ランセットが公式にMMRワクチンによる自閉症患者発生の論文を棄却する

Daily Telegraph 2010-02-02

12年を経て、ウェイクフィールドが出した「ワクチンで自閉症、慢性腸疾患」という論文が、英GMCの評決を受けて取り下げられた[pdf1][bmj]。この風評でワクチン接種率が下がり、死者が出たのは下記に示した通りである。
今回の決定は、真偽の真偽ではなく。研究対象者が不必要な検査を繰り返し受けた事の手続きやサンプルの集め方のバイアスなどの、倫理面からなされたものではある。しかし、研究を孫引きするホメオパシー愛好者がもたらした悲惨な結果は取り返しがつかない。


はしか

2007-04-21

このところハシカによくであう。

他の先生が扁桃腺と云って、抗生剤だの感冒薬だの酵素剤だのだして、一回解熱した後再発熱。薬にあたったのかと恨まれる。

実の所はハシカ。

感染後1週間で、咽頭炎を中心に、38度の発熱を呈する。この時期(カタル期)は症状からの診断は出来ない。しかし、この時期の飛まつ感染が最も周囲に感染を拡げる。
その後4日くらいで、一回解熱の後に、再発熱する。この時発疹がでる。これが引くのに4日くらい。発疹の少し前にコプリック斑がでる「筈」だけれども、修飾麻疹と云って、小児期のワクチンの効果が切れかかった頃に発症する青年の麻疹では、ハッキリしない。
インフルエンザと違い抗原検査がなく、2週間程度あいだを置いたペア血清で抗体価をみないと「採血」での診断はできない。先に云ったような修飾麻疹では、弱いながら抗体価があるので1回目の採血で既感染と言い張る事もできない。血液や咽頭ぬぐい液・尿を用いた検査が、実施可能であるが保険点数による一般診療ではなく、研究費または行政検査である。
その後も、脳炎を呈する事があり、肝機能障害も遷延する。
感染が集積した、学校などでは2次感染からの3次感染の抑制のために既感染以外の抗体非保有者に緊急接種をすることがあり、72時間以内なら有効とされるが、先に述べたようにカタル期のうちに暴露した2次感染者を72時間以内に特定するための、簡易抗原検査や遺伝子検査は日常診療ではむりである。

症例経過
case発熱発疹軽快
13/294/24/7
24/94/134/17
34/18??
45/165/19?
55/185/21?
  1. 飯島医院blog [1][2][3][4][5]
  2. J-cast [2007-04-19][2007-05-17]
  3. 井草高校
  4. 麻疹DB2007-2008
  5. たからぎ医院
  6. 麻疹流行と予防接種

平成の初めのワクチン事情は社民の阿部議員の質問趣意書[1][2]と回答を開くと判り易い、当時3種まぜたMMRワクチン(おたふく、はしか、三日はしか)が使われていたが、千例をはるかに上回る無菌性髄膜炎があり、慎重接種に格下げされていた。このあと平成18年にMR(はしか、三日はしか)に切り替わるのだが、この端境期が高校生や中学生であり、いまの流行の主流である。千例を超える副作用には親も躊躇し、行政の接種の働きかけの声も、訴訟リスクの前には腰砕けになるであろう。[追記2007-05-18]


MMR仮説が本当なら

H19.5/30

抗体の保有率が下がると伝搬し易くなり、大流行を来す。
個々の発症は防げないとしても集団の抗体保有率が高ければ、流行の規模は小さくなり、結果として抗体非保有者まで病原体が到達せず、重大な後遺症が起こらなくて済むというのが、ワクチンの思想であり、大乗的あるいは全体主義的な物である事は否めない。
現世利益・小乗ないし個人主義的な、打っても掛かるのではという無力感や打っても副作用がという憤りがあるとワクチンの接種率を低下させる。

