研究内容・業績


Research / 主な研究内容

気道上皮細胞の研究

気道上皮細胞を用いた培養実験により、サイトカインやケモカイン(IL-6、IL-8、GM-CSF、RANTES、eotaxin、TARCなど)、endothelin、プロテアーゼや細胞外基質の産生を通じ、気道上皮細胞が呼吸器疾患の病態において積極的な役割を演じることが明らかとなってきた。サイトカインやケモカインの産生は、histamine、endotoxin、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1ßなど)により調節されることも示した。これらの液性因子は、近接する線維芽細胞や炎症細胞の遊走・活性化・機能調節を促し、気道局所での炎症反応を惹き起こす。気道上皮細胞と炎症細胞とのクロストークに関しては、ICAM-1などの接着分子の発現を通じて好中球・好酸球・Tリンパ球と接着し、その活性化に関与することを示した。

Asthma-COPD Overlap (ACO)マウスモデルの構築

喘息とCOPD両者の特徴をもつAsthma-COPD Overlap (ACO)は、それら単独よりも頻回で重症の増悪を起こすことが知られ、臨床上の課題となっている。疾患群としてのACOは多様な病因を背景に持つことが推察される。特に若年に発症し長年にわたり重症喘息に罹患する(主にearly onset群に該当する) ACO症例については、気道炎症および呼吸機能障害の分子生物学的解明や、喫煙やウイルス感染などの外的要因がもたらす修飾の影響の解明が必要であるが、その理解は十分といえない。我々は、食品加工目的に用いられるパパイヤ由来のシステインプロテアーゼであるPapainについて、濃度・投与回数についての検討を行った後、papainの継続的な気道内投与により、ACO類似病態のマウスモデルを作ることに成功した。このモデルでは、①肺組織所見における気腫性変化および好酸球性の炎症細胞浸潤を伴う胞隔炎、②呼吸機能検査における肺コンプライアンスの上昇、③気管支肺胞洗浄(BAL)液中の白血球細胞分画における好酸球分画の上昇、④気道過敏性の亢進といった所見が確認された。これらはACOとしての臨床的特徴が満たされるものであり、非常に有用な実験系であることが期待される(Fukuda et al. Allergy. 2020)。

上皮間葉転換に関する研究

上皮間葉転換(epithelial mesenchymal transition: EMT)とは、上皮細胞が間葉系細胞の形質を獲得し、細胞極性の喪失や遊走能の亢進が生じる現象であり、原腸陥入や神経堤形成などの発生過程において重要なメカニズムである。創傷治癒や組織の線維化においても同様な細胞変化が生じうると考えられ、肺線維症や気道リモデリングの病態形成に関与している可能性がある。実際に肺線維症患者由来の上皮細胞ではEMTに関連した遺伝子発現変化が生じていると報告されている。TGF-βは様々な上皮細胞においてEMTを誘導する作用があるが、炎症シグナルとの相互作用については不明な点が多かった。我々は肺胞上皮細胞をTGF-βおよび炎症性サイトカインTNF-αで共刺激すると、TGF-β単独刺激と比較して、より強くEMTが誘導されることを報告した(Yamauchi et al. Exp Lung Res. 2010)。また気管支上皮細胞においても、TGF-βとTNF-αの共刺激によってEMTが促進されることを示した(Kamitani et al. Int Arch Allergy Immunol. 2011)。さらにTGF-βおよびTNF-α刺激によるEMTのプロセスにおける遺伝子発現変化をマイクロアレイによって網羅的に同定した。TGF-βが線維化に関連する細胞外基質やプロテアーゼの発現を亢進させる一方で、TNF-αはサイトカイン・ケモカインを産生するsecretory phenotypeを誘導することが明らかになった。さらにmiRNAアレイ解析も行い、miR-21・miR-23・miR-29などの発現上昇が確認された (Saito et al. PLoS One. 2013)。

