戦争が終わった後に手塚治虫や藤子不二雄は戦後の飢えの記憶から一粒で満腹になる丸薬のような物を漫画にしていました。
しかし、飽食の時代が来ると「XXだけで痩せる」という魔法の薬を追い求めるようになりました。
でも、なかなかそんな薬はありません。糖尿病はインスリンの作用不足からおこる病気なので、オイグルコンのようなSU薬やインスリンは血糖を下げるとともに太るという宿命を帯びています。インスリンの効き目を助けるPPAR-γ作動薬のアクトスは更に顕著です。
太らないには吸収を阻害すればいいでしょう。消化を邪魔するには糖ならαGIのベイスンが、脂肪ならオルリスタットがあります。しかし、食事指導を守らずにこの薬を用いると、しっぺ返しが待ってます。酷い下痢です
食欲を落とすにはどうしたらよいでしょう。ひとつは覚醒剤の応用でサノレックスや覚醒剤の材料の麻黄を含む漢方:防風通聖散などがあります。しかし、この種類は心理依存がある一方で、フェンフルラミンでは弁膜症がありました。
大麻を吸うと食欲が増えるなら邪魔をすればとCB1拮抗薬のアコンプリアも出てきました。しかし、大麻がヘラヘラさせるのの逆で、抑うつから自殺者も出て10/23に欧州での販売が取り下げられました。
自分を省みて悔い改める以上の良策は乏しいようです。
血液は腎臓の糸球体で漉し取られます。血液の中味は漏れては困りますが、ここでは漏れないと困るので血管を裏打ちする血管内皮の間に隙間・窓が開いています。そのため糸球体の廻りの尿はほぼ血清と同じ成分です。これを、尿細管で再吸収します。
糖も漏れては困りますから、再吸収します。ポンプの力で塩の成分のナトリウムは細胞の中で低く4mEq/L外で濃く140mEq/Lなっています。このナトリウムが細胞内に押し寄せようとする力を使って、小腸や近位尿細管の表面にあるナトリウム依存性グルコース輸送担体(SGLT)がブドウ糖を取り込みます。尿糖ではSGLT2が取り込みに作用します。
この能力に個々人で差があります。ある人は血糖160mg/dlでも漏らしてしまいますが、ある人は200mg/dlでもまだまだ再吸収できる人も居ます。そのような違いである人は正常血糖でも尿糖が出る腎性糖尿病になる一方、見落とされて高血糖が続く人も居ます。普通の人は数割の力で余力をもって再吸収しています。
糖尿病が酷いと一生懸命取り込もうとするのでついでにナトリウムも体に残ってしまうことがあります。これが生活習慣病が集積するひとつの理由です。糖尿病と高血圧が同居すると、腎不全や動脈硬化が進んでしまいます。減塩が尚更求められます。
このSGLT2を阻害し、尿糖を増やせば、血糖は減るのではかなろうかという経口血糖降下薬も検討されつつあります。
インスリンはみなさんご存知のように膵臓のβ細胞からでるホルモンで細胞にブドウ糖の取り込みを促します。インスリンを出せ!と促すのは誰でしょうか?まずは、ブドウ糖そのものです。小腸から吸収されてすい臓を通過するときにブドウ糖濃度が高いのを感知したβ細胞がインスリンを分泌します。
しかし、その他にも十二指腸の壁にあるL細胞やK細胞が関与します。その細胞が、食べ物の脂肪の吸収を感知して、GIPやGLP-1を分泌します。
GLP-1はブドウ糖のようにβ細胞に働きかけて、「ご飯が来た!インスリンの出番!」とインスリンの分泌を促します。
いま、このGLP-1に関係する薬が次々開発されつつあります。
飲み薬としては、GLP-1の分解を阻害するDPP-4阻害薬です。
インクレチン自体の注射薬としてはエクセナチドが米国で認可され、リラグルチド続いています。ブドウ糖の上昇と協調してインスリン分泌を促すので週一回投与などの注射剤も検討されています。
GIPとGLP-1をあわせてインクレチンといいます。
インクレチンはβ細胞の疲弊を防ぐといわれますが、枯渇してしまった1型糖尿病の患者さんには残念ですが無力です。
クロールは塩素、カリウムは肥料の三要素のカリです。腎臓は膨らまし粉(重曹)の主成分の炭酸水素イオン(HCO3-)を作り、水素イオンを排泄して、血を弱あるかりせいのpH7.400に保とうとしますが、腎機能が悪くなると炭酸水素イオンを作れなくなります。水素イオンが血の中にとどまり、食塩からの陰イオンの塩素濃度が水素とつりあうように増えます。動脈の血を測らないと血が酸性になっているかは検査できませんが、クロール(Cl)が110mEq/Lを超えているようだと、血が酸性に傾きつつあることから、重曹やクエン酸を処方して、腎臓が作れなくなった炭酸水素イオンを補わなければならない場合もでてきます。
カリは果物や野菜に多く含まれて居ますが、多すぎても少なすぎても、不整脈を起こしやすくなります。普通は血中4.0mEq/Lですが7を超えるようだと心臓の脈がゆっくりになり止ってしまいます。その前の6くらいから心臓が拡張するときの波Twaveの背が高くなったり収縮するときの波QRSの幅が広くなったりします。
これを防ぐために、野菜を水煮してカリウムが入らないような調理法をお願いする場合が出てきます。
糖尿病の初期はカロリーだけの工夫で済みますが、腎障害などの合併症が進むと、他にもタンパクやリンの制限が始まり、透析が始まると水分すら制限が必要になります。複雑な食事制限を覚えられるような人は、そもそも最初の頃の食事制限を身に付けて、合併症が進むに至りません。苦労が無いように合併症が進まないような努力が欠かせません。
元気な人のインスリン分泌を75gブドウ糖負荷試験でみると峰は30分で達します。
夏休みの宿題と一緒でパパッとインスリンを出して糖を片つけてしまうのです。
2型糖尿病の初期ではインスリンのピークが後ろにずれ込んで、しかも血糖が高い分より沢山のインスリンが必要になる例が多く見受けられます。
宿題を8月の終わりにして徹夜でヒーヒー音を上げるのに似ています。
これを続けて行くと空腹時のインスリン分泌も枯渇して、空腹時血糖も上昇を始めます。膵疲弊と言います。
こうしたインスリン分泌の変遷を考えながら、投薬の作戦も練られて行きます。軽症の時に初期分泌の代わりに速効性のインスリンで疲弊を押さえたり、峰に合わせ消化吸収を遅らせるαGIという飲み薬を用います。
コレステロールは単一の物質です。ではなぜ悪玉とか善玉とか云われるのでしょうか?それはコレステロールそのものではなく、コレステロールを運ぶ蛋白、リポ蛋白の性質が動脈硬化を惹起するか否かで、性格を喩えにして云っているだけなのです。
全身から肝臓に行く途中で血管の壁に落とし物をしてしまうリポ蛋白として低比重リポ蛋白(LDL)があります。この中でも血管内皮をくぐり抜けるsmall dense LDLが特に悪者です。
一方、末梢に落ちているコレステロールを拾いながら還ってくる高比重リポ蛋白(HDL)が善玉です
LDLコレステロールやHDlコレステロールは、それぞれのリポ蛋白に載っているのコレステロールのことです。