タミフルの有効性について 2017/1/30

タミフルの有効性に関しては、最低限、次の二つのサイトに目を通しておくこと。これさえ見ずに効くだの効かないだの議論するのは素人。
1.コクランとBMJの共同声明
2.BMJ報道発表 タミフルとリレンザにはどの程度効果があるのか?

「予防投与」を推奨する某学会ガイドラインの「効果」に関しては→こちら

そして、タミフルの有効性について、より頑健な議論をするためには、やはり審査報告書は必須である。その治療有効性検証試験では、国内外共に全て発症・診断確定後の患者さんを組み入れている。この17ページに国内臨床試験の結果が記載されている。有効性の主要評価項目である症状の持続期間の中央値はプラセボ群で121時間、実薬群で98時間。つまり5日間→4日間の1日短縮しただけだ。さらに、プラセボ群の方に喫煙者が多く、開始時症状トータルスコアが高かったという不利なバイアスがかかっている。

予防有効性検証試験は行われたが、その肝心の有効性検証結果については公表されていない(黒塗りならぬ白塗りになっている)。安全性の結果のみがオープンになっている。そんなこともあって審査側(当時の医薬品医療機器審査センタ-)は、予防効果が臨床試験で認められたとは判断していない。

このように、タミフルには市販の風邪薬と同程度の、鰯の頭に毛が生えた程度の有効性しかない。それで当時の国民の皆様は「夢の新薬」の承認を遅らせる役所として厚労省を異常なまでに叩いた。その結果、申請20007/25→審査報告書2000/11/15→承認20012/12と、これも異様なスピードで承認まで漕ぎ着けた。FDA承認が1999/10/27だから、承認ラグが14ヶ月弱というのも、当時としては驚異的に短い承認ラグである。

挙げ句の果ては、例の「異常行動」問題で、一部の市民団体からは、承認を取り消せと圧力を受ける始末。そういう時に限って、「夢の新薬を早く承認しろ」と言った連中が忽然と姿を消してしたのは、イレッサの時と全く同様だった。

さらにタミフルの有効性検証試験は、国内外を問わず、ワクチンの上乗せ試験ではないことにも注意すべきだ。ワクチンの有効性を踏まえれば、ワクチンを接種した患者では、タミフルの有効性は消し飛んでしまう可能性も十分ある。

さらに、重篤な合併症であるインフルエンザ脳症をタミフル早期投与で予防できるエビデンスもない。そう断言できるのは、インフルエンザ脳症のイベント数から考えても、そのようなプラセボ対照試験は不可能だからだ。そもそもインフルエンザ脳症に対するタミフルの有効性が確立していれば、「異常行動」問題も起きなかった。

なお、タミフル以外のインフルエンザ治療薬はタミフルのゾロ、つまりその有効性はタミフルと同様に考えるべきである。なぜならば、全てタミフルと同様にプラセボ対照試験により有効性を検証しており、タミフルに対する優越性が証明された薬は一つもないからだ。鰯の頭に毛が生えた相手なら勝てそうなもんだが。そんな度胸もねえと見える。

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