果糖と健康、砂糖と糖尿病

2006-06-16

果糖は五炭糖の一つで、爽やかな甘味があり砂糖の50%増しである、砂糖は果糖とブドウ糖の二糖類である。
ブドウ糖濃度に比べて果糖濃度は日常的には測られていない。それはブドウ糖がmM単位なのに対してμM単位で1/500程度低く、測定誤差が大きかったからである。帝京大学の河崎らが詳しい測定法を開発して検討してみると、尿中排泄や空腹時濃度が高いと報告している[糖尿病48(6)p419]。
 ブドウ糖よりも開環状態である割合が高く、高い反応性をもっており、最終糖化産物(AGE)も多く作られる。糖尿病とは糖による血管や組織の障害に引き起こされる疾病の集合体であるが、血中ブドウ糖濃度だけ測定すれば足りる訳ではない。
自己測定装置の「不具合」が報告されたが、本当の不具合は何処にあるであろうか?もちろん低血糖に陥ったのは大きな不具合であったが、血中マルトース濃度が点滴でそこまで上昇するとは皆知らなかった訳である。このように、知られていないが為に、測定されていないが為に、看過され糖化産物が形成されていくような、補助食品や健康食品が他にもあるかもしれない。
中性脂肪にもなりやすく、レムナントも生じやすい。PCOOHのようなAGEが蔗糖負荷動物実験でも多く検出されるなど、大血管症の進展にも果糖は一定の役割を果たしている[JAT 2005;12(5):260-7]。


JCI 2009 May 1 Stanhope et al. Consuming fructose sweetened, not glucose sweetened beverages increases visceral adiposity and lipids and decreases insulin sensitivity in overweight/obese humans.

「抄訳」ヒトに10週間、摂取カロリーの25%をブドウ糖(G)または果糖ブドウ糖糖液(F:果糖55%)で与えた所、体重増はほぼ同じであった(G1.8±0.5kg vs F1.4±0.3kg)が、内臓脂肪量は果糖群の方が上回り、体脂肪の増加の殆どを皮下脂肪で占めたブドウ糖群と対照的な結果を見せた。
部位別の増加 %/10wk
脂肪部位 ブドウ糖 果糖
総脂肪 4.8±2.1 8.6±3.0
皮下脂肪 4.6±1.4 7.3± 4.0
内臓脂肪 3.2±4.4 14.0±5.5
血中中性脂肪濃度が高くRLP-Cやsmall dense LDLなどの動脈硬化惹起性リポ蛋白が増加していた。75g糖負荷試験を行った所、ブドウ糖群では差がなかったが、果糖群では耐糖能が低下し高インスリン血症がみられ、インスリン抵抗性の悪化が示唆された。
生化学検査値の変化 %/10wk
項目 ブドウ糖 果糖
空腹時血糖 -1.4±0.6 5.3±1.0
空腹時インスリン値 2.9±4.0 10.2± 4.2
空腹時sdLDL-C値 13.3±5.8 44.9±9.7
食後RLP-C値 3.7±5.4 33.9±11.8
果糖は肝臓以外では代謝されにくく、肝臓でも飢餓状態にあればブドウ糖に糖新生されるが、カロリーが十分であれば脂肪酸からVLDLに振り向けられる。


[清涼飲料水と糖尿病][子供に栄養ドリンクは禁止]


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