FDAは終わった

だって、効くか効かないかわからないものを患者の飲ませるのなら、何のために承認申請があるのかって話になるじゃないか。「迅速承認されたアルツハイマー病薬の試験」って一体どういう試験をやるのさ?そしてその金は誰が払うのさ?患者だろ?完全に患者を馬鹿にした話だ。FDAがこんな芸当ができるようになったのも、Woodcock大明神様が先鞭を付けてくれたおかげだな。

2018/3/6 追記 EMAも終わった。みんなで渡っても信号の色が変わるわけではない。
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欧州も米国と同様にバイオマーカー利用アルツハイマー病薬試験を認める  Biotoday 2018-03-04
欧州も米国FDAと同様に発症前からの評価を後押ししてバイオマーカー利用をよしとしうるようにアルツハイマー病薬臨床試験方針を改訂しています。アルツハイマー病と関連する体の異変は発症から10年や20年前に生じうると最近の研究で示唆されています。
Revised guideline on clinical studies for Alzheimer’s disease medicines
Europe follows FDA with plans to help early Alzheimer's drugs
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アルツハイマー病薬をまずはバイオマーカー変化で承認しうる方針をFDAが提案 Biotoday2018-02-19
生活に支障をきたす認知機能障害への効果を明確に示さずともその効果へと通じうる体の些末な反応<生体指標(バイオマーカー)変化>に基いてアルツハイマー病薬をとりあえず承認する方針案を米国FDAが発表しました。   そうして迅速承認されたアルツハイマー病薬の試験を企業は更に続け、認知機能低下を遅らせるなどの傍から見てわかる有意義な効果を後に証明する必要があります。米国FDAは他に筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、片頭痛、てんかんの開発のあり方を示した方針も発表しています。
Statement from FDA Commissioner Scott Gottlieb, M.D. on advancing the development of novel treatments for neurological conditions; part of broader effort on modernizing FDA’s new drug review programs / FDA
FDA Opens New Path for Alzheimer's Treatments / Bloomberg
The FDA raises hopes for Alzheimer’s drugs with a new set of draft rules. But are they going too far? / Endpoint
[DRAFT GUIDANCE] Early Alzheimer’s Disease: Developing Drugs for Treatment Guidance for Industry. FDA
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海外時報 アルツハイマー病薬の陰鬱と光明 FDAが大胆な承認方針 医薬経済 2018/3/1
 2月12日にベーリンガーインゲルハイムが発表したPDE9A阻害剤の開発断念を皮切りに、アルツハイマー型認知症治療薬開発の挫折報告が続いた。同剤は第Ⅱ相試験で、脳内シグナルの一部に改善を認めたが、全体に有効性を示せない失望に終わった(「BI409306」の統合失調症適応の研究は継続)。
「失敗は科学の常だが、脳機能の理解に貢献できた」。悔しさを超えて退行性の神経疾患治療薬開発の難しさを語る発表だった。
 翌13日、治験薬「インテピルジン」の失敗に言及したアクソバント・サイエンシズのCEOも、「明快な結果を得る明快な実験ができた」と省みた。グラクソ・スミスクラインの疾患修正型療法を再評価、研究設計を変えれば成功できると踏み、これを買い取ったが「継続して探索する価値のある有効な仮説ではなかった」と結論付けた。投資家から傘下に企業群を置くバイオテック会社の指揮官に転身したヴィベック・ラマスワミーのコメントだ。
 市場が閉じた13日夕、メルクは「ベルベセスタット」(MK8931)の第Ⅲ相打ち切りを発表した。障害の元凶と目される脳内のβアミロイドの生成に役割を担う酵素BACEに対する阻害剤は1年前、アミロイドだけでなく、脳内スキャンでは形成されたプラークを減らすことも確認したが、臨床結果の改善は認められなかった(EPOCH研究)。これよりももっと初期の、記憶悪化の兆候や前駆状態に絞ればどうかを検証するAPECS研究も、最終報告を待たずに失敗した。
 イーライ・リリーとアストラゼネカが提携する「ラナベセスタット」をはじめ、ノバルティス、ジョンソン&ジョンソンもBACEに基づいた新薬開発を進めている。
 14日にはバイオジェンの最高医学責任者が投資銀行主催の会議で、「アデュカヌマブ」の2つの臨床試験に255人の患者を追加する見直しを図ると明らかにした。進行中の第Ⅲ相は統計的ノイズが多いためで、治験薬の有効性とは関係はなく、規模拡大は珍しいことでない─―と説明したが、試験完了の遅れに加えて下されたこの意思決定に憶説が飛び交い、投資家に動揺を生んだ。
 15日、陰鬱な光景に救いの光が差し込んだ。FDAの「早期アルツハイマー病治療薬開発・産業界のための指針(案)」だ。初期患者群に対する治験薬の有効性はバイオマーカーで測る、症状緩和・改善の証明なしでも承認の判断を下す方針を明らかにした。

