LDLコレステロールの場合は本当に運が良かった。なぜなら、血中LDLコレステロールが低いと心血管イベントのリスクが低いという観察研究が積み重なって→LDLコレステロールを下げる薬がLDLコレステロールを下げるという代用エンドポイントだけでまずは承認されて→実際にLDLコレステロールを下げる介入研究の結果、心血管イベントのリスクが下がることが実証されたからだ。
しかし、風が吹いても必ずしも桶屋が儲かるとは限らない。最高に運の良かったLDLコレステロールでも、ホルモン補充療法のように、LDLコレステロールが下がっても、心血管イベントリスクが下がるどころかむしろ高くなってしまう、悪夢のシナリオも厳然と存在するからだ。
また、近年、血糖を下げる薬がごまんと出てきているが、こいつらも大半は単に血糖を下げるとか、せいぜい75gOGTTの反応性とか、情けない代用エンドポイントを主要評価指標にして、プラセボに勝っているに過ぎない。十年後、二十年後にはどうなっていることやら。もっとも、網膜症や腎障害のようなハードエンドポイントを指標にした試験が行われない限り、承認整理はされないわけだが。
ましてや、アミロイドのようないかがわしい代用エンドポイントを頼りに開発するなんてのは、錬金術か常温核融合並の冒険に他ならない。少なくともここ(2012年8月)までは屍累々だ。残存部隊の健闘を祈る。