気道平滑筋細胞の研究

喘息、特に気道リモデリングにおいて重要な役割を果たすとして着目されている気道平滑筋細胞に関して、炎症性メディエータや線維化関連因子等の産生や細胞内シグナル伝達経路の解析を行っている。近年、IL-13により誘導され喘息のバイオマーカーとして着目されているペリオスチンの産生についても、気道平滑筋細胞から産生されることを見出し、その細胞内シグナル伝達経路の解析を行った(Makita et al. Int Arch Allergy Immunol. 2018)。

気管支喘息の好酸球性炎症におけるCISHの役割

気管支喘息の特徴として好酸球性の慢性気道炎症が挙げられ、IL-13はその病態形成の中で中心的な働きを担う。肺線維芽細胞はIL-13により活性化されeotaxinなどのケモカインの産生元となり持続的な好酸球炎症へ寄与するが、その制御機構は十分に解明されていない。我々は成人ヒト肺線維芽細胞にIL-13刺激を加え、その下流シグナルを網羅的かつ継時的解析を行った。IPAによるパスウェイ解析により、CCL11・CCL26を含むケモカインシグナリングが増強される一方で、interferon-α/βのシグナルが抑制されることが分かった。また8個のSOCS(suppressor of cytokine signaling) family遺伝子のうちCISH (Src-homology 2-containing protein)とSOCS1の発現が強く誘導された。我々はさらにこのCISHという分子に注目し、そのケモカインシグナルへの影響を検討したところ、CISH自体の発現はSTAT6のリン酸化を誘導し制御される一方で、CISHのloss/gain of functionにより、CISHはCCL26産生のnegative regulatorであることが新たに判明した。すなわちCISHはIL-13誘導性のCCL26産生制御を介して気管支喘息における好酸球性炎症の中心的な役割を果たすため、この分子の制御が重症喘息の治療への新たなアプローチとなりうることを示した(Takeshima, et al. Allergol Int. 2019)。

呼吸器疾患における転写共役因子TAZの機能解析

Hippo pathwayはショウジョウバエからヒトまで進化的に保存された経路で、発生・分化・腫瘍形成などにおいて重要な役割を果たすことが報告されており、これらの分野で近年急速に注目を浴びている。YAP/TAZはHippo pathwayにおいて負に制御される転写共役因子であり、TEADなどの転写因子と協同して標的遺伝子の転写を制御する。 我々は以前TAZノックアウトマウスでは正常な肺胞形成が損なわれ、肺気腫類似の病態を呈することを発見した(Mitani et al. Am J Respir Crit Care Med. 2009)。また、Taz-heterozygousマウスはブレオマイシンによって引き起こされる肺線維化が正常マウスに比べ抑制されることを示し、肺線維症の病態におけるTAZの意義も報告した。さらに、特発性肺線維症の肺における線維芽細胞巣(fibroblastic foci)においてTAZが高発現していること、in vitroでTAZは肺線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化、細胞増殖、遊走、マトリックス収縮を促進し、肺線維化に寄与することを明らかにした(Noguchi et al. Sci Rep. 2017)。また、世界最大級の組織マイクロアレイを有するウプサラ大学との共同研究により、TAZ発現は非小細胞肺癌における予後不良因子となること、そしてin vitro、in vivoでの解析からTAZは肺癌の発生・進展に寄与することを見出した(Noguchi et al. Clin Cancer Res. 2014)。次に小細胞肺癌における転写因子群の網羅的発現解析を行い、神経内分泌細胞分化を示すASCL1陽性群、NEUROD1陽性群、YAP/TAZ陽性群のサブタイプを同定した。YAP/TAZの発現が細胞接着性に関与し、YAPの発現抑制が「小細胞癌化」の一因となることを示した。さらにYAP/TAZ陽性のサブタイプではmTOR阻害剤やPLK阻害剤に対して感受性が高いことが判明した(Horie et al. Cancer Sci. 2016)。 今後は、各種分子生物学的手法やYAP/TAZノックアウトマウスを利用して、様々な呼吸器疾患の病態におけるYAP/TAZの役割を解明していく予定である。

肺腺癌における転写因子ASCL1の機能解析(Uppsala大学との共同研究)

