Road to BMJ (or Road to Boston)

こんなところを読んでいる人の中には,Road to Natureは遠くになりにけりという人も多いだろう.でも,サルでも書けるBMJの著者が紹介するRoad to BMJなんて,面白そうだなと思いませんか?

池田正行.早い,安 い,旨い臨床研究を目指してー意識障害の診断におけるバイタルサインの価値の研究からー。JIM 2007; 17: 121-123

このページでは,日常診療の中で,研究費ゼロ,患者負担ゼロ,倫理委員会不要,いつでも,どこでも,誰にでもできる,素晴らしい臨床研究のアイディアを公開します.必ずしや,BMJ(時にはNature狙いのものも)に載せられる素晴らしいアイディアですが,どういうわけか誰もやりたがらなず,宝の持ち腐れになっています.BMJでインパクトファクターを荒稼ぎしたい人,Ignobel賞をとってハーバード大学まで呼ばれたい人は,どうぞご連絡ください.→massie.ikedaあとまあくgmail.com

臨床試験登録システム
臨床試験登録システムは本当にpublication biasを解消するのか?

医学教育

医学教育における笑いの質的研究
文章にせよ,プレゼンにせよ,どこでどうやったら笑いが取れるか,私はいつもそこに集中する.なぜなら,笑いは,教育・学習効率性の最も強力な指標だからだ.「気分いい」が一瞬に濃縮されたもの.それが笑いだ.

読み手,あるいは聴衆が,一瞬にして自分の認知の歪みや自動思考に気づき,メッセージの真意を捉え,心から納得した時に,初めて笑いが生まれる.笑いは自分&他人への攻撃性を消失させる.苦悩(攻撃性)を伴うメッセージは誰でも早く忘れたいが,笑いを伴うメッセージは,自然と記憶に残り,容易に再生される.

救命救急分野

ショックバイタルの臨床的意義の研究
宮城 征四郎先生がしばしば強調なさるショックバイタル(血圧低下+頻脈で、収縮期圧mmHgよりも脈拍数が明らかに高い)の重要性については、多くの医師が経験的・直感的に理解していますが、どういう患者さんで、どのように重要なのかは明らかになっていません。

目的:ショックバイタルって一体何だろう?その臨床的意義を明らかにする。

背景にある疑問の数々
1.ショックバイタルの基礎疾患にはどのようなものがあるのか?
2.ショックバイタルは予後(エンドポイントの例として、入院期間、生存・死亡)とも関係があると推測されるが、それは本当か?
3.収縮期圧60で脈拍120は誰でもショックバイタルと思うが、収縮期圧100で脈拍110というのはどうか?少なくとも、収縮期圧60で脈拍120とは病態も予後も違ってくるだろう。どこをカットオフポイントにすれば適切だろうか?

対象と方法(基本的にはBMJ 2002;325:800と同じです)
Settingは救急外来。対象は来院患者全例
評価項目は、バイタルサインと意識障害(Glasgow Coma Scale)
アウトカム評価は、入院期間、生存・死亡、主要な最終診断(ショックバイタルの原因疾患)
観察期間は1年が望ましい(季節によるバイアスを避けるため)

普段の診療そのもので、お金や設備は一切不要、徒手空拳でBMJに載せられます。

また、全く同じデータセットから、BMJ
2002;325:800のバリデーション論文もできます。これも、施設が2つもあれば、やはりBMJに載せられるのではないかと思います。一粒で二度美味しいわけです。

誰でもどこでも明日から(あるいは今日から)始められる研究なので、もちろん勝手に始めていただいて結構ですが、共同研究の御提案も歓迎します。といっても、デザインというほどのこともないぐらい、至極簡潔明瞭で、かつ頑健な研究計画なので、私が貢献できることは全くないのですが。

重症患者予知のためのお告げの研究

問診(媒体は音声言語)、診察(診察手技で働けきかけて非言語性メッセージを引き出す)、検査(侵襲的な手技や大がかりな機械を使って、非言語性デジタルメッセージを引き出す)は、いずれも患者から教えてもらう行為で、我々はそうやって患者に教えてもらわなければ商売にならない。
そのメッセージの中でも、受療行動は、最も初期に示される患者からの非言語性メッセージだ。受療行動は、患者本人の生物学的状態よりも、本人の”好み”や、社会的な環境に影響を受けやすい。だから、生物学的診断では、多くの場合は受療行動は重要視しない。

しかし、いつも安定している受療行動が変化した場合は話が違ってくる。本来影響が大きくて安定しているはずの本人の”好み”や、社会的な環境をも凌駕する新たな重大なイベントが起こったことを意味する。その新たな重大なイベントが社会的なものに求められない時、我々は、患者に重大な生物学的変化が起こったと考える。私は、こういう患者の特異な行動を、「お告げ」と呼び、患者から学ぶ過程を効率化したい。

お告げとは何かと?具体的な事例で考えてみよう.

