医療保険・医療経済の勉強の材料
ーオンライン・オフライン取り混ぜてー

 医療崩壊の現状分析と対策に関する考察 COPE 総額と無駄を別々に考える 日本に医者は何人いるのか? 医師の労働時間の国際比較 怪我で入院したコンサルタントの手記  医療制度改悪批判パンフレットの紹介 経済学者による “Devil's Advocate”研修医の給料米国のことだって勉強になりますよ英国の医療制度兪 炳匡 Yoo, ByungKwang 先生の小論紹介 やっぱりだめだった定額制薬価はブラックボックス三谷一裕先生の論文から勉強材料 


医療崩壊の現状分析と対策に関する考察
東京大学医科学研究所 探索医療ヒューマンネットワークシステム部門のワーキンググループで「医療崩壊の現状分析と対策に関する考察」をインターネット上に掲載いたしました。当研究室のスタッフが約半年をかけてリサーチしたものです。従来の解釈と異なる資料が多数ございます。現在、進行している医療崩壊をくい止めるため、わが国の医療提供体制に関する国民的議論を深める一助となることを切に願っております。転送、引用は大歓迎です。引き続きインターネット版を作成中ですが、PDF版(概要版/全文)をダウンロードできます。

現状分析の主なポイントは下記のとおりです。
・厚労省の医師法21条拡大解釈と刑事介入、医療事故調査委員会設立の動きによる委縮医療

・診療科別病院医師数の減少

・日本の病院従事者数は欧米のわずか23.0%(欧米並みの安全性は不可能)

・日本の病院看護師数は欧米のわずか24.3%(欧米並みの安全性は不可能)

・看護師数、看護師教育レベルが高いほうが患者の安全性が高い

・薬剤師数が多いほうが患者の安全性が高いが、日本の病院薬剤師数は米国のわずか25.2%

・医師の週平均労働時間は、日本70.6時間、ヨーロッパ40?50時間

・徹夜(当直)明けで診療する医師はほろ酔い期?酩酊初期の注意力

医療崩壊をくい止めるための対策として、下記の案を掲載しましたので、ぜひ議論のたたき台としてご参照いただければ幸いです。

・患者安全の環境づくり

・患者の納得のための対話環境づくり

どうぞよろしくお願い申し上げます。


COPE: Cost of Preventing an Event
医療経済にはいろいろな指標がある.COPEはNNTと一錠の値段のかけ算から出す簡単な指標だ.この指標の問題点は,その薬のこすとだけを考えて,その薬の予防によって得られたQOLや,その薬が省いた入院などの費用などを考慮に入れていないという問題点がある.
Adding cost to NNT: the COPE statistic Rohan Maharaj. ACP Journal Club. Philadelphia: Jan/Feb 2008. Vol. 148, Iss. 1; p. A8 (1 page)

総額と無駄を別々に考える

宮城、登米市立米谷病院・上沼(うわぬま)診療所の佐々木直英(なおひで)先生のコメントは簡潔で,要点を得ているので,ご紹介させていただきます.。

日本の医療費については
1、その総額
2、医療費の無駄
に分けて考えることが必要だと思います。

1、についてはOECDヘルスデータにもありますように、抑制する必要は
日本ではないと思います。むしろ必要なところには増やすのが自然だ
と思います。

2、については医療費が増えようが減ろうがなくしていかねばならないと
考えます。我々はこれを徹底的にやる姿勢と努力を示していくことが、
多くの方々に1、をご理解いただく近道だとも思います。

1と2を一緒にして議論してしまうと、「医療費には無駄な部分が多いので、
その総額を抑制するようにしましょう。」などという話になってきてしまい、
議論がかみ合わなくなりがちです。


日本に医者は何人いるのか?

単位人口当たりの医師数が、しばしばOECDのデータを材料に議論されるが、では、日本の医師数はどのデータをもとにしているのか、ご存じかな。

それは、厚労省の医師歯科医師薬剤師調査に基づく。この数字が全国で27万人。調査の数字は、毎年、勤務先を自己申告した人数であって、届出してない医師もいるので、実働数より過小評価になる。一方、同じ厚労省が持っている医籍登録数(医師免許を持っている人数)には、すでに死亡したが、家族が死亡届をしていない場合も含まれている。だから、医籍登録者数は過大評価になるわけですが、具体的な数字は公開されていません。


医師の労働時間の国際比較
日経メディカルオンラインに掲載された本田先生の論説:(無料登録で読めます)に,非常に分かりやすい図が載っています.