肺腺癌は組織学的、分子生物学的に不均一であり、複数のサブタイプが存在する。ASCL1は神経内分泌分化を誘導するマスター転写因子であり、肺腺癌の一部でも発現する。Uppsala大学の所有する肺腺癌224例を含む組織マイクロアレイを用いた免疫組織化学染色では、約10%でASCL1蛋白の発現が認められた。さらにTCGAデータベースの肺腺癌533例のトランスクリプトーム・メチル化アレイデータを解析したところ、約8%でASCL1の高発現がみられた。ASCL1高発現は喫煙歴と関連しており、KRAS変異陽性例の約10%に認める一方で、EGFR変異陽性例では認めなかった。ASCL1高発現の肺腺癌は全ゲノムレベルでDNA低メチル化状態にあり、神経内分泌分化に関連する遺伝子群の発現が高く、免疫細胞浸潤や免疫応答に乏しい遺伝子発現パターンを呈していた。さらに上記の組織マイクロアレイを用いた解析で、ASCL1蛋白を発現する肺腺癌症例では、免疫チェックポイント阻害剤の有効性予測の指標となるPD-L1蛋白の発現を全く認めないことを発見した。さらにASCL1陽性の肺腺癌細胞株を用いた解析では、ASCL1がスーパーエンハンサー関連遺伝子群の発現を広汎に調節するマスター転写因子であり、細胞増殖、細胞周期、アポトーシスといった細胞応答を制御することを明らかにした。以上より、ASCL1発現によって定義される、ユニークな臨床的、分子生物学的な特徴を有する肺腺癌のサブタイプが存在することを見出だし報告した(Miyashita et al. J Thorac Oncol. 2018)。

肺癌における転写因子TTF-1の機能解析

TTF-1は肺の器官形成や肺胞上皮細胞分化を司るマスター転写因子である。肺癌の組織診断において、TTF-1は肺腺癌のマーカーとしても活用されている。さらに肺腺癌の一部においてNKX2-1(TTF-1)の遺伝子増幅が報告されており、肺癌細胞の生存を促進する癌遺伝子としての機能が報告されている。その一方でマウスモデルではTTF-1が癌転移を抑制する作用があることが示されており、TTF-1陽性の肺癌患者はTTF-1陰性例と比較して予後良好であることも知られている。我々は肺腺癌細胞においてTGF-βにより誘導される上皮間葉転換が、TTF-1によって抑制されることを見出し、肺癌進展におけるTTF-1の二面的機能の一端を明らかにした(Saito RA et al. Cancer Res. 2009)。ChIPシーケンス解析により、TTF-1がTGF-βシグナル伝達分子Smad3と複合体を形成して転写調節を行う一方で、Smad3とSmad4の結合を介した転写機構を抑制するとの分子メカニズムも明らかにされている。小細胞肺癌は肺癌の10—15%を占める悪性度の高い組織型である。小細胞肺癌の80—90%でTTF-1の発現がみられるが、その機能は長く不明であった。我々は小細胞肺癌細胞株における転写因子群の発現解析を行い、神経内分泌細胞分化を示すASCL1陽性群、NEUROD1陽性群、YAP/TAZ陽性群のサブタイプを同定した(Horie M et al. Cancer Sci. 2016)。TTF-1の発現は小細胞肺癌のうちASCL1陽性群に特徴的であり、ASCL1ノックダウンによってTTF-1発現が抑制された。また小細胞肺癌細胞株を用いた解析から、TTF-1はNFIBなどの遺伝子群の発現制御に関わり、肺癌細胞の生存を促進する作用を有することが明らかになった(Horie M et al. J Pathol. 2018)。

