臨床試験の基礎知識

臨床試験は文化である(大橋靖雄),くすりはリスク(佐久間 昭)

このページにも偉そうな題名がついていますが,例によって私が日頃仕事をやっていく中で気づいたこと書き留めたものです.話題は順不同で並んでいま す.

参考になるウェブサイト:(協力:紀平さん)
●治験・臨床試験情報:(財)日本医薬情報センター臨床試験情報国際製薬団体連合会IFPMAの臨床試験ポータルサイトUMIN臨床試験登録システム(承認申請を前提とした薬事法に基づく治験ではなく,臨床研究が中心)
製薬ナビ:就職活動の学生向けと謳っているが,これがなかなか面白い.一番売れている薬とか,”これを知らなきゃ始まらない!  製薬業界の現状と展望 ”とか,基本的なことなのだけれど,実際にデータが確認できる.
仮想の製薬会社:製薬会社 内での治験の進め方(治験届対応含む)の様子がわかるかも、です。(日記風に、随時更新)
治験ナビ
API GMP Information: 新薬の開発、特に原薬についてのGMPや海外での申請業務
Online Med:行政・薬事・企業の話題

参考文献
いわゆる二課長通知:公知申請について:
「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」平成11年2月1日付 研 第 4号、医薬審第 104号,厚生省健康政策局研究開発振興課長、厚生省医薬安全局審査管理課長
http://www.nihs.go.jp/mhlw/tuuchi/1999/990201/990201a.pdf
http://www.nihs.go.jp/mhlw/tuuchi/1999/990201/990201a.html

中村治雅、宇山佳明。最近の医薬品開発の現状と治験デザイン:バイオマーカーと臨床的エンドポイント。神経治療学。2006;23:607- 613.
藤原康弘, 2000年に承認された新薬と外国臨床データの利用について-適用外使用とブリッジング試験を巡って-, 医薬品研究, 32(10):639-651, 2001
大橋靖雄 臨床試験における生物統計のインプットとデータ管理.インフラストラクチャーの整備と教育.薬理と治療 1998 vol 26 Supplement S525-S530

日本の薬事情報を英語で紹介するために:英語の発表の時にも役に立つ
日本の薬事行政和文(PDFで 落とせます)同英文(こ れもPDFで落とせます)

英文薬事法(こ れもPDFで落とせます)

薬事法和文の方はあちこちに htmlでありますから、二つ合わせてこれも対訳になりますね。

日本の国内 法の英訳

薬事以外の言葉が圧倒的に多いですが、こんなのもあります。和英厚生労働行政辞典
これはエクセルファイルのダウンロードもできます。
 

ICH関係
森 和彦.E5ガイドラインの運用の動向.医薬品研究 2004;35:122-8

規制当局や米国の臨床研究の現況
FDAとユー ザーフィー
宇山佳明.米国食品医薬品庁,医薬品審査・研究センターにおける医薬品審査の現状.医薬品研究 2004;35:363-73.
小野俊介他.米国における臨床研究の実施体制と医薬品の承認審査の現状-FDA, OHRP及びGeorgetown大学におけるインタビュー結果の概要ー.臨床評価 2004;31:261-72
斎藤和幸,上田慶二.米国における臨床研究の実施体制ーJohns Hopkins Universityにおけるインタビュー結果の概要ー.臨床評価 2004;31:251-9

医師と製薬会社の関係
D. Blumenthal.  Doctors and Drug Companies.N Engl J Med 2004; 351 : 1885-1890                             
D.M. Studdert and Others. Financial Conflicts of Interest in Physicians' Relationships with the Pharmaceutical Industry ? Self-Regulation in the Shadow of Federal Prosecution. N Engl J Med 2004; 351 : 1891-1900

55年通知問題
適応外使用の実態
”医学薬学上の公知”をわかりやすく説明
治験終了後の治験薬の使用,配給を巡っての議論
薬価はどうやって決まるのか?
治験の中での海外試験データの位置付け
医師主導治験の問題点
医師主導の治験は特定療養費の対象


