ご挨拶
日本獣医史学会は、1972年に発足し、2022年には50周年を迎えようとしております。獣医学における歴史の研究を通じて、社会と関わって来ました。最近は過去の獣医学の歴史のみならず、獣医分野における古文書、食の安全問題、新型インフルエンザウイルス感染症、新型コロナウイルス感染症など、獣医学の歴史に残る事件についても積極的に記録を残そうとしています。また、今後の活動をさらに盛んにするために、獣医、畜産や動物の歴史に興味や関心をお持ちの方々にご入会をお勧めしています。
海外の例をみると、フランスにおいては、パリ・国立アルフォール獣医大学においては、獣医学博物館が存在し、歴史的な資料が保存されています。また、英国では王立ビクトリア・アルバート博物館において獣医歴史学の部門展示が存在します。米国では、ワシントン郊外のケンシントンにおいて米国獣医史協会が存在し博物館が設立されています。米国NIH(国立衛生研究所)の専門家も多数参加しておりました。
日本においては、獣医史学研究は獣医学教育における位置づけが明確でなかったため、日本獣医生命科学大学1校だけで講義が行われていました。この度平成25年からの文部科学省における獣医学・学部教育の一環として新コアカリキュラム教育が制定されました。「獣医史学」はその中の必須科目である「獣医学概論」において重要な部分を占めることになりました。また、新教科書「獣医学概論」(池本卯典ら監修・緑書房発行)の「第2章獣医史学」は、当学会前理事長の小佐々学先生が執筆しております。
今後は、獣医史学概論を全ての学生が学ぶことになり、獣医学教育における日本獣医史学会の存在意義が明確になりました。このことは、本会の今後の活動や発展に大きく寄与するとともに、会員の皆様の今後の活動が期待されます。また、全国の大学で獣医学概論を教える先生方が本会にご入会いただければ幸いです。
近代経済学の祖であり、世界大恐慌後の復興、世界銀行・IMFの設立に尽力したケインズの問いかけに次のようなものが有ります。「過去を知っていて現在を知らない人間と、現在を知っていて過去をしらない人間ではどちらが現状を打開できるか」。ケインズの答えは過去を知っていて現在を知らない人間でした。その意味は、人の行動はすべて過去の繰り返しであるとの事です。本会の会員は、獣医師である有る必要は有りません。会員には獣医師以外の方もおられます。学生会員の制度もあります。もちろん獣医大学学生でなくても構いません。本会は将来に向けて、国内的にも国際的にも、より一層活発な活動を行うべく努力しています。同好の方々に一人でも多く入会していただきますよう、ご案内申し上げます。