肺線維芽細胞の機能解析

線維芽細胞は細胞外基質の産生・分解を介して組織構造の維持・改変を担い、液性因子の分泌を介して上皮の増殖・分化や炎症応答を調節する。肺線維症・肺気腫などの呼吸器疾患において、肺線維芽細胞は病的に活性化されており、不可逆性の線維化・気腫化を惹起し、その病態に深く関与している。肺癌は癌死亡のうち部位別では最多であり、全世界で年間100万人以上の死亡原因となっている。肺癌細胞と癌間質細胞との相互作用によって肺癌組織が形成されるが、肺癌細胞の悪性化や血管新生のプロセスにおいて、癌関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast: CAF)からのシグナルが重要である。我々は肺癌患者の切除肺組織から初代培養のCAFを樹立し、肺癌細胞との三次元共培養を行うことで、CAFが癌促進作用を有することを再構成的に実証した(Horie M et al. Biochem Biophys Res Commun. 2012)。難治性の気管支喘息では、気道リモデリングと呼ばれる気道の構造変化が認められ、平滑筋細胞の増生・線維芽細胞の活性化・基底膜下の線維化などが認められる。ヒスタミンは血管透過性亢進や平滑筋収縮を惹起するメディエーターであるが、肺線維芽細胞における機能は不明であった。我々はヒスタミンが肺線維芽細胞を介したコラーゲンゲル収縮を促進させることを見出し、難治性の気管支喘息の治療においてヒスタミン受容体拮抗薬が有用である可能性を示した(Horie M et al. Exp Lung Res. 2014)。TGF-βシグナルは線維芽細胞を活性化して筋線維芽細胞への形質転換を促し、細胞外基質の産生・分解を促進させる。一方でTGF-βシグナルは肺癌細胞の上皮間葉転換を惹起し、細胞浸潤を促進させる(Saito A et al. PLoS One. 2014)。我々はレンチウイルスベクターを用いた合成miRNAの発現系を構築し、肺癌細胞および肺線芽細胞においてTGF-βリガンドを効率的・選択的にノックダウンさせることに成功した。これらの細胞を活用し、TGF-βリガンドの発現抑制が肺癌の治療戦略となりうるのか、三次元共培養実験により検証した(Horie M et al. BMC Cancer. 2014)。

肺線維芽細胞の臓器特異性

線維芽細胞は様々な臓器にみられる細胞で、コラーゲンなどの細胞外基質を産生・分解し、組織構造の構築・維持・改変を司る。液性因子(増殖因子・サイトカインなど)を分泌して上皮細胞の増殖・分化を促し、炎症反応の制御も担う。我々は理化学研究所FANTOM5データベースを活用し、様々な臓器由来の線維芽細胞(45種)の遺伝子発現プロファイルを臓器横断的に比較し、各臓器に特徴的な線維芽細胞サブタイプが存在することを見出した。特に肺線維芽細胞は他臓器由来の細胞と一線を画する独特な細胞群であることが判明した。肺線維芽細胞で特徴的な発現を示す88遺伝子のうち、8個の転写因子(TBX2, TBX4, TBX5, FOXL1, FOXP1, MEIS1, TGIF1, HOXA5)がスーパーエンハンサー(高度に活性化されているゲノム領域)と重なり、特にT-boxファミリー転写因子の機能的な重要性が示唆された。TBX2/TBX3やTBX4/TBX5は、発生過程の肺の間葉系組織に発現し、肺のbranching morphogenesisに関与している。TBX4は後肢、TBX5は心臓と前肢にも発現しており、肺・心臓・四肢の形態形成において必須である。鰓呼吸から肺呼吸への移行・肺循環の発達、陸上移動に適した四肢の発達、など進化的に重要な機能獲得において、TBX4/TBX5が鍵となる分子であると考えられる。我々はTBX4をノックダウンした肺線維芽細胞でRNAシーケンス解析を行い、TBX4がスーパーエンハンサー関連遺伝子群を広汎に制御しうることを見出した。また肺線維芽細胞をTGF-βで刺激すると、TBX2・TBX4・TBX5の発現が抑制された。したがってTGF-β刺激により、T-boxファミリー転写因子により構成されていたスーパーエンハンサー群が、全ゲノムレベルで変化すると想像された。以上の知見より、TGF-βシグナルが活性化している肺癌や肺線維症などの疾患病態において、T-boxファミリー転写因子の発現低下が、肺線維芽細胞の活性化と表裏一体をなす可能性があると考えられた(Horie M, Miyashita N et al. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2017)。

