新生児の急性血液浄化療法に対する最適な施行方法はまだ試行錯誤の状態である。比較的症例経験のある施設においても経験的な部分が大きく、施設による機種・機材の納入状態などにより異なるのが現状である。経験の豊富な施設では安全性を考慮すると現在慣れた方法が最適と考えられるが、経験ある施設同士の共有、さらにまだ経験の少ない施設での参考という観点から、我が国で新生児急性血液浄化療法経験の多い5施設での条件からまとめた案を提示する。
また、我が国は、低血流速にも対応する器械、低容量のモデュールや回路などが揃っており、欧米の推奨する方法やカテーテルとは必ずしも一致しない。
バスキュラーアクセス
安定した血液浄化療法のためのバスキュラーアクセスの基本は、ダブルルーメンカテーテルの使用であり、右内頸静脈より挿入して、先端を右房近くまで深く留置することを推奨する。しかし新生児領域特有の臍動脈・臍静脈や交換輸血の際の動脈脱血―静脈返血も新生児領域でのバスキュラーアクセスとして使用可能である。
現実には、血液浄化療法目的に新たに血管確保がなされることは少なく、施行時にすでに留置されているルートを運用する工夫も大切であり、施設・医師の慣れた方法を選択する(以下のI~IIIを参考)。
I.:ダブルルーメンカテーテルを使用する場合
- 太さ:6~7Fr(低体重児では15~17G中心静脈用カテーテル
(全長の短い10~15cmのもの)) - 挿入部位:右内頸静脈 または 大腿静脈
- 方法:穿刺(または直視下)
II.:臍が使用可能の場合
- 臍動脈―臍静脈
臍動脈(3.5Fr,5Frアンビリカルカテーテル)
臍静脈(15~18G中心静脈用ダブルルーメンカテーテル) - 臍静脈―臍静脈
- 臍動脈―末梢静脈
末梢には可能な限り太い留置針(22G, 24G)を使用する。 - 末梢動脈―臍静脈
末梢には可能な限り太い留置針(22G, 24G)を使用する。
III.:末梢動脈―末梢静脈
プライミング
A. プライミング血液調整(バッグ内または50mLシリンジを使用)
赤血球濃厚液(RCC):新鮮凍結血漿(FFP)(または5%アルブミン製剤)= 1:1(~3:1)
施設・病態により(+ ヘパリン、血小板、ハプトグロビンなどを加える)
B. プライミング血液の処理
- 透析を行う場合
通常の生食プライミング後、プライミング血液を回路内充填し、ろ過用補液(サブラッドGSGなど)にてCHDモード(透析モード)で
Qb 20~40 mL / hr, Qd 500mL~1,000 mL / hr で 5~ 15分間透析し、血液ガス分析器にて電解質、HCO3-を確認。 - 透析を行わない場合
RCCは新しいものを用意、K吸着フィルターでカリウム除去
100mlあたりメイロン5~10ml、カルチコール5~100で補正し、血液ガス分析器で確認。カルチコール投与前にヘパリン2単位/mlを投与して血液凝固を防止する。
【開始後】
- 開始時低血圧への対処
患児の基礎疾患や病態、血圧の程度、Hb, Ht, Alb値を考慮し、早めの対処・準備を行う。
―具体例
・開始は血流速度をゆっくりあげる
・開始時、昇圧剤を一時的に1.5~2倍に上げる。
・開始時にアルブミン、血液、細胞外液をボーラス投与あるいは
ベッドサイドに準備。 - 低体温に対する対処
開始時のみならず施行中も体温管理が重要。個々に工夫するしかないのが現状。
-具体的
・インファントウオーマー、クベースの設定温度を上げる。
・コイル型加温槽を使用して、補充液・透析液を温める。
・患児にラップをかける。
・返血ラインをアルミホイルで包む、市販のHot Lineの使用。