「大規模試験」今昔

TECOS試験の結果が,ボストンで開催された第75回米国糖尿病学会NEJM誌上の両方で発表されたのは2015年6月.あの時は,ボストンで意味不明のどんちゃん騒ぎが展開されたものだった.あれからまだ3年しか経っていない.ところが,シタグリプチンの安全性を証明したTECOSと同様に,リナグリプチンの安全性を証明したCARMELINA試験の扱われ方は,TECOSよりもずっと質素だった.

2018年7月19日に行われたBoehringer Ingelheim and Lillyの報道発表では,『本年10月に開催される第54回欧州糖尿病学会で詳細が発表される』とあるだけで,研究結果がいつ,どの雑誌に発表されるかも不明である.また,TECOSの時にはNEJMへの掲載と同時にその結果を大きく取り上げた日本の業界紙が,CARMELINA試験について触れたのは日本のべーリンガーの報道発表と同様に,本社のそれよりも1週間遅れた7月26日だった.

さらには,ブラウザ上でわずか5行,206文字しかないCARMELINA試験の記事には,栄えある大規模試験の成果が,あと2ヶ月余りで欧州糖尿病学会で発表されるのが待ち遠しいとは一言も書いてない.それに対して同業界紙がTECOS試験の結果を報じた記事14行,545字第75回米国糖尿病学会でのlate breaking session発表とNEJMへの掲載の両方に触れていた

シタグリプチンと同様に,プラセボと肩を並べて安全性を証明できたのだから,TECOSの時と同様にどんちゃん騒ぎをしてもよさそうなものだが,何か悪いことでもあったのだろうか?と思ってDrugs@FDAを見てみたら,試験結果を待たず,既に1年前(2017/8/10)に, シタグリプチン共々,心不全の注意喚起を添付文書に追加するよう,申し渡されていたのでした.おいおい,試験をやれって言ったのはFDAじゃなかったのかい?

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