55年通知問題:学会の見解を認めない支払基金
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審査支払機関の在り方に関する検討会
「保険診療ルールと診療現場には大きな乖離あり」◆Vol.4
山口・虎の門病院院長、ルールの公開、学会等との協議の場の設置を要望
m3.com 2010年6月25日 橋本佳子(m3.com編集長)

医薬品の適応外使用を認める根拠となる、昭和55年の当時の厚生省保険局長による「55年通知」にも言及、「学会等の働きかけにより、ようやく支払基金も審査情報提供検討委員会で、『55年通知』について検討するようになった。しかし、学会が公知だとして要望しても、実際に認められたのは、2007年は553事例中47事例で8.5%、2009年は826事例中33事例、4%にすぎない。学会は根拠を持って要望しているのになぜ認められないのか理由を示してほしい」(適応外使用として認められる薬剤は、支払基金のホームページに掲載)。
また、「診療ガイドラインに対する誤解があるのではないか。ガイドラインはエビデンスに基づいた標準的治療法を提供しているが、それ以外の方法を禁止しているわけではない。しかし、診療報酬上には、『ガイドラインにそった医療』を要件にしている点数がある。これはガイドラインをよく知らない人が作成した要件ではないか。療養担当規則や薬剤の効能・効果、あるいは診療ガイドラインは、現在のあるべき適切な医療を必ずしも示しているわけではない」と山口氏は指摘。
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55年通知問題
保 険診療における医薬品の取扱いについて(昭和五五年九月四日)(保険発第六九号)、いわゆる55年通知は、厚生労働大臣の承認(添付文書での効能 効果、あるいは保険適応)がなくても、支払基金が支払いを認めることができるとした通知である。(下記)


現場が、お上に対してどこまでパターナリズム(効能効果・保険適応という名の印籠)を求めるのか、あるいは、印籠に頼らずに、科学的根拠に基づいて診療現 場と支払基金の間で話をつける自律性をどこまで発揮できるのか という根源的な問いかけが、55年通知問題の本質である。この55年通知は、武見太郎先生の功績である。

薬価基準に収載されている医薬品の適応外投与について

医 療をめぐる自由と責任”(武見敬三氏)の中で、適応外処方における医師の裁量性の尊重と題して、国会で、保険局長に、今でも55年通知は生きてい ることを確認。その時の厚 生労働委員会議事録

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○保険診療における医薬品の取扱いについて
(昭和五五年九月四日)
(保険発第六九号)
(各都道府県民生主管部(局)保険・国民健康保険課(部)長あて
  厚生省保険局医療課長通知)
標記について、別添昭和五五年九月三日保発第五一号をもって保険局長から社会保険診療報酬支払基金理事長あて通知したので御了知ありたい。

〔別添〕
保険診療における医薬品の取扱いについて
(昭和五五年九月三日保発第五一号)
(社会保険診療報酬支払基金理事長あて厚生省保険局長通知)
保険診療における医薬品の取扱いについては、別添昭和五四年八月二九日付書簡の主旨に基づき、左記によるものであるので通知する。なお、医療用医薬品については、薬理作用を重視する観点から中央薬事審議会に薬効問題小委員会が設置され、添付文書に記載されている薬理作用の内容等を充実する方向で検討が続けられているところであるので申し添える。

1 保険診療における医薬品の取扱いについては、厚生大臣が承認した効能又は効果、用法及び用量(以下「効能効果等」という。)によることとされているが、有効性及び安全性の確認された医薬品(副作用報告義務期間又は再審査の終了した医薬品をいう。)を薬理作用に基づいて処方した場合の取扱いについては、学術上誤りなきを期し一層の適正化を図ること。
2 診療報酬明細書の医薬品の審査に当たっては、厚生大臣の承認した効能効果等を機械的に適用することによって都道府県の間においてアンバランスを来すことのないようにすること。