スコットランドにいた時に、英国でも研修医は過重労働を強いられているとの記事を読みました。さすがに日本ほどではありませんが、仏独と比較すると20代の労働時間が他の世代に比べて長くなっています。それに比して60歳以上では、英国の医師の労働時間が他国に比べて極端に短くなっているのは、引退を楽しみにするお国柄がよく現れていると思いました。


怪我で入院したコンサルタントの手記
あるコンサルタントが、怪我で入院した際に学んだことが書いてあります。
 

売れっ子コンサルタントが入院して寝たきりになって学んだことは、実は、平凡なことでした。

○いわゆる”マニュアル”が、アウトカム評価をほとんど考慮せずにプロセス評価に拘泥していること。マニュアルを作って安心してしまうことの最大の問題点はここにあります。
○組織が機能するためのアウトカムで重要なのは文字とか数字とかで表せない、自分が納得する、褒められて嬉しい、好奇心を満足させる、仲間意識、といった人間の感情・心理と、そこから生まれる行動である。

もちろん、これらの感情・心理・行動の評価は一筋縄ではいきません。ただ、難しいからといっていつまでも逃げ回っていては、空しいマニュアルや社員が拒否する人事評価システムが積み重なるばかりです。では、どこかにヒントがあるのか?あります。灯台もと暗し。自分の家庭、自分の地域社会です。そこには数字や文字よりも、感情・心理・行動が主役です。例えば家庭では収益は主たる目標になりませんから、感情・心理・行動がどのように評価されているか、その評価が家庭の維持と繁栄にどう役立っているかをつぶさに見ることができます。お金やテストの点数に拘る悲劇の事例もたくさん転がっています。

一方、我々にとって決して身近ではない軍隊というのも、実はいいモデルになります。
”いかに「サービス」を収益化するか ”
では、マッキンゼーが海兵隊を調査する話が一番印象的でした。(一方、メイヨークリニックの話は最低で、何の役にも立たなかった。多分これは、調査する人が全くの健康体だったからでしょう)


医療制度改悪批判パンフレット(兵庫県保 険医協会):一般市民向けの説明資料として,分かりやすいデータ提示とビジュアルな効果の両面で,面白い作品に仕上がっている.一般市民に対する説明が不得意な医師会の先生方は必読。また、このような作品をウェブ上で公開し、かつ一部100円で頒布している兵庫県保険医協会も評価されていい。

一方で,〔寄稿〕「医療制度改革大綱」を読む(野村英樹,中山健夫)週刊医学界新聞 第2670号(2月13日発行) も,バランスの取れた見解を示している.

以上の二つを読み比べるとさらに勉強になる.
 

経済学者による“Devil's Advocate”
対 談 病院はこれからどうなるのか 「信任」復権への“Devil's Advocate” 週刊医学界新聞 第2650号 2005年9月19日

岩井 克人(東京大学経済学部教授)と井部 俊子(聖路加看護大学学長)の対談だが,岩井が,経済学者として,契約の限界をよく知る立場から,市場 原理主義の問題点を指摘しているところが勉強になる.以下抜粋である.

経済学者は契約の有効性をよく知っているからこそ,その限界についてもよくわかると思うのです。契約だけでは解決できない部分がどうしても残ってし まうことを,逆に浮かび上がらせることができる。それが実は「信任」であり,「倫理」なのです。たしかに最近の医療経営における契約概念の導入は強い趨勢 ですが,同時に限界もある。経済学者として,その限界を示すことで,“Devil's Advocate”の役割ができるのではないかと思ってお引き受けしました。

「競争原理さえ導入すれば,あとはバラ色の道が天国に通じている」と,経済学者はふつう言ってしまいますが,実はそう簡単ではない。 アメリカではもう何十年も前から医療機関が営利的な経営を許されていますが,おもしろいのは,全部が営利にはならなかった点です。半分近くは非営利で残っ ている。その理由として2つあります,1つは,多くの医療機関は最初から社会に貢献するために設立しているので,経営者の理念が利益に向かわないというこ と。もう1つは,もっと経済学的な説明です。どう見ても経営者が社会理念に燃えているとは思えないのに,非営利でやっている医療機関もある。理由は簡単 で,営利で経営すると「利潤追求の道具でしかない」と患者が思い,サービスの質を疑うからです。

アメリカの場合,相対的に所得が低い人は価格の安い営利を選ぶ傾向があり,相対的に豊かな人は非営利を選び,さらに大金持ちは大金持ち用の営利を選 ぶという傾向があるようです。