今回のMMR仮説、上記の副作用により忌避され打たなかった抗体非保有者が一定の数に達したため、大規模な成人麻疹の流行が起きたと言う説が本当なら、M:オタフクやR:三日ハシカの成人流行が不可避かもしれないとも考えられる。
今回は偶然「麻疹」であったが、「風疹」でも構わなかった。
麻疹では早流産・低体重児が主になるが、妊娠中に風疹に罹患すると難聴や白内障を伴ったCRSの赤ちゃん沢山生まれてくる。ワクチンを打っても抗体価が下がるので、中学生で女子に追加接種を行っていた風疹ワクチン。それでも、妊娠時に抗体が不十分なため感染・発症する事もある。また、風疹は女子ではまだ抗体保有率が高いが成人男子では低いと言われている(大阪大学医学部新入職員20歳代男性21.8%、女性2.5% [pdf])。

禍いを福に転じるためには、MRワクチンの接種を勧めるべきで、目先の流行だけで麻疹単味ワクチンに拘泥する必要は薄いのではなかろうか。

いずれ父になる男性も家庭に風疹を持ち込まないように、そして社会の盾として風疹の伝搬を妨げるために、またいずれ母になる女性には抗体を保有しておけば胎児へも移行しワクチンが接種しにくい新生児への防御となる。
「デキ婚」の時代、結婚性交する前に梅毒や淋菌の検査をし、風疹の抗体を調べてから、子づくりをする例もそうないだろう。そして、弱毒株生ワクチンは妊娠が判明してからは接種できないのだから[pdf:ワクチン接種(ワクチンウイルス)により先天性風疹症候群が発生したという報告はないとされている]。


茨城県の麻疹

H19-06-03

蚊帳の外にある茨城の麻疹事情。これは昨年のうちに流行があったため。千葉血清のワクチンの無効という事が第二の仮説として取り上げられている。この平成18年の春の竜ヶ崎保健所の新一年生の調査でも麻疹症例14例中12名が該当ワクチンを接種していたと云われている。


欧州における麻疹輸入症例の検討

H21-01-31
The Lancet, Volume 373, Issue 9661, Pages 383 - 389

人権を大切にすると感染症の予防は甘くなる。ロマなどの移動民は漏れ、イスラムにはワクチンの成分が豚などが使われていないかと忌避される。その結果、ルーマニア・スイスと英独伊などが麻疹の輸出国としてEU域内で課題となってくる。そして、疑義風説に揺れる親心もある。例えば、ワクチンで自閉症が増えるという論文が心を揺らす。

「『たまたま、自分たちの子供が自閉症の遺伝要因を持っていた』と考えるよりも『製薬会社の製造したワクチンによって、自分たちの子供が自閉症になった』と考える方が自然である。」しかし、その風説の結果「イングランドおよびウェールズで麻疹の症例が1998年には56だったのが、昨年に1348報告された。そして、2名の子供が死亡していた。」[忘却からの帰還 2009-02-08]
2年の間に1万2132例の麻疹が報告され7名の死亡者を出した。先の5カ国で85%(1万0329例)を占めた。うち5分の1が成人例であった。210例は輸入例と判定され、117例(56%)は欧州内由来、43例(20%)はアジアからであった。

幼児や児童のワクチン漏れだけでなく、成人に対する定期接種の可能性も検討すべきなのかもしれない。


風疹の流行2012-13

H25-03-10

前の職場では教員養成系などの学生さんが教育実習・職場研修を前に、不備な予防接種を受けに来る事が多かった。
しかし、当然ながら必要最小限しかしない。
具体的に言うと2008年の麻しんに伴う、麻しん単味ワクチンである。
奨めて来たが、MR(麻しん・風しん2価)ワクチンは、単味5000円弱の二倍の1万円弱であったので、ムベナルかなとも言えるが、その年代の25才から30過ぎの人達が、今季の流行の核を形成している。
平成21年以前から考慮して来た事だが、遣る瀬ない。風疹が抗体保有率30代前半が72.6%、30代後半が79.2%、2割から3割の男性に罹患の可能性がある。
女性は5%代であるが、それでも2012年に先天性風しん症候群が6例報告された。

2010年度風疹血清疫学調査ならびに予防接種率調査IASR32-9

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