別添 略
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支払基金が、「医薬品の適応外使用に対し『審査上認める使用例』」を公表している。

医薬品の適応外使用を認める事例を公表、薬理作用を根拠に47成分 支払基金(2007.9.25,0:20)

社会保険診療報酬支払基金は9月21日、医薬品の適応外使用に対し、47成分を対象に「審査上認める使用例」を審査情報提供事例としてホームページ上で公表しました。
 
「薬理作用が同様と推定される」ことを根拠としています。ただ、「薬理作用が同様」と推定されればすべて認めるというのではなく、「認める使用例」を個々の医薬品ごとに規定しています。

 小児適応のない医薬品の小児への使用を認めるものが最も多く、20成分にのぼっています。
 
不整脈治療剤のジソピラミド(製品名:リスモダン、ほか後発品)については、薬理作用が「不正薬抑制作用」で、「審査上認める使用例」として「小児の品脈性不整脈」をあげました。根拠は「薬理作用が動揺と推定される」としています。また、「留意事項」として、使用上の注意で「小児に対する安全性は確立されていない」と記載されていることを指摘しています。

ほかには、循環器科3成分、麻酔科2成分、皮膚科1成分、気道食道1成分、産婦人科4成分、感染症4成分、外科1成分、胸部外科1成分、眼科成分、血液7成分となっています。

支払基金は、審査の透明性を高めることで、公平性と公正性に対する信頼を確保することとし、「審査情報提供検討委員会」を設置、05年4月から順次、情報提供を進めてきました。
 
これまでに、検査35事例、処置6事例、手術3事例、麻酔3事例を公表していますが、「認める」ケースと「認められない」ケースがありました。今回の医薬品はすべて「認める」ケースの紹介となっています。

資料1:審査情報提供事例(薬剤)(社会保険診療報酬支払基金)

資料2:審査情報提供事例(全体)(社会保険診療報酬支払基金)



適応外使用の実態
日経メディカルオンライン2006年版・こ れが適応外処方の実態だ!

”医学薬学上の公知”をわかりやすく説明

アシクロビルの保険適応は、単純疱疹と帯状疱疹しかなく、水痘がないので、帯状疱疹という保険病名を使わなくてはならないことについて、あるMLで のやりとりから。

> なぜ、水痘が保険適応にならないのでしょうか?
> 治験症例がすくなかったのでしょうか?

まず、この部分の説明から。アシクロビルの承認が20年も前なので、治験の細かい内容まではわかりませんが、添付文書にそ の手がかりがあります。そこには、臨床成績として、(1) 単純疱疹、(2) 骨髄移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制、(3) 帯状疱疹が対象疾患となっています。つまり、大人の水痘については、臨床試験データが全くないので、効能・効果を認めたくても認められない。というのがお 役所の筋論です。

こんなデータで、なぜ認めたのか?何が科学的審査だ!!お前たちのいい加減な審査で副作用が見逃され、多くの命が失われたと、国民の皆様か ら頻繁に糾弾され、いくつもの裁判も抱えている大本営の論理であります。(細かいことで恐縮ですが、適応という言葉は、正に保険が通るというお金の問題に 使う言葉で、科学的判断の場合には効能・効果です。例えば、バイアグラは適応がなくても、勃起不全に対して効能・効果は立派に認められている という使い 分けをします。お役所とのコミュニケーションの時、お役に立てばと。)

そうは言っても、
> 治験症例が少なくても、帯状疱疹への適応の存在や
> 医学的推論で、適応を認めるのが、アシクロビルについては、
> 筋だと思うのですが。。。。

その通りです。硬直した保険適応のことであれこれ心配させられるのは、誰でも真っ平御免です。私も、こんなもんは、役所が通知一枚出せば済 むことだと思います。それに対する大本営の言い分は、”確かにその通りである。だから、おとなの水痘治療へのアシクロビルの適応のような、誰でもがわかり やすいものに対しては、改めて臨床試験をやらなくても、書類申請だけで速やかに認めるような仕組みが既にある。

