「期待の新薬」に騙されるお医者様達
FDA,大規模試験,トップジャーナルの三大真理教信者達によるどんちゃん騒ぎ
脳循環代謝改善薬、ARB、そして新規糖尿病治療薬バブル
かつて我が国を席巻した脳循環代謝改善薬バブルについては、すでに多くが語られているので、ここでは触れない。FDA真理教、大規模試験真理教、そしてトップジャーナル真理教信者たちがお祭り騒ぎを繰り返し、今を盛りの 新規糖尿病治療薬バブル。本稿の目的は、そんなバブルのリスク低減策を提案することにある。新規糖尿病治療薬バブルを論ずる際には、かつてのARBバブルの事例検討が大いに参考になる.なぜならARBバブルと 新規糖尿病治療薬バブルには以下のように非常に興味深い共通点があるからだ。
1.ゾロ品を新薬と称してバカな医者に売りつけた:ただの血糖降下薬なのに、さも素晴らしい薬かの如く喧伝されている新規糖尿病治療薬の立場は、ただのACE阻害薬の後発品に過ぎなかったのにどういうわけか「期待の新薬」とちやほやされてバカ高い値段がついたARBと瓜二つである。
2.イカサマ論文がバブルの原動力となった:トップジャーナルに掲載された大規模試験とやらの論文が、とんでもないイカサマだったり、イカサマとまではいかなくても「違法ではないが不適切」なツッコミどころ満載だった点も共通している。
3.トップジャーナルが黒幕になった:上記のイカサマ大規模試験の結果が「最高級のエビデンス」と絶賛され、製薬企業がバカ高い金を払って出版社から買い取った別刷が、宣伝ビラとして世界中にばらまかれた
特に我が国では、ARBバブルは刑事訴追を招いた。それゆえ本稿での提案は、 新規糖尿病治療薬バブルでお祭り騒ぎを繰り広げている人々にとって、将来の刑事訴追リスクを回避するために大いに役立つであろう。ARBバブルは海外、特に米国でも生じていたが、抗うつ薬、COX-2阻害薬などと異なり、裁判沙汰にならずに静かに消滅していった。ARBバブルに踊った人々が、なぜ訴訟大国の米国で刑事訴追を受けず、日本では薬事法違反を問う裁判に巻き込まれるまでに至ったのかについては、非常に興味ある問題だが、本稿の目的とは異なるので、別途論ずることとしたいのでお楽しみにね(^^;)。
NEJMのアホ論文の数々から学ぶべきこと
トップジャーナルに載った、ARBのイカサマ大規模試験論文については、すでにその論文が登場した際に、イカサマだとの指摘がインターネット上で公開されていた。ネットなど見ないという奇特な人でも、論文の表紙さえ見ればイカサマであることは一撃診断できた。かの有名なKyoto Heart Studyの表紙を見るがいい。Received 4 August 2009; accepted 13 August 2009とある。
論文を投稿したのは夏休みの真っ最中だが,論文の査読は夏休みの宿題とは違う.心血管イベントに対する降圧剤の効果を検証した大規模試験を投稿し,その査読が完了しアクセプトと結論する全工程が9日間で完了すると確信できるのは,検察官のように,医療も臨床研究も全く知らない人間だけである.そして,編集長の判断なくして,査読無しで論文を掲載するなんて暴挙は不可能である.つまり、Kyoto Heart Study論文では,編集長と著者が談合して、査読無しで掲載された.そのことを、堂々と論文の表紙で宣言している。そんな論文のどこが「誇大広告」なもんか。臍が茶を沸かす。しかし東京地検の検察官はどうして臍が茶を沸かすのかも理解できていない.もし理解できていれば不起訴にせざるを得なかったのである.
ARBバブルにおけるこの教訓は、新規糖尿病治療薬バブルにそっくりそのまま生かせる。下記に示すNEJMのアホ論文の数々は、新規糖尿病治療薬バブルに対する警告に他ならない。これらの論文の馬鹿馬鹿しさが理解できれば、あなたは被告席に座る確率をゼロにできるし、調子に乗って「エンパグリフロジンは歴史に残る素晴らしい薬だ」と辺り構わず触れて回れば、数年後には毎日新聞の記者につけ回された挙げ句に職を失う羽目になるかもしれない。
EMPA-REG-OUTCOME:歴史に残る子供だまし.NEJM自らがNEJM真理教とともに,大規模試験真理教とFDA真理教をも完膚無きまでに叩きのめした記念碑的な論文であり、ヘルシンキ宣言違反というビッグなおまけつき。
LEADER:リラグルチドはリーダーどころか、その他大勢の血糖降下薬の一つ,それも三番手以下に過ぎないことが証明された。プラセボ群だけが高リスクの状態に放置されるという重大な倫理違反のビッグなおまけつき。
新規糖尿病治療薬バブルは、さらに臨床試験の批判的吟味までも封じてしまう→なぜかプラセボ群だけが不利になった:新規糖尿病治療薬の安全性検証試験に見られた糖尿病コントロールの群間不均衡について
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