4. 病院で出来ること −よりよく生きていくために−

薬物療法

薬物療法開始にあたって
家族、教師、指導員など自閉症のお子さんに関わる人すべてが、服薬の目的、標的とする症状、副作用を理解していただくことが大切です。
服薬は1回の服薬量、1日の服薬量など、いずれも医師の指示通りに行ってください。やむをえず、服薬が不規則になったら、医師に必ず報告してください。
施設内や、家庭内の行動や情緒の変化を観察して、医師に報告してください。より適切な薬物選択につながります。

薬物療法の目標と実際

脳機能障害 脳機能障害そのものに働きかける薬物は、研究段階にあるものばかりで、現段階では実用化には至っていません。
異常行動や気分障害 パニックや自傷/他害/攻撃行動、睡眠障害などが著しい場合や、その他に精神医学的な状態が合併した場合に抗精神病薬(リスペリドン、ハロペリドール、ピモシドなど)を使用することがあります。 副作用として身体が硬くなったり、震えたりすることがある(錐体外路症状)ため、抗コリン薬などを副作用改善のために用いることがあります。
気分の変動が認められたり、多動と減動を繰り返す場合などに気分安定剤(バルプロ酸、カルバマゼピン、リチウムなど)や抗うつ剤(フルボキサミン、パロキセチン、クロミプラミンなど)を使用することがあります。
てんかん てんかん発作の治療には、抗けいれん剤(バルプロ酸、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールなど)の使用が必要です。抗けいれん剤の使用はてんかんの種類にあわせて選びます。てんかんの種類は発作型と脳波の所見、その他の症状を合わせて総合的に診断します。

もしてんかん発作がおこったら、次のことに心がけて下さい

  1. あわてずよく観察する。
    • 開始時刻と持続時間は? (出来れば正確に記録して下さい)
    • 誘因があるか? (服薬時刻の遅れ、過労や発熱、光や音、テレビ等)
    • 発作に気付かれたきっかけは?
      (動作が止まる、応答がちぐはぐになる、転倒する等)
    • 発作中の身体の様子は?
      (一瞬のピクツキ、全身の痙攣、痙攣の左右差等)
    • 発作中の意識は保たれているか?
      (名前を呼んで応じることが出来るかどうか)
  2. 救急受診する準備をしてください。
  3. 服薬は医師の指示通りに行ってください。急な断薬は重積発作をおこす可能性があります。
チック障害 突発的で急速であり、繰り返されるパターン化した運動(あるいは発声)が、本人の意志に反して出てしまう症状をチックと呼びます。チック症状自体が重症であったり、チックのために自己評価や社会適応が低下する場合などは心理教育や精神療法と平行して抗精神病薬(ハロペリドール、ピモシドなど)を投与することがあります。