公知申請と呼ばれるもので、関係学会からの要望書とともに、企業が厚労省へ提出する。現在、いくつもの抗がん剤が次々と、この公知申請に よって適応が拡大されています。それ以外でも、ここ1年に限っても、未熟児無呼吸発作に対するテオフィリン、有機リン中毒、カーバメート中毒に対すジアゼ パム、淋菌感染症に対するセフトリアキソン、好中球減少に伴う発熱のエンピリックセラピーとしての塩酸セフェピムといったように、多くの薬が、臨床試験な しで認められています。これは役所の実績として認められるべきものです。(ちなみに、”公知”というのは、医療者なら誰でも認める医学常識という意味で す)

では、アシクロビルの場合に、この仕組みが有効に働いていないのは何故か?まず、公知申請は、医師の集まりである学会の要望書が大前提で すから、学会の動きがなければどうにもなりません。大人の水痘について真剣に考えている人は誰ですか?その人は学会の中で積極的に発言していますか?そし て公知申請の仕組みを知っていますか?知らなければ教えてあげてください。学会側からの動きがないと、企業は動けません。普通は企業の側から動くことはあ りません。なぜなら、公知申請は儲からないからです。例えば、大人の水痘に関しては、現実には保険病名でほとんどカバーされているため、適応が正式に認め らても、売り上げが伸びるわけではありません。たとえ臨床試験をやらなくてもいいからと言われても、書類を揃えて、担当者が役所を訪問し、申請の背景を説 明する面談を重ねるだけの見返りがないのです。営利企業ですからそれは当然で、そこを何とか、社会責任の意味でも、要望書を出しますから公知申請を企業に お願いするのが、学会の役割です。そういう活動をしてこそ、学会が社会に存在する意義があるというものです。

一方で、性善説に基づき、公知申請のバリアをもっと低くしてはどうかという提案が必ず出てくるわけですが、それにともなうリスクが必ず出 てきます。すなわち、膨大な時間とお金と人手がかかる臨床試験を省いて市場に出せるという経済的動機だけで、一部の企業が、医師や医師の集団である学会を 巻き込み、リスク・ベネフィットが必ずしも明確でなく、本来きちんと臨床試験をやらなくてはならないはずの薬を、公知申請してくる危険があるのです。です から、公知申請といえども、それを吟味する仕組みが必要なのです。ここでも、医療現場と同じように、すべてが紙一枚で済むことではなく、真っ白から灰色か ら真っ黒まで、デジタルな判断ではなくアナログスケールの難しい判断を求められます。私ができることは、現場経験者の立場から、数ある申請を、紙一枚で済 むことと、時間をかけてじっくり判断しなくてはならないこと、即座に拒否すべきことと、トリアージ役を務めることでしょうか。

公知申請という程まではエビデンスが確立していないが、非常に有望な治療法である。しかし、臨床試験をするほどの見返りを企業が期待でき ない場合の選択肢としての医師主導治験、それとはまた別に、希少疾病の治療法開発を促進する希少疾病用医薬品・希少疾病用医療用具の研究開発促進制度な ど、一般の治験・承認申請とは異なる仕組みがあるのですが、長くなりますので、ここまでで勘弁してください。また別の機会&講演会で。

> 誰か何とかしてほしい?!!!
何とかしましょう。ただし、公知申請で学会の要望書が必要なように、個人がばらばらに叫んでいるだけではだめです。その個人が仲間を増やし、仲間 が仲間を増やして声を大きくしないといけません。仲間を増やすためには、仲間になってくれそうな人に説明し、信用してもらい、納得してもらわなくてはいけ ません。納得してもらうためには、各人が勉強して、納得してもらえるような説明ができなければいけません。

2006/7追記:その後,信頼できる筋から,次のような個人的な見解をいただいたのでご参考までに.

