詐欺の基本
The bigger the lie, the more people follow you. (Je größer die Lüge, desto mehr Menschen folgen ihr. -Adolf Hitler)(注:この言葉の出典に関しては下記参照)
You can fool all the people some of the time, and some of the people
all the time, but you cannot fool all the people all the time.-Abraham
Lincoln
ご両人ともに,おっしゃったことは真実である.つまり真実には二種類ある.自分にとって都合の良い真実と不都合な真実である.自分を騙すことは他人を騙すときの基本中の基本である.他人を騙すためには,まず自分を騙す必要がある.自分を騙すのに一番効果的な方法は,自分にとって都合の良い真実だけを見て,不都合な真実から目を背け続けることである.第三帝国総統は合衆国第16代大統領が語った真実から目を背けることによって、自分を騙し、そして多くのドイツ国民を騙すことに成功した.
不都合な真実から目を背ける:自分を騙すために最強かつ最も簡便な方法
デマとは,かつて一度は信じられていた真っ赤な嘘のことである.典型例として,盲導犬オスカー刺傷事件,北陵クリニック事件,ディオバン事件がある.北陵クリニック事件では,「麻酔科医の自分はミトコンドリア病を含めてあらゆる病気を即座に診断できる万能の医師である」 そう信じた橋本保彦が,筋弛緩剤中毒という奇想天外な診断をでっち上げた.「自分は世界一の質量分析研究者である」と信じた土橋均が、世界の一流研究者達の方法とは全く異なる方法で,世界の一流研究者達とは全く異なる結果を得て,筋弛緩剤中毒という奇想天外な診断をでっち上げた.両者とも自分が神であると自分を騙すことによって、警察官、検察官、そして裁判官を騙し、冤罪を完成させた.
「大本営発表」がデマの代名詞となっているのも,かつてはその発表を日本全国民が本気で信じていたからである.「決して忘れてはならない」ことの中に,国民の皆様が大本営発表に狂喜乱舞していた事実も入っているはずなのだが,昨年の「敗戦70周年」の報道の洪水の中には,そんな事実の影も形も見えなかった.あの時,大本営も,帝国臣民の皆様も,みんな自分で自分を騙していた.
なぜデマが広がるのだろうか?それはたとえ一時的にせよ,不都合な真実から目を背けさせてくれるからである.大切なことほど後になってわかるものである.「第三帝国は千年王国となる」というデマの持続期間が示すように,デマが大きければ大きいほど,その「一時的」の時間が長くなる.といってもせいぜい数年なのだが、嘘が大きいだけに、その被害も甚大になる。
数ある大本営発表の中でも,大本営史上最高傑作のデマが,台湾沖航空戦である.当時の小磯国昭首相までが大勝利を確信して大演説をぶち上げ,「神風が吹いてくれたおかげで鬼畜米英に大逆転勝利」と日本中こぞって提灯行列に繰り出した,第三帝国総統閣下の上記の助言に忠実に従い,17隻「しか」なかったハルゼー艦隊の空母のうち,11隻を撃沈し,8隻を撃破したという超インフレ戦果が,このデマが大成功を収めた秘訣である.今も昔もデマを見破るためには算数が必要とされることを示している.
このデマのおかげで,「大戦果を上げた海軍に負けてはならぬ」と,反対する山下奉文大将(部下である堀栄三の報告により,ハルゼー艦隊壊滅のデマを信じていなかった)を怒鳴りつけた寺内寿一元帥の命令により,山下麾下の第14方面軍8万は,制空権も制海権もない中でルソン島からレイテ島への移動を強いられ,壊滅した.
レファレンス事例詳細:「大衆は小さな嘘より大きな嘘にだまされやすい」という言葉の出典に関して
→二条河原へ戻る
→一般市民としての医師と法