井部 先生は「株主ではなく従業員を大切にすることはとても重要だ」と主張されていますが,病院もまさに人が大事で,そこは矛盾がないわけです。

岩井 それは現代が「ポスト産業資本主義」の時代だからです。産業革命からつい最近までは「産業資本主義」と呼ばれた資本主義が支配しており,営利 会社の場合は機械制工場が利益の源泉でした。しかし,農村に人がいなくなって,安い労働力が農村から集団就職で来なくなってしまった。それで賃金が高く なったので,機械を持って大量生産しても,人件費が高いので利幅は減ってしまった。そこで意図的に「違い」を生み出さなければならない。 ポスト産業資本主義では,「違い」が利益の源泉です。その「違い」は誰が生み出すかといえば,人にしか生み出せない。

井部 病院の場合,利潤追求のためではないといえ,ある意味では当初からポスト産業資本主義の形態をとっていたわけです。けれども,現在では産業資 本主義に近づいているのではないかと思うのです。つまり,検査や治療のための巨大な装置がたくさん入ってきて,その装置がお金を生み出すんですね。

岩井 普通の会社と病院というのは,ちょうど歴史が逆になっている。
井部 逆行して衝突するかもしれません(笑)。

研修医の給料
2005.8.1 【データを見る】 研修医の平均給与は365万円、2004年度調査

厚生労働省によると、2004年度の研修医の平均給与(年収)は365万円で、2003年度の265万円より100万余り増えた(図)。ただし、勤 務先で事情が異なる。臨床研修病院では424万円から422万円と2万円ほど少なくなり、逆に大学附属病院では204万円から318万円へと114万円の 大幅増となっている。

米国のことだって勉強になりますよ
米 国ヘルスケアサービスカンパニーとその戦略 米国の医療サービス企業の動向 大和総研 新規産業調査部 浅野信久 2004.09.01

よくまとまっているので勉強になる.米国と聞いただけで,大和総研と聞いただけで,ひたすら拒絶しないで、敵方の情報をよく勉強してはいかがだろう か?米国を攻撃した論文ではないだけに,そこに書いてある論調と数字を使って米国を批判的に見ることができるという利点もある.

英国の医療制度
国外というと、すぐに太平洋の向こう側しか目がいかない人々が多い国に我々は住んでいますが、医療サービスの面では、彼の国は根本の保険制度が違うから、 見本にもお手本にもならない、少なくとも現実的な考察の材料としては、非常に使いにくいと、常々私は思っています。もうすこし似たモデルと比較して考察し たほうが、より意義のある議論ができるのではないかと。

そこで、国民会保険制度の創設国、自由診療・民間資金の導入の先輩国でもある、英国の医療制度の一端を日本語で解説したページを ご紹介。著者の福見一郎さんは、医師ではないようですが、医療サービスの質の向上を意識した地道な文筆活動を続けているジャーナリストです。英国の公的医 療監査(audit)機関であるGeneral Medical Council (GMC)の解説、英国の医療事故報告制度の講演スライドなどがあり、勉強になります。(同じページに米国患者残酷物語 HMO Horror Storiesなんて、医師会が大喜びしそうなものも置いてありますが)

兪 炳匡 Yoo, ByungKwang 先生の小論紹介

”政策海外ネットワーク “PRANJ”レポート 第9回 医療政策:医療経済学、国際比較の視点から”は,よくまとまった小論である.その中からなるほどと思った文を抜 書きしてみよう.
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大抵の問題に対して複数の経済学的アプローチがあり、「経済学的視点からは、一つの選択肢しかない」といった類の話は、疑ってみる必要があります。経 済学だけの基準でも複数の「線引き」が可能なわけですから、更に医学の基準を考慮すると、「『複数』の選択肢」が出てきて当然なわけです。

更に言えば、医療政策には、経済学、医学以外にも、倫理学、法学といった分野の価値基準も反映されるべきであり、「関連する分野の基準・目標をどの 程度達成しているかといった情報を含め、『複数』の選択肢が政策提言として出てくる」のが望ましいといえるでしょう。

私自身、かつて日本で医師として働きながら、医療政策、医療経済についての本を独学で読んでいた頃は、「一つの(最良の)選択肢だけを提示できるほ ど、経済学はクリアーカットな学問なのか」と、経済学のど素人(大学の教養部でも経済学は学んだことは無かった)であった私は感心していました。しかし、 米国に来て、本格的に医療経済学を学び始めると、「期待していたほど、経済学はクリアーカットな学問ではない」ことが判りました。しかし、「期 待していた以上に、経済学と医学の目標は、両立が可能」なことも分かりました。
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池田コメント:そう,だから,”経営効率至上主義”,”国民皆保険絶対死守”,どちらも疑ってかからねばならんのよ.