”ある中年男性が腹痛で救急外来を受診したとします.病歴と身体所見で尿路結石を疑って患者さんが採尿で席をはずした時に,付き添ってきた奥さんが心配そうな顔をして,”ふだんは医者ぎらいで,風邪で寝込むようなことがあっても,絶対に医者には来ない人なんです”ってあなたに囁いたとしますね. その一言だけで,あなたの頭の中の警報閾値はぐんと下がって,たとえ尿潜血が陰性でも(陰性だからこそ?),”こりゃ,うっかり家には帰せないな”と思うわけです.これが,”お告げ”です,この奥さんの一言が,経験を積んだ臨床医の決断に重大な影響を及ぼすのです.このお告げの診断価値を検証する.

検証する仮説は,”医者ぎらいにもかかわらず,救急外来にやってくるのは何か重い病気があるはずだ”という”お告げ”です.
方法:基本構造はpospective cohort studyです.問診表で,年齢,性別といった基本的な要素とともに,患者さんが,どのくらい医者嫌いかチェックする項目を設けてスコアリングする.たとえば,”風邪ぐらいでは医者にかからない”,”本人が嫌がるので家族が無理やり連れてきた”,”何日間も我慢していた”,”酒,タバコが大好き”,”来院の時間帯”といった具合.このスコアリングと,その後の転帰(入院,入院時診断,最終診断,入院日数,手術の有無)を比較検討する.スコアリングの各項目で層別解析,ロジスティック回帰分析,スコアリング総点数での尤度比,ROC曲線といった分析までできます.統計のことはいくらでもお手伝いしますから,やりませんか.

神経内科分野
学校体育科目による筋ジストロフィーの鑑別診断
デュシェンヌのように,就学前に症状が明らかになってしまうものを除いて,筋ジストロフィーでは,学校時代の体育活動が,診断のてがかりなることがしばしばある.例えば,三好型筋ジストロフィーでは,日常生活に障害が出るずっと前,中学生時代から垂直跳びがひどく苦手だったとか,水泳ではクロールはできたけど,平泳ぎがだめだったとか,顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーでは,バスケットボールはだめだけど,サッカーは得意だとか,苦手な・得意(比較的後までできていた)スポーツや、苦手・得意な動作(中学校や小学校の時の体力テストの各種目で特に何が苦手だったか)をチェックリストにして、筋ジストロフィーの鑑別診断表を作って,日本中の各施設で検証してもらえば、立派な仕事になるでしょう.

セガかナムコか
私は、学生時代から、セガと共同で(ナムコでももちろんいいんですが)、診断+リハビリ機器を開発したいと考えています。レーシングゲームを、神経変性疾患の診断(パーキンソン病ではすくみ現象のため、スタートが遅れ、固縮と寡動のためブレーキの遅れ+踏み込み不足が起きる。脊髄小脳変性症では、運動失調により側壁に衝突する回数が増加し、測定過大(hypermetria)のため、アクセルの負荷しすぎが起こる)+運動障害のスコアリング+リハビリテーション機器+リハの効果測定 という、スーパー診断+リハ機械に使いたいと考え続けています。これで論文を書けば、JAMAでもランセットでもどこでも載せられますし、日本のレーシングゲームが、カラオケのように、世界中のリハビリテーション施設を席巻することになります。その下地はすでにできていて,ナムコは,ヒット作,”太鼓の達人”をリハビリ用機器にしています。

蹲踞試験の検証:しゃがむときに踵が床につくのは,筋緊張低下や腓腹筋の筋力低下を示す病的所見であると習ったのですが,神経学的に正常と思われる若い人がコンビニ前の路上でしゃがみこんでいるのを見ると,踵を地面につけたままです.年齢,性別で,蹲踞試験の特異度を知りたい.

小字症micrographia,大字症macrographiaって,本当?:パーキンソン病は小字症,脊髄小脳変性症は大字症っていいますけど,どこまで信用できるのでしょうか?その感度,特異度,医者による判断の差はどうなんでしょうか?

パーキンソン病の患者さんの体臭:これは,ある学生さんが教えてくれたのですが,パーキンソン病の患者さんて,独特の体臭がしませんか?加齢臭とは違うと,はっきり彼は言っていました.神経内科医の方で思い当たる節はありませんか?私は,これは面白いと思っています.もしかしたら,パーキンソン病の生物学的マーカーが見つけられるかもしれない.それが,病態と新たな治療に結びつけば,狙うのはBMJではなくNatureになるでしょう.一山当てたい人,連絡ください.もちろん,これを読んだ後,密かに初めてもらってもいいですけど,私と組んだ方が得ですよ.私以外は相手にしてくれないだろうから.