非小細胞肺癌のバイオマーカーの探索

非小細胞肺癌は肺癌の85—90%を占め、腺癌および扁平上皮癌が主要な組織型である。TCGA(The Cancer Genome Atlas)などの癌ゲノム解析プロジェクトにより、肺癌病態に関わる遺伝子変異やゲノム異常の全体像が解明されつつある。ENCODEプロジェクトやFANTOM5プロジェクトでは、種々の細胞におけるRNAシーケンス・ChIPシーケンス・CAGE(Cap Analysis of Gene Expression)の解析データが蓄積され、全ゲノムの約80%が転写領域ないし転写調節領域として機能することが判明した。さらに癌細胞ではDNAメチル化やヒストン修飾状態が全ゲノムレベルで変容していることも解明されつつある。癌細胞におけるエピジェネティックな変化は、転写産物の量的・質的な異常や、遺伝子発現パターンの変化につながり、これが細胞増殖・浸潤などの形質に結びつく。DNA低メチル化によって癌特異的な発現上昇を示す遺伝子が明らかになれば、診断マーカーとして活用しうるだけでなく、DNAメチル化状態を改変する薬剤による治療標的になりうると期待される。我々はFANTOM5データベースにおける肺上皮細胞および非小細胞肺癌細胞のCAGEデータの比較解析を行い、肺癌細胞において転写活性が上昇する遺伝子を網羅的に同定した。さらにTCGAデータとの統合解析により、非小細胞肺癌においてDNA低メチル化と発現上昇を示す22個の癌特異的遺伝子(15個のcoding geneおよび7個のnon-coding RNA)を同定した。このうち5個は以前に報告されているcancer testis antigenと共通であり、癌特異的抗原として免疫療法の標的になりうると想定された(Djureinovic D et al. JCI Insight. 2016)。上述の癌特異的遺伝子のうち、今まで機能が不明であったMYEOV遺伝子に着目して機能解析を行ったところ、MYEOVは肺癌細胞の増殖・生存・浸潤を促進させることが判明した。さらにMYEOV遺伝子の発現は非小細胞肺癌患者の予後不良と関連することも明らかとなり、MYEOVが非小細胞肺癌の診断マーカー・予後予測因子・治療標的となりうることが示唆された(Horie M et al. Mol Cancer Res. 2017)。

ヒスタミンの気道リモデリングにおける役割

気管支喘息においては吸入ステロイドなどの治療にもかわわらず治療抵抗性を示すことがあり、気道リモデリングと呼ばれる非可逆的な気流制限と気道の構造変化が認められる。気道リモデリングは気道平滑筋の増生、活性化した線維芽細胞など、間葉系細胞における状態変化で特徴づけられる。ヒスタミンはアレルギー性炎症の原因となるメディエーターであり気管支喘息の病態に重要な役割を果たすが、近年我々はヒスタミンが肺線維芽細胞の遊走を誘導することが報告し、肺線維芽細胞が気管支喘息患者の気道へリクルートされている可能性を示した(Kohyama et al. Mol Cell Biochem. 2010)。さらに肺線維芽細胞の三次元コラーゲン培養法行うことにより、ヒスタミンがコラーゲンゲルの収縮を誘導し気道リモデリングに関与する可能性を示し、また難治性気管支喘息のマネージメントにおける抗H1受容体拮抗薬の可能性を示した(Horie et al. Exp Lung Res. 2014)。

TNFスーパーファミリーLIGHTによる気道炎症および気道リモデリングへの関与

重症喘息において様々なサイトカイン・ケモカインの産生により気道炎症が生じることが知られており、また上記の気道リモデリングにおいて近年EMTが病態形成に関与している可能性が示唆され我々はTNFスーパーファミリーの一種であるLIGHT(TNFSF14)に着目し検討を行ったところ、LIGHTはTGF-βによるEMTを増強し、LIGHT単独でも肺上皮細胞のEMTを誘導することを見出した (Mikami et al. Biochem Biophys Res Commun. 2012)。また、LIGHTは気道上皮細胞から様々なサイトカイン・ケモカインの産生を誘導することにより気道炎症に深く関与していることを見出し、特に好中球のケモアトラクタントとして知られているIL-8の産生においてはErkおよびNF-κBシグナルを介していることを示した(Mikami et al. PLoS One. 2014)。

