適応外使用問題を考える人は,必ず55年通知を知っておくこと!
日本で適応外使用をやいのやいの言うのは、誰も自分で金を払いたくないからだ。PMDAの承認なんか、実は全然関係が無い。しかし、そのことに誰も気づいていない。あるいは少しでも頭が働く人は、気づいていないふりをしている。誰でも自分は正義の味方であり、自分で金を払いたくないばかりに大声を上げているとは思いたくない。
でも、このような、根本的な理念のレベルで思い違いがあるから、いつもいつも不毛な議論の繰り返しで、厚労省が悪い、PMDAが遅いで思考停止・自己満足を繰り返すばかりで、結局は何も変わらない。
患者団体やお医者さん達が文句を言う相手は、科学的データによる承認審査をやっているPMDAではない。厚生労働省保険局医療課と中医協と支払い基金である。PMDAの承認なんかなくたって、お医者様たちがおっしゃるような頑健なエビデンスとカテゴリー1の再審査結果さえあれば、55年通知に基づいて、支払い基金は認めなくてはならない。医療費抑制のご時世故に,支払基金も柔軟に対応する使命がある.金をことには全く関与しないPMDAに文句を言うのは、完全なお門違いだ。
実際、太平洋の向こう側でも、マイケル・ムーアのSickoで非難されているのは支払い基金であって、FDAなど非難されるどことろかFDAのFの字も出てこない。
FDAの適応外使用に対する態度は、「承認した効能効果に比べて、有効性ばかりでなく安全性のデータも乏しいから、責任持てないよ。あくまで現場の医師ー患者関係の中で自己責任でやってね」であって、それ以上のものでも以下のものでもない。「金を誰が払うかなんて、下世話な問題は、メタボな映画監督の仕事のネタにはなっても、俺たちには関係ねえ」なのだ。ところが日本にいる多くのFDA信奉・鹿鳴館主義者達も、この点については見て見ぬふりをするばかり。
こんなとんでもない論理のすり替えに誰も気づいていない(ふりをしていても責められない←あたしは見逃さないけどね)のはなぜか?それは科学的データによる承認審査と、誰が金を払うかの問題が、日本ではまるきり混同されているからだ。もしこの点で、日本の制度がが合衆国と同様であれば、その制度の良し悪しは別にして、適応外使用は科学の問題ではなく、誰が金を払うかの問題だと、否が応でも意識しなければならない。
参考:加齢黄斑変性に対するアバスチン