こんにちは。 ひさしぶりにHPの更新を拝見しました。 ネタ的には少し前の更新のものですが、すこしご参考までに、
標記の件について情報提供です。 (といっても、正確なネタではなく、想像の範囲のものです。)

この件については、ヒントは、ゾビラックス錠の添付文書ではなく、 顆粒剤と注射剤の添付文書にあると思います。

つまり、
・顆粒剤では、小児の水痘適応はある
・注射剤(点滴静注用)では、免疫機能低下患者に対して
 水痘適応がある ということです。

要は、元気な大人は、ほっとけば治るんだから、 わざわざアシクロビルを使わなくても、ということですね。

これは、単にアシクロビルのリスク・ベネフィットを論じているだけではなく、 免疫獲得の機会を失うリスクを(も)考慮したものかと思います。

つまり、大人になってから水痘にかかって、そこで抗ウイルス薬を 使って免疫を付ける機会を避けてしまえば、高齢になって 水痘にかかったときに重症化してしまう、ということを 懸念しているのが背景にあると思います。

このあたりは、プロドラッグ化されたバ ラシクロビル(バルトレックス)の 審査報告書に、小児適応についてで似たような議論がありますので、 ご参考まで。


治験終了後の治験薬の使用,配給を巡っての議論
先日,友人から,治験終了後の治験薬の使用を巡って相談を受けた.

> メーカーは,治験が終了した薬剤を
> 効能外使用するのは役所がうるさいので
> やりたくないと・・・
>  でも患者さんは,何とかなりませんかと。

治験薬を巡ってこのような誤解が多い,本当は、厚労省も、治験外提供(申請中の治験)もできるようににしてある(紀平さん、ありがとう)。 決して意地悪をしているわけではない。すなわち、医薬品の承認申請後の臨床試験の実施の取扱いについて(平成一〇年一二月一日)(医薬審第一〇六一号) (各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省医薬安全局審査管理課長通知)
<http://www.nihs.go.jp/mhlw/tuuchi/1998/981201b.pdf>
に、“承認申請前に実施した治験に参加し、他に代替治療法がない等の理由で治験薬の使用継続を希望する患者に対し、当該治験薬を継続して提供する ことも含まれる”とある。つまり治験終了後も希望があれば治験薬を提供してもいいのだ。本来、長期使用があるものなら、どの薬でもやっててもいいものなん だ。では、なぜ治験終了とともに治験薬の提供もうち切ってしまうのか?結局のところ、お金が持ち出しになるので、会社としてはできるならやりたくない、っ てことだろう。特に、高い薬の場合。.

ちなみに,治験外で試験的な治療を受ける選択肢も,患者は有すると考えられます.
Menikoff J. The hidden alternative: getting investigational treatments off-study. Lancet 2003;361:63-67. 

一方で次の学問的原則も忘れないでもらいたい.

患者さんにも次のようなリスク/ベネフィットの真実を理解していただくよう、我々も根気よく、丹念に説明し続けなければ、治験の成果を本当に生かす ことはできないと思います。

1.自分の受けた治療がプラセボかどうか、誰にもわからないこと。

2.治験終了後、治験薬が使えないのは、役所が意地悪をしているわけではなく、有効性と安全性のバランスを専門家が慎重に検討するまでに時 間がかかること。もしその薬が有効でなく,危険だった場合、危険な治験薬が野放しになるのを避けなければならないこと。サリドマイドなんか,治験の枠をは めていないので,野放しになっています.