精神科分野
自閉症の男性は背が高くて美男子が多い?
私自身,そういう感じを持っていますし,周囲にも賛成してくれる人が結構います.この仮説を検証すれば,背が高くてハンサムな医学生は外科を志し、容貌の冴えない医学生は内科を志すという仮説を検証した論文と同様,BMJに論文が載せられまっせ.

精神障害者におけるカラオケの腕前の研究:病棟でカラオケ大会って,なんであんなに音痴ばかりなのでしょう.そう思ったことはありませんか?2004年のIgnoble賞を獲得したカラオケを利用して,あなたもIgnoble賞を狙いましょう.
検証する仮説は,”統合失調症の患者はカラオケが下手である”
知りたいことはたくさんありますよね.カラオケ下手は向精神薬の影響ではないのか,病型によってカラオケの上手下手に差があるのか,治療によってよくなるのか,病前はカラオケが上手かったか,好きだったか?他人の下手なカラオケを聞いていて不愉快ではないのか?病棟ではマイクの奪い合いは起きないのか?統合失調症の患者さんが好きな曲目はあるのか?

統合失調症でよく生じるディスバインディン低下は音処理を障害する
Biotoday 2011-10-16 - 統合失調症患者においてしばしば認められるdysbindin(ディスバインディン)蛋白質の低下は脳での音処理障害を引き起こすことを示したマウス実験結果が発表されました。
また、多数の神経細胞活動の速やかな開始/停止切り替え能の障害やパルブアルブミン陽性介在ニューロンの低下がディスバインディン低下に伴う音処理障害に寄与しうることが示されています。
関連ニュース
Penn team links schizophrenia genetics to disruption in how brain processes sound / Eurekalert
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2011-10/uops-ptl101311.php
参考文献
Dysbindin-1 mutant mice implicate reduced fast-phasic inhibition as a final common disease mechanism in schizophrenia. PNAS October 3, 2011
http://www.pnas.org/content/early/2011/09/29/1109625108

また、この研究課題について,UCLの原 広一郎先生から下記のコメントをいただいた.

初めまして。11月1日更新の「BMJへの道」、楽しく拝読致しました。

確かに、病院の文化祭などで行うカラオケ大会には、決して上手とは言えない方が多数出場されますね。中にはプロ顔負けのうまさを誇る方もごくまれにいらっしゃいますが、例外的です。印象としては一般の平均よりだいぶ落ちる気がします。音楽療法などでも、音程だけでなくリズムがなかなかとれないケースがいるとよくいわれています。

統合失調症では、おそらく聴覚連合野と前頭前野の機能が変化していますので、曲(音)の認知が歪曲されている可能性があります。例えば、リードボーカル・バックコーラス・バックバンドの楽器それぞれが重層的にしかも同時に鳴っているのを、同時進行で認知するのはまさにマルチタスキングです。この音の洪水の中からボーカルの音程とリズムを抽出し、適切な注意を配分して認知するという作業は、いかにも統合失調症では困難そうに見えます。

また、正しい音に関して、内言語(内歌声?)と外で鳴っている音との照合がうまくいかないかもしれませんし、正しいタイミングと音程で発声するというプログラムの立案・実行もずいぶん難しいでしょう。これだけ不利な条件が揃っているので、音痴になってしまうのも無理はない気がしますが、それでもたまに猛烈に歌のうまい方がいらっしゃるのは不思議ですが、きっと発病前に技術を習得されておられて、それこそ小脳反射で(?)歌えるレベルなのかもしれません。

ちょっと検索してみましたら、歌ではありませんが、Atypical Neurolepticsの開始後に他のADL向上とともにギターの演奏がめきめきうまくできるようになったケースがのっていました
Wasow M. Personal accounts: Strengths versus deficits, or musician versus
schizophrenic. Psychiatr Serv. 2001 Oct;52(10):1306-7.

絵も統合失調症では病状の推移とともにタッチがずいぶん変化しますし、いずれにしても統合失調症には人間について考えさせる点がほんとうに沢山あるなあと、そんなことをふと思いました。

ところで、7月にスコットランド旅行に行ってきましたが、その際に先生のホームページで勉強させて頂きました。おすすめのプロックトンに行ってエビと小粒のホタテを満喫したあと、北上してアップルクロスというところに立ち寄りました。対岸に見えるSkye島とRaasay島がきれいでした。Skye島はいうまでもなく素晴らしかったです。いつかこの御礼を申し上げねばと思っていながら4ヶ月近く経ってしまいました。お陰様でよい旅行になりました。有り難うございました。今後も更新、楽しみにしております。

時節柄どうぞお体にお気を付けてお過ごし下さい。

匆々
原 広一郎
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HARA, Koichiro MD PhD
Dept of Clinical & Experimental Epilepsy
Box 29
Institute of Neurology
University College London
 

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