高度医療評価制度

高度医療って、高度な医療じゃないの?
次の通知にある「高度医療」なるものは一体何だろうか?介入試験としての臨床試験・臨床研究や、未承認薬・未承認医療機器に関心のある方は是非とも知っておく必要がある。キーワードは、未承認薬・医療機器、先進医療、混合診療である。

医政発第 0331022 号平成 20 年 3 月 31 日 厚生労働省医政局長 高度医療に係る申請等の取扱い及び実施上の留意事項について

しかし、例によって,厚労省の局長通知など,読む気も起きないだろうし,もし万が一勇気を奮って読み始めたとしても,最初の数行で挫けてしまうだろうから,大本営勤務4年の戦歴がある私の出番があろうというものだ.「高度医療」とは、一般名詞のように見えて、一般名詞ではない。少なくとも、規制当局とその関係者が使う時は、特別な定義がある。

高度医療の定義は、「薬事法の承認等が得られていない医薬品・医療機器の使用を伴う先進的な医療技術」である。類義語である「先進医療」も同様に、先進的な医療技術だが、先進医療では、未承認薬・未承認の医療機器を使わない。

先進医療との類似点と相違点
いわゆる最先端の診療行為は、新しいだけに評価が定まっていない。それを野放しにせずに、表に出して見えるようにして、品質管理するとともに、第三者が有効性と安全性が評価できるような仕組みを作らなければならない。

薬・機器といった「物」に対する規制として薬事法という法律があるのに対し,既承認の薬・機器を使いながら,それを使う技術そのもの(例えば外科の新しい術式など)を規制する法律がないので,先進医療評価制度を作って,有効性と安全性を評価し,保険導入の有無も検討しようとしたのが,先進医療評価制度である.

上記の通知が出る2008年3月までは,未承認薬・医療機器を使わない先進的な医療技術を,先進医療と名付けて,専門家会議で吟味して,施設を限定して混合診療を認めていたし,治験のレベルまではとても及ばないが,有効性,安全性のデータも集めていた.

未承認の技術を使う治療は(狭義の)先進医療、未承認の薬・機器を使う治療は高度医療
ところが、薬・機器についても、日本での承認を待たずに、医師あるいは患者が個人輸入して使う例が、近年増加している。未承認の抗がん剤や、血管インターベンション治療用機器がその典型例である。

未承認薬・医療機器の使用は、経済的な問題以外にも、それを使って副作用・事故が生じた場合の責任の所在、補償など、重大な問題が生じる危険性を常に伴う。かといって、ドラッグラグ・デバイスラグが生じている以上、未承認薬・医療機器を一様に禁止するわけにもいかない。

ボルテゾミブによる肺障害は,未承認薬で重大な副作用が生じた事例として,数々の教訓を残した.詳細は日経メディカルオンラインの記事を参考にしていただきたいが,イレッサでの苦い経験を生かして,硬直的な態度を取らずに,現場の医師,企業,規制当局が連携して,未承認薬の安全性情報が公開され,悲劇の拡大を食い止めることができたことは特筆に値する.

この教訓を生かして、未承認薬・医療機器の使用についても,先進医療と同様に,施設を限定した上で,治療を認めるとともに,有効性・安全性に関するデータも収集できる体制を整えるのが,高度医療評価制度の目的である.

混合診療から保険導入へ?
未承認薬・医療機器を使う診療は,保険外となるから,高度医療評価制度のもとで行われる診療は,混合診療となる.高度医療評価制度では,未承認薬・医療機器を使う診療と保険診療の混合診療を,施設を限定して認める仕組みである.ここで,混合診療が可能な道がまた一つ開かれたことになる.

さて,そうなると,次に,関心の的となるのは,高度医療の承認申請と保険導入であろうが,これはそれこそ,薬事法に基づく規制の対象となるから,先進医療と同様というわけにはいかない.ではどうなるのか?ここまで読んできたあなたならば,後は自分の頭であれこれ考える楽しみを味わうことができるに違いない.

参考:高度医療評価制度2パンドラの箱が開いた

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