2010-05-06
ビタミンB群が補酵素として働くのでホモシステインが減れば動脈硬化などの進行が抑えられるのではなかろうかという仮説を元に、1型及び2型の糖尿病患者に、ビタミンB群(毎日:葉酸2.5mg, ビタミンB625mg, ビタミンB121mg)の投与を行った結果JAMA2010;303(16):1603-1609. に報告された。
238名と小規模な検討で、31.9±14.4ヶ月追跡した物だ。
検査値として、ホモシステインは投与群の方が4.8μmol/L(p<0.001)減少し、総死亡や透析導入率は投与にて有意に増えはしなかった。
しかし、腎機能の指標であるクレアチニンクリアランス(CCr)が5.8cc/分(p<0.02)低下が多く。非致死的な心血管イベントも含んだ複合エンドポイントがビタミンB群投与で2倍多かった(95%信頼区間 1.0-4.0, P=0.04)。
2009-07-24
食事からとる抗酸化物質やその血中濃度は比較的生活習慣病の改善効果が住民観察研究などで示されている。
しかし、薬品として投与すると、いい結果が無いばかりか、副作用や薬物相互作用の悪い面が目につくようになる。
例えば、抗がん剤や免疫機能が癌と戦う時は、活性酸素をつかって癌を死に追いやる。しかし、抗酸化物質がそれを帳消しにする。また、正常な細胞が成長する以上に、ビタミンの供給があれば、腫瘍も育ち易い。代謝拮抗剤というビタミンの働きを阻害する抗がん剤は、サプリで効き目が薄れてしまう。
末梢血管を拡張する作用があるのでシモヤケにはビタミンEは良い。しかし、高血圧で脳出血のリスクが高いと、この毛細血管を開く血液循環作用が裏目に出て、脳出血が増してしまうこともある。
Antioxidants prevent health-promoting effects of physical exercise in humans
Published online before print May 11, 2009, doi: 10.1073/pnas.0903485106
PNAS May 26, 2009 vol. 106 no. 21 8665-8670 ドイツのグループが、ビタミンC1gにビタミンE400単位の内服をしながら4週間に渡る、運動療法の介入を行い、グルコースクランプ法によりインスリン抵抗性を評価する一方で、筋生検を行いPPARγなどのインスリン抵抗性に関する遺伝子やSOD-1など酸化ストレスに適応する遺伝子の発現の変化を見た。
しかし、運動療法に取り組んだ事の無かったグループでは、非投与群で前後でPPARγの発現が倍になり、血中のアディポネクチンも増加した。分子面の変化だけでなく、グルコース注入率も10%程度改善していた。
ビタミン投与群では、インスリン抵抗性の改善は僅かで、アディポネクチンは有意差はないが減少の傾向を示した。
抗酸化ストレスに対応する為のSOD1などの発現は、やはりビタミン投与群では無いか有意差があっても僅かであった。
マラソンなどをすると足がパンパンになり痛くなる。これが酸化ストレスの一つの体験の仕方である。冬眠現象といって少しずつ虚血が加わる事で、ひげ根の様な側副血行路が増えることが心筋でも見られる。ストレスがないとトレーニング効果も薄れてしまう事例は他にも見られる。
心血管事故や関節障害を起こす様な辛いキツい運動をしないと行けないという訳ではない。
ある程度の運動を重ねていって、結果としてストレスに耐える体力を身に付け、その体力に応じた分だけまた少しずつ負荷を重ねていくことが、持続可能性のある健康増進に繋がる運動療法である。
聞きかじりで、酸化ストレス×→ビタミン、食事療法を打ち消す→過度な運動負荷という、間違った応対をしないで、毎日の積み重ねが大切である。
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