3.治験が終わった薬がすべて承認されるわけではなく、有効性が否定されたり、安全性に問題があるとして、III相まで終えながら葬られ る薬も後を絶ちません。しかし、そういうケースは決して表面に出てこないので、医者も、患者さんも、臨床試験までに至った薬だったら、市場にほとんど出て くる。それが遅れるのは、厚労省が意地悪/間抜け/手抜きだからだと思いがちです。

4.たとえ治験薬に当たって、それが効いていたとしても、安全性の問題は、承認前には決してわからないし、たとえ承認後であっても、長期安全性の問 題はいつまでもつきまとうこと。

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薬価はどうやって決まるのか?参照→薬価はブ ラックボックス
治験とは直接関係内のだが,薬を論じる上でどうしても避けられないのが,薬価御巡る議論である.そもそも薬価がどのように決まっているのか,みな さん,ご存知ないだろう.実は私も知らない.私の仕事は薬価算定とは関係がない.下記は,公開されている限られた情報源から,私が個人的に組み立てた構図 である.

まず,事務局という名の役人の判断をふまえて,中医協の薬価専門部会(医者側の委員は医学部教授連の中でも,メジャーな学会長をやるぐらいの大親分 クラス)で決まります.審議の過程は 公開されています.ちなみに私の現在の仕事は薬価には全く関係なく,その手前,世の中に出せるか出せないかを審査します.

新薬の薬価に関しては,類 似薬効比較方式というルールも定められています.

ですから,むちゃくちゃなことはできません.しかしルールは大まかなものですから,個々の品目で判断がぶれることはあるでしょうが,その判 断の中で,役人の判断が大きな比重を占めるとはとても思えません.というのは,我々がやっている審査の仕事のように,専門性の高い面倒な判断ならともか く,薬価を決めるには知識も技術も要らないからです.そうなると,自分の意見を通したい海千山千の薬価専門部会の猛者揃いが,木っ端役人の意見など採り上 げるとは思えません.厚労省の審議会と一口に言っても,委員の判断と事務局(役人)の判断の比重の割合は,審議会(あるいはその下の部会)によって,全く 違ってきます.

また,薬価を高くするのは製薬会社を喜ばせるためだという理解も単純化しすぎていると思います.common disease治療に必須の薬と生活改善薬で薬価が違うのは当然です.また,決められた薬価が安すぎて気に入らないと言って,製薬会社の方から,保険適応 をはずしてくれと申し出があった品目もあります.薬価はさまざまな要素に左右されるので,その決定プロセスが不透明になり,結果的に憶測が憶測を呼ぶとい うのが現状です.議事録を公開する段階から一歩進んで,部会そのものの公開を考える時代になっていると思います.

何でもかんでも役人が暗躍して決めるというステレオタイプの理解は,開業医が金儲けを目的としているという理解と同様,複雑な現実の理解 が困難なために,一部の現象を捉えて安易に普遍化した結果ではありませんか?何でもかんでも厚労省が悪いというスタンスは,何でもかんでも日医が悪いとい うスタンスとよく似ています.

薬価が見えにくい理由の一つに,得する人、損する人が二つに分かれる単純な物語ではないことがあげられます.製薬企業、支払い基金、行 政、消費者(患者)、病院、薬局、卸、コンビニと,プレーヤーがあまりにもたくさんいるので,どこの誰が何を考えてどんな行動をとっているのか,解説をし てくれる人もいないので,何がなんだかまるっきりわからなくなってしまっているのです.

下記はJPN JMA PRESS NETWORK   2003-09-24 08:04:34 からの引用です.如何に様々な人の思惑が複雑に交錯しているかがよくわかると思いますので,ご参考までに.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・--- ------+---------+---------+---------+---------+---------+---------+
新薬の薬価算定ルールで意見の応酬  中医協・薬価専門部会
                                                 2003-09-24 08:04:34
---------+---------+---------+---------+---------+---------+---------+
 中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)の薬価専門部会は24日
、新薬の薬価算定ルールについて議論した。薬価決定機関である薬価算定組織
の提案に沿って審議を進めたが、新規性の乏しい新薬の算定ルールや原価計算
方式の見直しでは、中医協委員と産業界代表の専門委員とで意見が割れた。次
回は、既存薬の薬価算定ルールを検討する。
 