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「先進国の医療制度を多面的に比較すると、単純に国レベルで優劣をつけることは困難というより、意味が無い」、「制度の歴史的背景を軽視・無視し た外国の制度の移植は現実的でない」とも考えています。
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何とか規制改革会議の諸君の他にも,この文章を読まなければならない人は多い.

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この研究は、第二次大戦後、他の先進国同様米国で医療費が経済成長よりも速いスピードで増加した要因を数量的に計
    算しましたが、一般に考えられているコスト上昇要因、例えば、医師の数、高齢者の割合、医療保険、所得の上昇等の要因
    を全て合わせても、医療費増加全体のせいぜい50%以下(計算方法によっては25%以下)しか説明がつかないのです。

      ニューハウス教授は、説明できない増加部分の多くは、医療技術の進歩(例え ばCTスキャン、人工透析)が原因ではな
    いかと推測しています。なぜなら、医療技術は、一つの指標で測ることが殆ど不可能なため、この研究の計算にも含まれて
    いないからです。この研究結果は、政策的に比較的コントロール可能なゆえ医師の数を調節しても、高齢者の割合それだけ
    が上昇しても、個々の要因はそれほど医療費増加に甚大な影響を与えないことを示しています。
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こういう視点が,わが大本営にも欲しいんだよね.

やっぱりだめだった定額制
医療費抑制の効果はないと,三谷先生が明快に解説してくれたにもかかわらず,厚労省は定額制を導入し,物の 見事に失敗した.言い訳の余地はまったくない.なぜなら,導入の時点で定額制が医療費を抑制しないという事実と理論の裏づけが両方とも揃っていた.やって みなければわからないという状況ではなかったのである.今からでも遅くはない.被害が拡大する前に,厚労省は定額払いの妄想を脱却すべきである.
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2004年3月17日,厚生労働省は、入院医療費の「定額払い」を昨年4―7月に導入した82の 大学・国立病院の4―10月の入院医療費が、前年同期に比べて2・8%増加したとの調査結果を発表した。 入院医療費に、これまでと同じ出来高払いの外来医療費も含めると、3・2%の増加だった。
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薬価はブラックボックス
薬価決定のブラックボックス性は、平成15年6月17日の日医第三回理事会の議事録に薬事/食品衛生審議会医療機器体外診断薬部会医療材料部会合同開催の 件と題して、日医の理事会議事録(日医雑誌 2004;131:102-104からもよくわかる、詳しいことはこの議事録を読んでもらいたいのだが、坪井会長自身が、“薬価を決めるのはブラックボックスです”と言っている。

坪井会長はまた、“厚労省と財務省とおのおののOBが仕組んでいるような価格決定の集団、その中で決めるんです”、“行政側が一部の業者の話を参照 にして決める”と、決めつけているが、実はそう単純な話ではない。そもそも,”厚労省と財務省とおのおののOBが仕組んでいる”と断言できるのならば,そ れはブラックボックスではない.厚労省や財務省ばかりでなく,製薬企業、支払い基金、行政、消費者(患者)、病院、薬局、卸、コンビニと,プレーヤーがあ まりにもたくさんいるので,どこの誰が何を考えてどんな行動をとっているのか,解説をしてくれる人もいないので,結果的にブラックボックスになってしまう のだ.,

そもそも厚労省と財務省は一枚岩ではなく,その反対で対立している.財務省は医療費削減一点張りだろうが、厚労省は、(自分ところの予算が削られる ことにつながるから)必ずしも削減一点張りではない。したがって、薬価算定組織ではお決まりの省庁間の対立が起こるし(対立がなければ、そもそも財務省が 出席する必要がない)、厚労省も、天下りOBに遠慮して薬価を決めるようなヘマな真似はしない。なぜなら、出てきた薬価が本当におかしなものであれば、新 薬の審査報告書と薬価を比べればすぐわかってしまうし、何しろ医療費削減はしなくてはならないからだ。厚労省と製薬企業の癒着という水戸黄門ドラマのよう な時代錯誤的単純シナリオは、製造/輸入承認されても、薬価を不満として保険適応を拒否してしまう薬があることによっても否定される。

