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NOTCH3遺伝子

NOTCH3はヒトの持つ22対の常染色体と1対の性染色体のうち、19番目の常染色体上にある遺伝子で、 この遺伝子から2321個のアミノ酸からなるタンパク質が作られます。 NOTCH3は胎児が成長するときに主に働く遺伝子ですが、成人では小動脈の中膜に存在する平滑筋細胞(右図)の表面に強く発現し、 血管壁の正常な機能を保つ役割を果たしています。



NOTCH3遺伝子変異

CADASILはNOTCH3の遺伝子変異により起こる優性遺伝性脳小血管病です。 つまり、患者さんの両親のどちらかは必ず同様にCADASILに罹患しているというわけです。 ただし、稀に突然変異によりNOCTH3遺伝子変異が起こり、家族に全くCADASIL患者がいないにも関わらず発症することもあります。

Notch3タンパク質は細胞の表面に存在しているタンパク質ですが、CADASILの原因となる遺伝子変異は、 全て細胞外に露出している部位のうち、「EGFリピート」と呼ばれる領域に存在しています。 この細胞外の領域は、隣り合う細胞とコミュニケーションをし、Notch3の機能を発揮するのに重要な部位です。 NOTCH3遺伝子変異は200種以上報告されていますが、その95%以上がミスセンス変異(※1)です。 遺伝子変異の結果、タンパク質の立体構造が変化し、Notch3の様々な機能に異常が起こります。 最終的には、脳の小さな血管の平滑筋細胞が破壊され、脳への血液の供給が滞ることで神経細胞死などを引き起こすと考えられています。 現在のところ、NOTCH3遺伝子変異から平滑筋細胞の破壊に至るメカニズムはよくわかっておらず、 研究が進められています。


※1 ミスセンス変異とは、DNAを構成する塩基と呼ばれる4種の部品の組み合わせ配列のうち、一つの塩基が違うものに置き換わることで、 タンパク質を構成するアミノ酸の1つが違うアミノ酸に変化してしまうというものです。このような変異は、 タンパク質の立体構造を変化させ、その正常な働きを障害したり、新たに有害な機能を獲得して疾患の原因となることがあります。