大気汚染と呼吸器疾患(杏林大学・帝京大学呼吸器内科との共同研究)

ディーゼル車両から排出される大気汚染物質、とくに微粒子物質(diesel exhaust particles, DEP)は都市部における微小粒子状物質の主要なものとして、その呼吸器系への健康影響が懸念されている。我々は抗オキシダント酵素とその発現調節因子 Nrf-2 はDEPに対する感受性要因として重要であることを報告し、さらにヒトにおいて呼気凝縮液(exhaled breath condenstaes, EBC)中のサイトカインは気道炎症病態のバイオマーカーとして有用であることを示してきた。現在、喘息群及び非喘息群において、個人の抗酸化ストレス能力を評価する手法として抗酸化酵素Glutathione S-transferase P1 (GSTP1)の遺伝子多型の同定、またEBC 中バイオマーカー(抗酸化活性を含む)の測定による気道炎症病態の解析を行い、発症・増悪との関連性を検討し、これらに大気汚染がどう影響するかを検討している。これはいわゆるgene-environment interaction を考慮したコホート研究と言える。

輸血関連急性肺障害モデルの確立(日本赤十字社血液事業部および輸血部との共同研究)

輸血関連急性肺障害(TRALI:transfusion-related acute lung injury)は重篤な非溶血性輸血副作用のひとつである。認知度の低さゆえに、原因不明のARDS(acute respiratory disress syndrome)として看過されてきた可能性があり、臨床上重要な病態である。発症機序を解明し、早期の診断・治療に役立てるため、ヒトにより近い実験動物としてミニブタを活用したTRALIモデルを確立した。(Okazaki et al. Transfusion. 2014)

DPC databaseを用いた研究(臨床疫学・経済学教室)

東京大学大学院医学系研究科の臨床疫学・経済学教室での本邦の入院包括医療費支払制度(DPC)のデータベースを用いたDPC研究に参加し、主に呼吸器疾患の疫学的研究を行っている。COPDや肺炎など頻繁にある呼吸器疾患や呼吸器の稀少疾患などを対象に、入院時の患者状態による在院中の死亡率や入院中に使用した薬剤による治療効果への影響や全身の合併症の評価などを行い、在院死亡率に寄与する因子の検討を行っている。

カルテ情報を用いた後ろ向き観察研究(多施設共同研究)

非小細胞肺癌の約60%にドライバー遺伝子変異を認め、それを標的とした分子標的治療薬は進行期で高い有効性を示す。そのような患者集団では無症候性脳転移には薬物療法を先行することが多いが、薬物療法のみで経過を見るべきか初期から放射線療法を併用すべきかについて、現時点で明確なエビデンスが無いため、これを多施設共同で後ろ向きに検討している。対象者は脳転移を有する肺癌と診断されたドライバー遺伝子変異陽性患者のうち、2018年8月から2020年12月の間に本研究の協力施設でチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)等の内服治療を受けられた方。オプトアウトなど含めた研究説明文章はこちらに公開しています。研究説明文書


学会発表・講演実績

国内学会発表・講演

国際学会発表・講演


論文発表

英語論文実績

日本語論文実績

海外書籍

PM2.5: Role of Oxidative Stress in Health Effects and Prevention Strategy
nova science publishers
Tadashi Kohyama: Effects of DEP Inhalation on Development of Infectious Diseases
Masafumi Horie: DNA Adduct Formation by Diesel Exhaust and its Relevance to Carcinogenesis
Yasuhiro Yamauchi: Effects of Diesel Exhaust Particles on the Cardiovascular System: Experimental and Clinical Findings
Satoshi Noguchi: Neurotoxicity of DEPs
Yu Mikami: Adverse Fetal Effects of Diesel Exhaust –Induced Oxidative Stress