治験の品質管理にISOを

キーワード:臨床試験、医療事故、倫理審査委員会、IRB、GCP、GQP、訴訟、WHO、accreditaion(認定)、ISO9001、ISO13485(医療機器のQMS)

治験実施施設と ISO 9001 の認証取得
臨床試験では、いろいろな基準、指標が登場する。被験者の組み入れ、除外、様々な有効性評価指標、安全性評価項目、個々の検査値の判断のカットオフポイント・・・一方、治験に関わるすべての人にとって、治験の品質管理は大きな関心事だ。では、あなはた、治験の品質をどんな基準、どんな項目で治験の質を判断しているのだろうか?

私が何を言いたいのかよくわからない?では、こう質問しよう。

治験依頼者の方へ:あなたは、どんな判断基準で、治験実施施設を選定しているだろうか?
治験実施施設の方へ:あなたは、何を売り物にすれば、より多くの治験が呼び込めると考えているだろうか?

治験依頼者も、治験実施施設も、治験の品質向上を目指すのならば、品質マネジメントシステムの国際標準化機構の品質管理規格 ISO 9001 の認証取得を考えないのはなぜだろうか?

そんなこと考えたこともなかった?それはなぜだろうか?あなたは、治験の品質管理は極めて重要だと思っているのではないのか?

実際、治験関連の法規の中でも、すでに2005年4月の薬事法改正では、国際整合性の観点から、GMPはISO13485(2003年版)に準拠したものに変わっている。

治験よりも品質管理が難しいと思われる実際の診療行為を行う病院でさえ、 ISO 9001 の認証を取得しているところがたくさんある時代である。医療サービスよりも、より品質管理が行き届いている治験管理に関わる組織の方が、ISO認証を積極的に取得すべき&しやすいのではないかならば、なぜ治験管理センターが ISO 9001 の認証を取得しようとしないのだろうか?もし、 ISO 9001 の認証を取得すれば、治験依頼が倍増するのも夢じゃないと考えないのだろうか?

考えたことはあったが、とても無理だと思った?それはなぜだろうか?国際標準化機構なんて、うちみたいな田舎の施設ではとても無理だと思ったのだろうか?しかし、実際にISOISO 9001 の認証を取得しているのは、病院ばかりではない、ISO 9001 の認証を取得した治験管理センターが複数存在する。

神戸赤十字病院-治験事務局神戸大学医学部附属病院治験管理センター岡山大学病院

では、上記の施設は、血のにじむような努力をして認証を取得した、ごく特殊な組織なのだろうか?実はそうではない。そもそもISOが要求するのは、日本の多くの組織で行われているような高度な品質管理ではなくて、米国や欧州の大多数の国のような、品質管理の劣悪な国々の間で最低限要求される品質管理であることをご存知だろうか?

時速200マイル近くの列車を3分おきに走らせる品質管理を実現できるのは地球上でも日本人だけだという事実を思い出してもらいたい。

欧州でも近代化の遅れた国や地方に行くと、 昔ながらのやり方で、 標準書もなしに口頭だけで仕事をしているところが沢山ある。また、 標準書や記録を作っていても、 内容が不満足であったり言語が馴染めなかったりで、 容易に把握できない。そういう企業との取引に困難があるので、 欧州の経済統合を進めるために最低限の QMS を作ったワケです。 (「ISO 9001 QMSの弱点」より)

では、治験実施組織は、 ISO 9001 の認証取得を考える必要などないのだろうか?それも違う。あなたが関わっている治験のすべての側面で、最低限の品質管理が行われているとはとても思えないからだ。改善すべき点は、どこの治験実施施設、どの治験でも必ずある。だから、 ISO 9001 の認証取得は全ての治験実施施設にとって意義のあることであろう。

その時に注意しなければならないのは、 ISO 9001 認証取得をハードエンドポイントにしないことだ。 ISO 9001 認証取得は、より快適な職場環境を実現するための手段に過ぎない。 ISO 9001 認証取得によって、そこで働く人のストレスが増加しては本末転倒である。 ISO 9001 認証取得を考えていても、その点が心配な人はこちら→読むまで取るなISO へどうぞ。なかなか面白いですよ。

参考:治験にこそクリニカルパスを

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