バイオマーカーによる有効性評価
 死屍累々、開発の失敗が続く状況を前に、起死回生、開発環境を緩和し取り組みの背中を押そうというFDA(食品医薬品局)政策は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、偏頭痛急性療法(最終規則)、筋萎縮症側索硬化症、部分発作(試案)とともに切迫したニーズの神経系薬剤の開発支援策のひとつとして示された。
 FDAは13年にアルツハイマー病薬の指針案をまとめ、研究対象のクライテリアや早期状態の研究における評価項目で柔軟な対応を示唆していたが、指針案を改訂する指針案は、発症後の認識と機能の改善から疾患初期、さらに発症前、脳に対するダメージが始まる前の予防介入へと早める志向に柔軟に対応しようとしている。
 症状はないが、病理的な、画像上の変化、敏感な認識力スクリーニングでうかがわれる初期状態(ステージⅠ)、あるいは“患者予備群”への抗βアミラーゼ薬や抗タウ抗体の有効性を、臨床結果を待たずバイオマーカーで判断して暫定的に承認の適否を判断する。新薬の有効性・安全性は市販後研究を通じて最終的に見極めようという提案である。
 昨年5月、神経科専門医と患者グループは、認識力、生活機能の改善どちらか一方でも証明できれば有効と判断できるよう新薬の承認要件引き下げを申し入れていた。
 改訂指針案は申し入れより踏み込んだ大胆な内容になった。FDAは暫定的に有効性を判定するバイオマーカーが何を指すのか特定しないどころか、高度に合理的に臨床変化を予測できるバイオマーカーの証拠は現時点では存在しないと認めている。
 それでも微妙な変化が観察されるステージⅡより前の介入が「高度に望ましく」、バイオマーカーの役割に関する研究者間の高い関心に期待すると、今後の進展を先取りした。
 最新の疾患理解に立つ診断クライテリアを取り込み、ステージⅠからアルツハイマー病のイベントまでの期間(タイム・ツー・イベント)分析の考え方も強調されている。

ゴットリーブ長官の「大胆」な指揮
 新薬審査近代化に向けた新しい広範な努力の一環と位置付けられたこの政策は、切迫したニーズに応えられない高い開発のハードルを直視し、従来の官僚的姿勢では想像もつかない提案になった。具体的なかたちを取り始めたFDA長官ゴットリーブの指揮を映しており、官僚的に言えば、安全ではない治験薬、効かない治験薬を増やさない運用が問われることになる。
 バイオテックへの投資を観察するアダム・フュアースタインは、ウォールストリートから投資家に発信される情報は楽観に傾きがちであり、ほぼ100%の失敗率のアルツハイマー病薬も例外でないと、その姿を単刀直入に描いている(ヘルスケア情報サイトSTAT)。
 悲観的な投資家メモを届けるアナリストは抗議を受けるうえに、製薬会社からの電話が途絶え、情報源を失う。もちろん楽観も最終的に間違えば苦情が殺到するが数日限りのことで、逆にアルツハイマー病薬における難しいプロジェクト成功のケタ違いの報償を考えれば、株式購入の見送りは助言しにくい、と。
 リリーの「ソラネズマブ」は16年末、症状進行を遅らせる用途をめざした3度目の大型研究でも失敗した。リリーは25年間、30億ドルをアルツハイマー病に投じてきた。病理的改善はあったと強調されたが、バイオジェン、ロシュと提携するACイミューンのクレネズマブもβアミロイドに着目した早期治療が狙いだ。
 βアミロイドの上流であるBACE酵素に着目したベルベセスタットも初期で失敗した。開発の大半がすでに前駆症状(プロドーマル)に集中しているが、柔軟な承認審査体制は新薬開発の成功を約束しない。
 ボイエイジャー・セラピューティクスのアルツハイマー病遺伝子療法の開発でアッヴィが提携して注目を集めている。アデノ関連ウイルス(AAV)をベクターとして抗タウ抗体の創出を指示する1回限りの療法だ。しかし、02~12年に手掛けられた計413件の臨床開発プログラムの99.6%が失敗、失敗率はさらに高まっている。早い時期に失敗したファイザーは神経領域からの撤退を決め、08~09年をピークにアルツハイマー病への挑戦は縮小している。
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