ある方から、PMDAにいる医師の専門領域についてお問い合わせいただいた時のやりとりから。PMDAがどうこう言うはるか以前に、医師の専門性の判断という、深遠な問題が根底にあることがわかる。以下に述べるのは,PMDA固有の問題ではない.もっと一般的な問題である.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
先生のHPを拝見するとPMDAに各領域の専門の医師がいないことが問題である、という主張が書かれています。では、現在の(あるいは先生がおいでになっていたとき)PMDAには感染症の専門の医師はおいででしょうか。質問は、専門医資格を持っているか、といった形式的な部分と、抗菌薬学や細菌学だけでなく、感染症の診療能力があるか、という実質的な部分と二重にさせてください。もし、お答えできない事情が何らかの理由でおありでしたらこのメールはお読み捨てください。もともと無理でぶしつけなご質問だとは承知していますので。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
> もともと無理でぶしつけなご質問
私はそうは思いません。PMDAが大切な組織であり、この質問によってそこで働く人達がどういう点で困っているのかを知って、それが改善できれば、PMDAのアウトプットがより良質なものとなり、PMDAの評価が高まる
そういう道筋を意識した質問だということが私にはわかります。
専門領域・診療能力の判断根拠について:専門性の判断を、どのような根拠をもって、誰が、いつ判断するかが問題です。
○採用時の判断材料の問題:PMDAの医師の診療科、専門領域の定義は内規として文書化されたものはありません。一般的な履歴書の自己申告が全てです。就職時に医師免許のコピーは提出しますが、履歴書に書いた専門医資格の根拠となる文書の提出は求められません。
○選考する人々の問題:PMDAの採用時の審査は、書類・面接審査と試験がありますが、いずれもの過程でも、厚生労働省からのローテーション人事でPMDAに来た薬学部出身者と法学部出身者で選考が行われるため、専門領域・診療能力の適切な判断ができない人々によって臨床医の採用が決まります。驚かれるかもしれませんが、採用の審査を行うメンバーの中に、臨床医は入っていません。
○PMDAの中では診療は行いません。ですから、その人の診療に、PMDAメンバーのpeer
reviewが入ることは一切ありません。ちなみにPMDAの医師の出身母体は完全にばらばらです。口コミで有力情報が入ってくる可能性も非常に低いのです。
○そうしますと、専門領域・診療能力の判断は、本人の説明と、臨床医の間で暗黙知的に行われるpeer
reviewが全てです。なお、PMDAの臨床医は週に1日、外部施設で診療を行ないますが、よほどひどいことをしない限り、そこでの評価がPMDAにフィードバックされることはありません。
以上より、専門領域・診療能力の判断がなされない現状と、それはなぜなのかという問題の方が、すでにPMDAにいる医師の専門性云々の問題より先にあることがわかっていただけると思います。また、先生のご質問に対する回答をしたとしても、断定的なことは言えず、その客観性も疑わしいこともわかっていただけると思います。
> 現在の(あるいは先生がおいでになっていたとき)PMDAには感染症の専門の医師はおいででしょうか。
1.専門医資格を持っているか、といった形式的な部分
不明というのが、一番正直なところです。専門医資格はすべて自己申告で、それも、義務ではありませんから、たとえ専門医資格を持っていても、本人が黙っていれば、持っていないと看做されます。実際に、内科専門医資格を持っていても、自らは言い出さなかったため、たまたま話題になった1年後に初めて判明したような事例もあります。
2.抗菌薬学や細菌学だけでなく、感染症の診療能力があるか
これは全くわかりません。上記の説明の通り、判断材料が全くないのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・