当講座について

 生命機能物理学講座は、「様々な生命現象を担う生体高分子(主にタンパク質)の 機能がどのようなメカニズムで生じるのかを、核磁気共鳴(NMR)法やX線結晶解析を中心とした物理化学的な解析手法により、原子レベ ルで解明する」ことを目標にしています。

 現在、研究の対象としているタンパク質(関連する疾病・治療薬)は、電位依存性イオンチャネル(不整脈、疼痛、糖尿病、乾癬、アレルギー、不妊治療)、トランスポーター(薬剤耐性、高脂血症)、ウイルス由来タンパク質(ウイルス感染)、タンパク質の翻訳因子群(がん、細胞増殖、幹細胞、ウィルス感染)など非常に多岐に渡っています。

 これらのタンパク質は、各種リガンドの結合、膜電位の変化、脂質二重膜中の微量脂質との相互作用などにより、立体構造や運動性が変化します。それによって、タンパク質の機能が変調を受け、正常な生理機能を発現し、また、機能不全や過剰亢進があれば疾病へと繋がります。 このからくり(メカニズム)を原子分解能で知ることができれば、タンパク質のどの部位にどのような形の化合物を結合させればよいか、といった創薬戦略を構築することが出来ます。さらに、実際に化合物の探索・構造最適化研究へと展開します。

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最近の研究より:電位依存性イオンチャネルの動作機構・阻害機構の解明

 電位依存性イオンチャネルは、活動電位の形成に中心的な役割を果たしており、神経伝達(痛覚などの伝導)や心臓の拍動などの重要な生理学的過程を担います。これらのタンパク質の機能メカニズムを立体構造の観点より明らかにし、これらに特異的に結合して機能を変調する化合物を見出すことができれば、抗不整脈薬、疼痛治療薬などの創製に繋がります。 本研究では、独自に開発した新規NMR手法を適用し、電位依存性K+チャネルと阻害毒素との複合体の構造を明らかにし、その阻害メカニズムを解明しました。(Ozawa S. et al. Sci. Rep. 2015, Keio Research Highlights 2017)