今後に向けた建設的な提言:収束の前から終息を考える
欧米諸国に比べて日本で単位人口あたりの死者が少ないのは,日本人の特定の遺伝子のような,単一の生物学的原因によるものではない.あらかじめ策定された何らかの施策によるものでもない.あるいは「民度」でも.「清潔好きな国民性」でもない.ましてやおじぎや畳に素足の生活でもない.複数の偶然が重なった結果である可能性が一番高いのだが,一体どんな施策が,行動が,どのようにして相互作用した結果なのか,正確に答えられる人物などいない.しかし,この論説には,興味深い仮説が詳細に説明されている.それだけではない.今後に向けた提言が盛り込まれている.弱毒化が明らかになりつつあるにもかかわらず,どんちゃん騒ぎが収束する方向さえ見えない.まして況んや感染の終息をや.そんな時にこそ.必読の論説である.
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高橋泰・武藤真祐・加藤雅之 「新型コロナの実態予測と今後に向けた提言」『社会保険旬報』2020.6.21号、7.1号(№2787[pp.6-15]、№2788[pp.18-28])
新型コロナウイルスの緊急事態宣言は5月25日に全国で解除されたが、首都圏を中心に患者数は再び増加の勢いを見せています。感染予防と経済活動を両立させるには、新型コロナの実態を正しく理解することが必要です。国際医療福祉大学の高橋泰教授らのグループは、「新型コロナ感染7段階モデル」を作成。モデルをもとにシミュレーションを行い、その結果に基づいて、より実態に即した対策を講じるための5つの提言を行っています。
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これまで諸説紛々だった中で,日本だけでなく,タイ,ベトナム,台湾,日本といった東・東南アジア地域で,単位人口あたりの死者日本よりもさらに少なかった問題が全く触れられていなかったが,この点でも上久保・高橋論文を引用して解説してくれている.ただ,上記の論説はかなり本格的なものなので,その前に下記の記事,論文に目を通しておくことをお勧めする.
新型コロナ、日本で重症化率・死亡率が低いワケ 高橋泰教授が「感染7段階モデル」で見える化(東洋経済オンライン 2020/7/17)
コロナ感染による国ごとの致死率の差をウイルスの「3つの型」で読み解く新説(ダイヤモンドオンライン 2020/6/2)
世界がモヤモヤする「日本の奇蹟」を裏付ける"国民集団免疫説"…京大教授ら発表(プレジデントオンライン 2020/5/27)
Yasuhiko Kamikubo, Atsushi Takahashi. Paradoxical dynamics of SARS-CoV-2 by herd immunity and antibody-dependent enhancement.

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