインストラクターより説明を受け、実際に着用する実習を行った。その中で、DS2(N95)マスクには様々な形態や大きさがあることから、自分にあったマスクを使用する重要性について、再認識することができた。正しく使用することで漏れを防ぐことができ、危険な粉じんから自分の身を守ることができることを体験することができた。
さらには、粉じんを拡大画像で見ることの出来る装置により、防護すべき粉じんの粒子の小ささを確認し、粉じんが目に見えない様な状況でも防護の必要があることを感じることができた。
2. 質疑応答と意見交換
参加者からは現場でのマスクの使用法が適正でなかったり、「行いたくても限られた品しかなかったりで・・」という声が聞かれた。
また、「実際に今使用しているマスクで良いのか?」「この使い方でよいのか?」など不安の声が聞かれていたが、現在使用中のマスクとセミナーで使用のマスクとの違いを体験した後は、「マスクの規格の違いや適正な装着法がわかり良かった」と言う感想が聞かれた。 他にも、避難所や商業高校など現場に密着した発言も聞かれ、対処を検討していくこととなった。
長期的な健康被害発生の可能性は、被災した自宅をかたづけている一般の人達にもあるため、呼吸器疾患の予防について広く知らせていくことが必要かつ重要である。
3. 今後の活動、一般市民への啓発
がれきのかたづけを行っている一般の被災者にも、粉じんに対するマスクの使用が重要であることを認識してもらうことも重要である。
そして、今後は復興に携わる多くの人に伝える必要がある。
例えば、ボランティア、警察、消防等である。ボランティアに対しては、事前に東京や大阪などでセミナーを受けたうえで現地入りするような方法を考慮したり、今後は ボランティアの主催者などでも講習会が開催できるようにセミナーをパッケージ化することなどにより、継続して呼吸器保護の重要性と伝えていく方法の検討がさらに必要である。復興は1日1日の積み重ねである。
そして私たちにできることを続けたいと思う。
6)参加者の感想
参加者1:長瀬仁 小牧市民病院 感染管理認定看護師
私は本セミナー前日、労働安全衛生センター外山尚紀先生と石巻市内のアスベスト調査に同行し粉じんやアスベストの飛散を目の当たりにしてきた。被災地の瓦礫は徐々に撤去されているが、その瓦礫は集積場に山積みされていた。その横にある学校の生徒は学校生活時間においてマスクの着用が欠かせない。粉じんやアスベストによる健康被害は10~20年後に現れるので、今できる呼吸用防護具の暴露予防が必要であると感じた。被災地での本セミナーはとても重要であるため、私はこれからも活動を支援し復興作業による健康被害が減ることを願う。 私の住む東海地域でも今後、大規模震災がおこりうる可能性がある。その時には本セミナーの経験を生かした呼吸用防護具の使用を推進したい。
参加者2:金成千鶴 医療法人 永寿会 恩方病院 感染管理認定看護師
今回、環境調査と特別セミナーに参加し大変貴重な経験をしました。被災地に入ると作業による粉塵が舞っており眼や喉が痛くなる事がありました。 その中で作業している方々やボランティア・瓦礫の傍で生している人々の健康を考えるとマスクの適切な防護具を選択する事や適切に使用することの重要であることが実感されました。 セミナーでは「実際に使用しているマスクで予防がきちんとできているか?どの様に装着したらいいのか?と不安でした。」などの声がきかれ、演習でマスクの適切な使用方法を体験してもらうことで不安が解消されたとのことでした。 これからも、被災地での作業にあたる方々やボランティアの方々又そこでの住民の方々へのマスクの必要性や適正使用法を伝授していかなければいけないことだと感じます。 復興にはまだまだ時間がかかると思われますが、一日でも早く復興出来る事をお祈り申し上げます