共同謀議問題を考える意義
-血友病HIV/AIDSやディオバンの轍を踏まないために-
要約:血友病HIV/AIDS禍をはるかに上回る被害者を生んだ新型コロナワクチン禍では、血友病HIV/AIDS禍と同様、責任者が刑事訴追を受ける可能性を考慮しておく必要がある。事件の性質上、起訴にあたっては共同謀議の可能性が検討されることは必至である。ところが、米国と異なり日本では共同謀議立証のハードルが極めて高い。仮に刑事告発を受けて起訴されるとしても、血友病HIV/AIDS禍やディオバン訴訟同様、被告人が単独となる可能性もある。そこで血友病HIV/AIDS禍及びディオバンの裁判事例と新型コロナワクチン薬害事件を比較したところ、同事件で共同謀議があったとして起訴される可能性を完全には排除できないものの、告発は安易になされるべきではなく、告発に至るほどの事実が認定できるのならば、まずは国家賠償訴訟での速やかな勝利を目指すべきであろうとの結論に至った。
はじめに
法曹以外の方は,前回(共同謀議成立の可能性について)いきなり「共同謀議」という言葉が出てきて戸惑われたと思います。前回の記事で私が共同謀議問題を提起した理由は,「目下法曹の間で検討されているであろう訴訟戦略に重大な影響を与えるのが刑事訴追の可能性だが,その可能性を考える時の最重要キーワードが『共同謀議』である」からなのですが,そう言われてますますわけがわからなくなる方は下記を御覧ください。
医薬品副作用被害の刑事事件化は不可能(なはずだった)
ワクチンを含め,医薬品副作用被害の刑事事件化はほぼ不可能です。それはもちろん誰も被害を起こそうとして起こすわけではないから,つまり犯人がいないからです。犯人がいなければ,それを刑事事件にはできません。それなのにマスゴミと検察がぐるになって業務上過失致死罪として無理矢理でっち上げたのが血友病HIV/AIDSでした(薬害ビジネス)。安部 英先生は一審で無罪でしたが,身の程知らずの検察が控訴して敗北を引き延ばしたために最終的に無罪判決を確定できずに亡くなりました。一方,当時厚生省生物製剤課長だった松村明仁氏は,残念ながら業務上過失致死罪で2008年に禁錮1年執行猶予2年の有罪が確定してしまいました。これは冤罪でした。松村氏には何の過失もありませんでした。彼はFDAに嵌められたのです(FDAによる血友病HIV/AIDS禍の隠蔽)。
ディオバン「事件」における検察への圧力
マスゴミや薬害オンブズパースン会議が「薬害」と称したディオバン「事件」では副作用被害は一切生じていません。被害もなければ被害者もいない。そもそもその点だけでも刑事事件化は不可能だったのです。起訴自体が東京地検特捜部による茶番劇でした。医学ジャーナリスト大賞を受賞した毎日新聞の特ダネ記者が「データ改竄の真犯人」と特定したはずの松原宏明京都府立医科大学循環器内科学教授(当時 現ひかりハートクリニック院長)は,製薬企業から多額の資金提供を受けていたことが明らかになっていたにもかかわらず,何と検察側証人となって被告人(ノバルティス社の元社員 白橋伸雄さん)に全ての責任をなすりつけました。でっち上げは直ちに裁判所に見透かされ,1審で無罪の後も(【ディオバン裁判】判決が意味するものとは 前編)、控訴・上告と、検察はあっさり3連敗を喰らいました(ディオバン事件で3タテ喫した検察 引き返す勇気はどこに?)。
こんな見え透いたでっち上げに検察を追い込んだのは,事件の本質を全く理解せずに新コロバブル同様の無意味などんちゃん騒ぎを繰り広げたマスゴミと国民の皆様です。彼らは厚労省を無意味な告発に追い込みました。そしてその告発が「巨悪を眠らせるな」という国民の皆様の期待となって検察にのしかかっていったのです。
薬害オンブズパースン会議の告発が受理されなかった原因
マスゴミと国民の皆様が検察の事情も知らずに勝手に思い描いていたのシナリオが「組織ぐるみの犯罪」です。「企業から金を貰った大学教授とその医局員一味が結託してでっち上げた論文が,広告として絶大な威力を発揮して,ディオバンを売り上げトップの降圧剤に押し上げ,企業は莫大な利益を上げた」。薬害オンブズパースン会議の告発状に被告発会社として「ノバルティスファーマ株式会社」とあったのも,「組織ぐるみの犯罪」を意識していたことが窺われます。メガファーマの摘発は「巨悪を眠らせない」を金看板とする検察にとっても美味しいネタとして飛びついてくるに違いないとでも思ったのでしょうか。しかし現実は逆でした。検察は薬害オンブズパースン会議の告発をあっさり不受理として(*),厚労省の告発だけを受理したのです。それも渋々ながらです。なぜなら厚労省の告発さえも,被告発者を「氏名不詳者」として特定していなかった「中身のない丸投げ告発」だったからです。