 薬理作用が類似した医薬品がすでに3つ以上存在し、薬価を上方修正する補
正加算の対象にならない、いわゆる新規性の乏しい新薬は、もっとも薬価が低
くなる算定式(類似薬効比較方式2)で薬価を決める。しかし、まれに他の算
定式で計算した場合よりも薬価が高くなる逆転現象が起きることがあり、薬価
算定組織はルールの見直しを求めている。
 
 八代光夫専門委員(武田薬品工業株式会社顧問)は、4番目以降に上市され
た医薬品の方が既存薬よりも有効性が高い例があることを指摘し、「4番目以
降がどうのこのということで企業のイノベーションが削がれないか心配してい
る。逆転現象を起こさせないという一文を加えればいいだけではないか」とル
ール見直しに否定的見解を示した。公益代表の星野進保委員(総合研究開発機
構特別研究員)は、「基本原則としては、こうした医薬品は認めないという方
向で考えていくべきではないか」と話した。
 
 類似薬がない新薬は、製品製造原価に販売費・一般管理費、営業利益、流通
経費などを上乗する「原価計算方式」で薬価を算定する。販売費・一般管理費
などの経費は原価に一定の係数を掛けて求めるため、櫻井秀也委員(日医常任
理事)は、「原価が高いほど薬価が高くなる式になっている」として抜本的な
見直しを要請。これを受けて八代専門委員も、「その反対もあり、オーファン
ドラッグ(対象患者が極めて少ない医薬品=希少疾病用医薬品)は承認審査の
段階での優先事項が原価計算で薬価を算定する段階ではもらえない。これまで
は例外として甘んじてきたが、そもそも論から議論していただきたい」と話し
た。
 
 一方、新規後発医薬品については、先発医薬品の0・8掛けで薬価を設定す
る現在のルールをより厳しくする方向で一致した。薬価基準収載後に市場取引
価格を反映させて薬価を見直す最初の薬価改定で4割近く薬価が下がるなど、
薬価差益を「ウリ」にした取り引きが見受けられるため。ただし、良質で安価
な後発品の提供に努めている優良後発品企業には配慮するべきとの意見が出た

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

中央社会保険医療協議会薬価専 門部会



治験の中での海外試験データの位置付け
レフルノミド(商品名アラバ)が,国内で第三相試験が行われていないことについて,友人から問い合わせをもらったときの回答である.

ご指摘の通り,アラバ(レフルノミド)は国内で第三相試験が行われておりません.しかし,これは違法でも抜け道でも何でもなく,正々堂々と審査を 通ったものです.ご存知とは思いますが,ICH-5と呼ばれる国際ルールに従って,外国での臨床試験のデータの一部を日本での申請に使えることになってい ます.その場合でも,民族差などをクリアすることが条件になっています.

日米EU医薬品規制整合化国際会議(ICH) -- International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use (ICH)は医薬品の承認申請に関わる科学的データの作成について、日米欧の共通ガイドラインを作成することを目的とするプロジェクトです。
ICHガイドラインの詳細

これは日米EUがそれぞれ対等な立場に立つルールですから,日本の臨床試験のデータを海外で使ってもらってもいいのですが,試験の質を見ると,とて もそんなことはできず,現実は輸入一辺倒です.

なお,新 薬の審査報告書はすべて公開されています.

アラバは国内で第三相試験をやっていないからイカサマではないかという風評がまことしやかに流れるのは,ICHのシステムや新薬の審査について,多 くの臨床医が臨床治験の国際協力体制と試験データ共用の動きについて無知だからでしょう.
ICHにより日本の治験が空洞化するなんて的外れな批判から脱却して,日本で真っ当な臨床研究をやって,そのデータを海外で使ってもらう,そういう気概を 持った臨床医がどんどん育っていくようにしたいと思っています.
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医師主導治験の問題点
医師主導治験が,2003年7月から制度だけは始まった.しかし,下記のような様々な問題を抱えているので,余程度胸のある(あるいは無謀な)医師でない 限り,手は出せない.

