3. 病院でわかること

適切な治療を行うための正しい診断

適切な治療を始めるには、まず専門家によるしっかりとした診断が大切です。幼児期には自閉症とよく似た症状を示す疾患もあります。自閉症でありながら見過ごされる場合、また自閉症ではないのに自閉症と間違われる場合もあるかもしれません。

精神遅滞; 精神遅滞の方は発達に応じた対人関係を持ち、身振りや動作で自分の意志を伝えようとします。自閉症のお子さんはそれが思うようにできません。
注意欠陥/多動性障害; 自閉症の方でも多動になることはあります。ただし自閉症では対人関係の障害がある点で注意欠陥/多動性障害と異なります。

他にも一見すると類似している疾患はあります。専門の医師のいる医療機関で正しい診断を受けることがまず必要です。正しい診断の下ではじめて適切な治療を受けることができます。

てんかん発作合併の有無

自閉症にはてんかんという病気が比較的高い割合で合併することが知られています。てんかんの診断及び次章で詳しく述べる薬物療法の決定のために脳波検査が行われます。

自閉症の原因となる他疾患の診断

自閉症はいくつかの疾患と関連しておこることも知られています。

脆弱X症候群: X染色体の異常によっておこる病気です。大きく長い頭と耳、低身長、関節過伸展などが主な症状です。
結節性硬化症: 顔面の皮脂腺腫とてんかん、精神遅滞がみられる病気です。脳の表面に淡黄から白色の硬く変性した部分があり、脳室の壁に小結節が認められます。
妊娠中のウィルスなどによる感染: 風疹では、胎生3ヶ月までに感染すると耳、眼、心臓などに障害が残ることがあります。その他のウィルスや梅毒感染が関係する場合も報告されています。
ヘルペスなどによる脳炎: ヘルペスウィルスが脳の炎症をおこすため、炎症部分に障害が残ることがあります。炎症が急激におこる時期には、発熱、頭痛、吐き気を伴います。
その他: 上記以外の幾つかの遺伝性疾患、代謝性疾患などがあります。

自閉症の背景にこのような疾患が隠れていないかどうかを確認するためには、専門の医療機関でしっかりとした検査を受けることが必要です。

また、これらの疾患が自閉症と関係している事実は、自閉症の症状が脳の働きのなんらかの障害(脳機能障害)によって生じていることを示しています。