*個人ではなく法人である会社を告発した時点で告発自体が無効となる。薬事法(現在の薬機法)違反は自然人に問うものであって法人に問うものではない。だって会社の建物と人員をそっくりそのまま刑務所に収容するわけにはいかないでしょ。これが薬害オンブズパースン会議の告発状が不受理に終わった原因,「組織ぐるみの犯罪」がおとぎ話に終わった原因です。ここのところを未だにわかっていない人が多すぎるから,ディオバン事件のような無理筋の起訴が起こってしまうのです。
検察の苦悩
薬事法(現在の薬機法)は厚労省の所管です。その所管省庁が被告発者を「氏名不詳者」とは何事か!無責任にも程がある。東京地検特捜部はさぞかし腹を立てたでしょう。しかし「巨悪を眠らせない」との金看板がある以上,何とかシナリオを考えて起訴しなければ特捜の面目が丸つぶれだ。とそう悩んだ挙げ句にでっち上げた犯人。それは会社の社長ではなく,大金を受け取った大学教授でもなく,白橋さんたった一人でした。毎日新聞の特ダネ記者によるでっち上げの犠牲者です。それもこれも彼らが「組織ぐるみの犯罪」を国民の皆様に売りつけたからです。
共同謀議立証の難しさが検察3連敗の誘因となった
ではなぜ検察はマスゴミの言うなりになれなかったのか?その原因となったのが共同謀議立証の難しさです。この問題については前回の記事でも紹介した「国際軍事裁判の論理 - 検証・戦争責任」を始めとして,オンライン・オフラインを問わず数多ある資料を御覧ください。起訴の独占権を持つ検察,その中でも最も起訴に詳しいはずの東京地検特捜部でさえ,共同謀議立証には躊躇うのです。そして結果的に白橋さんたった一人を起訴しました。すべて医師でもなく、博士号もない白橋さんが一人で論文のデータを改竄して京都府立医大循環器内科の偉い先生方に「論文を書かせてやった」というのです。そんなシナリオは一般市民にも受け入れがたいでしょう。案の定1審から無罪、控訴審、上告審とも原判決を支持した3連敗を喫しました。それもこれも検察が白橋さんたった一人でデータ改竄を行ったというシナリオ作成に腐心する余り、肝心の公訴事実「当該論文は誇大広告となった」の立証を怠ったからです(ディオバン裁判】判決が意味するものとは【後編】))。まるで安曇野は大王農場から取り寄せたわさびで冷凍物のマグロを握った銀座の寿司屋みたいに。そりゃあー負けますわなー。
告発には責任が伴う
血友病HIV/AIDSにせよ,ディオバンにせよ,これまでの薬害事件の告発・起訴は,その必須要件を全く無視した無責任極まりないでっち上げでした(文句あっか)。では新型コロナワクチン薬害事件における刑事告発のハードルの高さはどの程度でしょうか?血友病HIV/AIDS禍やディオバン「事件」のように,告発・刑事事件化などお話しにならないほど高いハードルが待ち構えているのでしょうか?私個人はそうは思っていません。なぜならば,血友病HIV/AIDS禍やディオバン「事件」のように,無理筋のシナリオをでっち上げる必要がないからです。各会合のメンバーが公開されていることはもちろん,その会合で使われた公開資料だけで,ワクチン禍が生じた経過を辿れます。議事録で個人の見解も検証できます。
まずは国賠訴訟の勝利を。刑事は検察に任せるのが上策
問題はまずそれが共同謀議にあたるかどうかです。「謀議」だとすればデータの隠蔽,改竄などの操作があったかどうかが問題になってきます。謀(はかりごと)の要素が否定されれば,そこで共同謀議の問題は終了し、次は「過失」の有無を検証する必要があります。告発するとしても,その前に少なくともこの二つの段階を踏まなければ,血友病HIV/AIDSやディオバンの轍を踏むことになってしまいます。くれぐれも「氏名不詳者」を告発するなんてみっともない真似はしないように。潜在的な告発者の方々も,その告発者を支援することになるであろう方々も,以上の点を踏まえれば,緊張感を持って被告発者候補の動静を監視し記録していくことができるでしょう。告発には責任が伴います。我々の役目は事実を整理し、そこにどんな不正が見出されるのかを明らかにすることです。そうすれば国賠訴訟で1審勝訴、控訴審なしも十分可能です。その不正がどんな罪に当たるのか判断するのは検察の仕事です。餅は餅屋。起訴の判断は独占権を持つ検察に任せるのが上策です。
→ディオバン事件告発の「成果」
→法的リテラシー
→新コロバブルの物語
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