血液浄化とは
急性血液浄化療法とは、何らかの原因により急激に患者体内に病因物質または毒性物質が蓄積することにより体液の恒常性が破れ、生命の維持にも影響が現れた場合、血液を通して対象物質を除去し体液の恒常性と生命予後の改善を目指す治療法である。急性血液浄化療法は、集中治療領域において今や必須の治療法である。新生児領域においても、体外循環を併用した集中治療の進歩や、低体重児対応の透析器や透析膜の開発がすすみ、徐々に実施される機会が増えてきている。
新生児における急性血液浄化療法の適応は、溢水、電解質異常、代謝性アシドーシス、尿毒症物質の除去、アンモニアなどの小分子除去、サイトカインやエンドトキシンの除去などである。
下記に、各種血液浄化療法について示す。
腹膜透析(Peritoneal Dialysis PD)
腹膜を利用して、低分子量の物質を拡散により交換する方法。特殊な装置や抗凝固剤が不要であるが、除去効率は悪い。
血液透析(Hemodialysis : HD)
血液と透析液の間の半透膜の透析膜を介して、濃度勾配に従って物質が移動する拡散と膜内外の圧力格差によって物質の移動を行う限外濾過を原理とした治療法であり、除去できる分子量は300以下、水、電解質、クレアチニン、尿素などである。新生児では間欠的HDは困難であり、持続で(Continuous hemodialysis:CHD)行う。
血液濾過(Hemofiltration : HF)
透析液を使用せず、限外濾過で体内の不要物質(分子量5万以下)を含んだ水分を除去する方法。中分子を除去できるが、低分子量の物質の除去能力は、血液透析に較べ劣る。やはり新生児では持続で(Continuous hemofiltration:CHD)行う。
血液濾過透析(Hemodiafiltration : HDF)
HDとHFを組み合わせることで、小~中の分子量物質の除去性能に優れている。PDを除く新生児での血液浄化療法としては、この持続的療法(Continuous hemodiafiltration : CHDF) が一番選択される。
血液吸着療法(Hemoabsorption : HA)
特定の物質に親和性を有する吸着剤を利用して血液中の毒素などを吸着除去する治療法であり、全血を用いる血液吸着と血漿分離後の血漿を用いる血漿吸着がある。
エンドトキシン除去療法はエンドトキシンに親和性の強い抗生剤であるポリミキシンBを共有結合させたカラム内に全血を還流させることにより、血液中のエンドトキシンを吸着除去する治療法である。
血漿交換(Plasma Exchange: PE)
血液を血球成分と血漿成分に分離した後に血漿成分を廃棄し、凍結血漿やアルブミンで置換することにより、有害な抗体など大分子を除去する。
交換輸血(Exchange transfusion)
現在、NICUで一般的な血液浄化療法で、特殊なカラムを必要とせず、血液を交換する。大量の輸血が必要となり、感染などの副作用がある。
急性血液浄化療法により最大の効果を得るためには、時機を逸することなく開始し、適切な浄化方法の選択と浄化量を設定することが重要である。また、新生児では、その体格の小ささや未熟性・疾患の特異性から、様々な工夫を要する。循環動態の維持に対する細心の注意が求められ、出血傾向に対する対応や、感染防御、体温管理・栄養管理などを要する。