開頭手術


開頭は、全ての脳神経外科手術の基本的手技であり、当然のことながら、脳を直接さわるには、その周囲にある障壁を取り払って到達する必要があります。脳は体の中で最も重要な臓器にも関わらず、きわめて柔らかく壊れやすいので、多重の防護がなされています、表面から皮膚、筋膜(腱膜)、頭蓋骨、硬膜、クモ膜などが脳を包んでいます。これらをあけて脳を露出する手技が開頭術です。

皮膚を切開する部位は脳の病気の種類により様々ですが、多くは髪の毛の中に隠れるようにデザインします。切開部をなるべく上にして、術者が手術しやすいように、体位や頭位が決められます。また切開範囲については、手術操作が安全にでき、病変全体をカバーできる必要最低限な大きさで、切開してめくる皮膚の血流が保たれるように、また美容上なるべく問題がないように留意します。以前は頭皮切開線がわかりやすいようにあらかじめ頭全体を剃毛して手術に備える場合がほとんどでしたが、最近は部分的に頭髪を剃って手術行う施設が増えてきています。

顕微鏡を使わない手術では、全身麻酔後に体位をとり頭部をテープなどで固定しますが、脳血管障害の手術や脳腫瘍摘出術など手術顕微鏡を用いる繊細な手術の場合には、手術中頭部が動かないように金属のピンを用いて専用の固定器に頭をしっかり固定します。皮膚切開は、メスを用いて行い止血のため特殊なクリップ(頭皮クリップ)で皮膚をはさみます(図1)。孤状に切開した皮膚弁をめくり、すぐ下の筋膜や腱膜を剥離すると頭蓋骨が現れます(図2)。頭蓋骨に窓をあけるため、まず専用のドリルで小さな穴をいくつか開けます。これをつなぐ形で電気のこぎりのような器具で頭蓋骨を切ります。骨窓の大きさが予定より小さく、切り取り範囲が不十分な場合には、ヤスリの様なドリルで骨縁を削り取り、窓を大きくします。骨弁を取り外すと、脳を覆う硬膜という丈夫な膜があらわれ、これをハサミで切り開くことにより、クモ膜をかぶった脳の表面が現れます(図3)。このあとは、病変によって異なりますが、一般的に脳をへらで軽く圧排しながら病変にアプローチしたり、脳に小さな切開を入れてその中から脳の中に入って病変を治療します。


図1


図2


図3

治療が終了したら、傷ついた部分を保護し、出血しているところを止血した後に、硬膜を密に縫い合わせます。硬膜が欠損したり縮んだりしてうまくよらない時には、人工硬膜(ゴアテクス)や自己筋膜を足して閉じることもあります。また硬膜をさらにしっかりと閉じる目的で、脳脊髄液が漏れないようにフィブリングルーという血液製剤の糊を縫合部に吹き付けることもあります。骨窓部には取り外した骨をそのままもどし、チタン製の金具を用いて強固に固定します。ただし、脳の圧力が高い場合には意図的に頭蓋骨をはずしたままにしておくこともあります。ドリルで穴をあけた部分にもそれを覆うように金属製の蓋をします。最後に筋膜、腱膜を縫い合わせて、皮膚を糸で縫合またはホッチキスのようなもので創を合わせて終了です。

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