1.まず先立つ物:製薬会社は商品だから開発費用を投入する.医者の場合は金がない.研究費で治験を行うことも考えられるが,その額は製薬会社が投 入する莫大な額とは比較にならない.

2.IRB(治験審査委員会)をどうするのか:これまでは,企業が行ってきたモニタリングの業務をIRBが行わなければならないのかという 議論以前に,そもそも,医師主導治験の場合,これまでと同じようにIRBをつくっても,それはIRBとして意味をなさない.なぜなら,治験を行う人間が, 自分自身を監査しなくてはならないから.これまでは,少なくとも形の上では治験を遂行する製薬会社と相対して存在していたIRBが,今度は治験を遂行する 主体の医師とIRBが同じ穴の狢になってしまうのだ.これでは警察の不祥事を調査するために警察内部に作った調査委員会と同じで,世間の物笑いの種にしか ならない

外部委員を入れればそれでいいというものでもない.その外部委員が病院に都合のいい人間ではないかをチェックする仕組みが必要だし,そもそもまとも な監査ができなくてはならないが,病院内で行われる治験に対してまともな監査ができる人間が簡単に見つかるわけがない.

一方で,完全な外部機関に,モニタリングも監査も任せてしまおうと目論む向きもあるが,これもだめ.というのは,医療とは元来地場産業であり,その 地域,その病院の実情に通じていなければ,まともな監査ができるわけがないからだ.

3.被験者の補償と治験担当医の保険:これも頭が痛い.従来の製薬会社主導の治験では,治験薬の副作用による被害はPL法から派生する保険 でカバーしていた.医師主導の治験の場合にはこれがなくなり,代替手段は何もない.従来の医師賠償責任保険は,治験事故をカバーしない.従って,医師主導 治験用の新しい保険が必要になるが,2003年10月現在,そのような保険はこの世の中に存在しない.

以上の問題点は下記に詳しいので,一読をお勧めする.

星 北斗.高度医療と治験に医師会はどうかかわるのか.新体制下の挑戦.臨床評価 2003;30:329-36.

ちなみに,星先生は2003年10月に発足した日医治験促進センターを実質的に作った人である.厚生労働省の補助事業で、初年度予算は6億 5000万円。星常任理事は「国内では治験をする人間も不足している。こういった人材養成も狙いたい」と話しているとのことです。星理事が厚労省にいただ けあって,すごい予算がつくのですね.こういう動きは歓迎したいのですが,箱物の中に入って肝心の人材養成ができる人がいるのかなあ???

医師主導の治験は特定療養費の対象

 中医協は2003年6月25日の総会で、7月30日施行の「医師主導の治験」について特定療養費制度の対象とすることを了承した。医薬品 の「治験」については1996年から特定療養費の支給対象となっているが、昨年の通常国会で成立した改正薬事法で治験の範囲が拡大され、医師主導による臨 床研究も「治験」とみなされたことから、保険上の取り扱いについても整合性をとることになった。 告示改正は、すでに特定療養費制度の選定療養の範囲に「治験に係る診療」を規定した薬事法第80条の2第1項が入っていることから「不要」としている。

 総会に先立って開かれた診療報酬基本問題小委員会では、医師主導の治験で得たデータの取り扱いについて、厚生労働省側の見解が求められ たが、医薬局は「あくまで承認申請は企業からの申請で行うことになる」と説明。「その場合、データの譲渡に伴う対価は、医師とメーカーとの話し合いにな る」と説明した。 一方、診療側の青柳俊委員(日医副会長)は、特定療養費の選定療養について、「当初の考えが“横にブレ、縦にブレ”ている」と指摘、改めて基本問題小委で 議論するよう要請した。

情報提供:Japan Medicine(株式会社じほう) 2003年6月27日
 

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