日医疑義解釈委員会:日本医師会の疑義解釈委員会において医療機器及び医薬品について市場指向型の検討や,分類別協議に基づく体外診断薬及び医療用 具の保険適応の可否の検討が行われている.ここでは診療報酬点数表の解釈はもとより,新薬の承認,新規技術等についても審議されています。この委員会には 厚労省の官僚も出席しており,提出された案件は全て持ち帰ることになっている。従ってこの委員会を通しておけば,日医,厚労省が共に知る事項となる。

しばしば問題になる(米国からの輸入)医療材料の高さも、厚労省が悪いのではない。かつて日本人が鬼畜と呼び、今は言うなりになっている米国とのMOSS協議M:Market Oricnted Sector Selective Discussion 市場重視型個別協議が諸悪の根元とされている。

ミサイル防衛システムと同様、先様の言い値で買っているので、めちゃくちゃ高くなっているってことです。

三谷一裕.診療報酬定額制と医療保険に関する考察ー”サクランボ摘み”と”婆抜き”.日本医事新 報.No.4108 (2003-1-18) p73:

医療費抑制につながるとした健康保険組合が要望した老人医療費の定額払い(老人慢性疾患外来総合診療料:いわゆる外総診)が,なぜ組合の意図と正反 対に老人医療費を押し上げ,かつ医療の質を落とす結果になったのか?一見逆説的なこの結果を,筆者は,とっくに見抜いていたが,それは何も特殊な知識や考 え方を持っていたからではない.開業医として,診療現場で現実を見ていれば,誰でも簡単にわかることだった.

病を得た人々と,その人々の願いに応えようと努力する診療現場の人々を全く無視した机上で進む医療保険制度いじりに対し,ただ怒り,苛立つだけでは 我々が抱えている問題を解決できない.厚労省が悪い,医師会が悪い,健保連が悪い,マスコミが悪い,そういった決り文句の立場からも解決できない.犯人探 しと原因探しとは違う.”誰が”ではなく,”どこが””何が”おかしいのかを考え,対策を立てる,冷静で偏りのない筆者のような立場からでしか,医療問題 解決への道は見出せない.

勉強材料としては,下記:

情報量の豊富さでは日医総研のホームページがお勧めです.

二木 立先生のバランスのとれた見解は,医療とお金のような複雑な問題を考えるとき,安心感を与えてくれます.
2007年5月に行われた日本神経学会での二木先生の講演は,二木先生の見解の概要を知るのに便利です.『二木立の医療経済・政策学関連ニューズレター』(転載)が読めるサイトもどうぞ

下記は雑誌の記事あるいは本です.わかりやすく,手軽に読めて,的を得ているもの,私が実際に読んで得をしたという気持ちになったことが選択基準で す.

臨床現場の立場から

『実 地医家からみた医療制度の問題点』 (本田 宏先生)

「このままでいいの?日本の 医療」医療制度研究会HP

「日本の医療を正しく理解してもらうために」(秋 田県医師会HP に掲載.鈴木厚先生)

海外の医療保険制度の問題点と国内外の比較

フランス医療制度、社会保障制度研究(奥田七 峰子),(フランス医療制度), (フランス社会保障制度

福見一郎 英米医療のページ

近 藤克則「医療費抑制の時代」を超えてイギリスの医療・福祉改革 週刊医学界新聞連載

医療政策:医療経済学、国 際比較の視点から:小論ですが,非常によくまとまっている.論点を整理するのに非常によい.

真 野 俊樹 著 日本の医療はそんなに悪いのか?―正したほうがいい30の誤解 薬事日報社¥2,000

ロ バート・B・レフラー著.長澤道行訳.日本の医療と法ーインフォームドコンセント・ルネッサンスー 頸草書房.本体2700円

李  啓充著 アメリカ医療の光と影ー医療過誤防止からマネジメントケアまで 医学書院 ¥2000

” アメリカ医療の夢と現実”(社会保険研究所刊)(Bodenheimer TS and Grumbach K. Understanding Health Policy. A Clinical ApproachAppleton & Lang, 1999)

医療経済学者の立場から

第12回医師の需給に関する検討会資料 長谷川委員提出資料:医師の労働時間の国際比較,医師の過重労働,医師不足に関する報道の経年変化,医療事故裁判等に関する図表あり

物とサービスの価格推移

医師の需給に関す る検討会(第9回) 資料3 長谷川委員提出資料

川渕孝一 医療改革―痛みを感じない制度設計を    経済政策レビュー 東洋経済新報社

池 上 直己 著 ベーシック医療問題    日本経済新聞社

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