Digital Phenotyping
「22世紀の医療」で,「22世紀の医学は、狭義のヒト生物学では なくて、行動科学、心理学が中心になると思っている。21世紀はその転換期ね」と申し上げたのが,2007年2月4日.iPhoneが世の中に出てから1ヶ月も経っていない時である.
その2年半後には,予定を100年も繰り上げた.「建ってたまるかバベルの塔」で,21世紀の医学は行動科学・心理学・社会学の側面からの研究が中心になり、22世紀はそれに加えて哲学の色合いが濃くなると申し上げたのは,2009年8月26日,今(2017年10月14日)から8年以上も前のことである.
Insel TR.Digital Phenotyping: Technology for a New Science of Behavior.JAMA. 2017 Oct 3;318(13):1215-1216. doi: 10.1001/jama.2017.11295.では,今までの行動科学,心理学,社会学のまだるっこしい方法論をスマホでスマートにまとめようという企画が説明されている.若い人たちは必ず読むように.ホルター心電計が博物館行きになる日は目の前に来ている.
このViewpointの著者は主に精神科領域への応用を考えているようだが,精神科領域よりもまず,神経疾患,生活習慣病,呼吸器・循環器疾患で利用が進み,それから精神科領域へ広がることになるだろう.最大の障壁は,digital phenotypingは,診療アウトカムを患者の私生活と同時に丸裸にすることになる点だ.21世紀は製薬企業にとってだけでなく,医者にとっても患者にとってもやっかいな世紀になりそうだ.
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