第2波は弱毒化のエビデンス―3:貯まるのは「こども銀行券」だけ
−日本のデータをより詳しく見ると−
(第2波は弱毒化のエビデンス―2 より続く)
陽性者数と重症者数乖離:潜伏期間だけでは説明できない
検査体制や医療機関の診療・受け入れ態勢の国による違いが,陽性者数と死亡数のタイムラグに大きな影響を及ぼしている可能性もある。そこで日本での第1波における,陽性者数と(死亡者数ではなく)重症者数の間にあるタイムラグを比較したのが左の図である。(クリックで拡大)。この図は「第2波は弱毒化のエビデンス―1」で紹介したのと同じものなので,詳しくはそちらを読んで頂きたい。要するに,陽性者数と重症者数の間にあるタイムラグはせいぜい1週間で
ある.,第2波の始まりから1か月経った現在も重症者数増加が見られないのだから,死亡数の増加を待つまでもなく,日本で起こっているのも,やはり弱毒株
による検査陽性者数(その大部分はおそらく無症状病原体保有者,要するに検査が陽性というだけでぴんぴんしている)の増加であると考えられる。
退院者のピークも,第2波でのいち早い回復を示している
回復の早いことは予後良好の何よりの証拠である.右の図(クリックで拡大)を見ると検査陽性者数と入院患者の増加がほぼ同時に3月末に始まっているのに対し,退院患者の増加が明らかになるのは4月中旬以降である.両者の間には2週間以上のタイムラグがあることになる.一方,第2波では,入院患者の増加が明らかになったのが7月1日(6月30日28名→7月1日109名),退院患者が増加したのがそのわずか6日後の7月7日(7月6日69名→7月7日134名)である.
退院患者数/入院患者数・死亡数の比率も弱毒化を示している
左の図(クリックで拡大 日本のデータである)は,退院を異なる側面から見た指標を示している.上段は入院患者数(茶)と退院患者数(緑)の変化である.第1波に相当する赤丸の期間では入院患者数が激増している間でも,退院患者数はほとんど増えていない.一方第2波に相当する赤丸内では,入院患者数が増えるにつれて,退院患者数も,順調に増えている.下段は退院患者数と死亡者数の比率を示している.第1波の時には,4月24日には退院患者数が81.6%,死亡者数が18.4%と,正に医療崩壊寸前のところまで行ったが(西欧諸国では,流行初期に,この段階から一気に死亡者数と退院患者数が拮抗する医療崩壊が起こった→イタリアの例),そこから持ち直し,5月中旬以降は安定した平原状態になっている.この平原状態は第2波が始まった6月末以降も全く変わらず(むしろ退院患者数比率はわずかながら上昇を続けている),7月28日現在退院患者数の比率は96%になっている.
なのになぜ?→結局は感染症に対する差別に行き着く
以上,せいぜい季節性インフルエンザの1/3の脅威しかないくせに,世界中を恐怖のどん底に陥れたSARS-COV-2の現在の振る舞いを解説した.では,それほどの脅威しかないウイルスが,なぜ,ノーベル医学生
理学賞受賞者の口から「10万人が死亡する」との発言を引き出せたのか?我
々が直面している問題の本質はそこにあるのだが,今はその問いに対して誰も正確な答えは持っていない.持っている人がいればお目にかかってみたいものだ.
誰にでもわかることは,答えを得るには時間がかかることだけだ.では,どのくらい時間か?わからない.わかるのは「長い戦い」になるということだけだ.ど
のくらい長いのか?わからない.確かなのは,「戦い」ゆえに,その戦いの最中には本質的なことに関して,客観的に考え,議論を巡らせるのは極めて困難だと
いうことだ.コロナパニックの根底には感染症に対する差別がある.ゆえに,今の,このパニックを後から振り返ることができるのは,HIVに対する差別やハンセン病に対する差別を論ずるまでにかかった時間と同じぐらいの時間がかかる.そう覚悟しておいた方が,焦燥感に苛まれずに済むだろう.それでも,何か考える材料が欲しいという方は →今後に向けた建設的な提言:収束の前から終息を考える へどうぞ.
→患者数を偽造する−「感染者数」という名のデマ
→第2波は弱毒化のエビデンス―1
→第2波は弱毒化のエビデンス―2
→第2波は弱毒化のエビデンス―4
→第2波は弱毒化のエビデンス―5
→コロナのデマに飽きた人へ
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