研究者から搾取する出版社
コストはどんどん下がっているのに
その昔,出版社が雑誌を発行するためにはそれなりのコストがかかった.そのコストもコンピューターとネットの発達により,金融業なんぞ
よりもはるかに早い速度で削減され限りなくゼロに近づきつつある.そもそも,唯一機械化できない,限られた人間にしかできない査読は,元から無料奉仕だっ
た.今やその査読さえも,AIが取って代わろうとしている.その開発を推進しているのがエルゼビアだってのも笑っちゃうけど.
なのに,年間購読料は出版社の言い値でどんどん上がっていく一方で,決して下がることはない.大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)によると、
海外の自然科学系学術誌の2018年の年間購読料の平均は1誌あたり平均2895ドル(約32万円)。1990年の9倍に達した。1年間で平均8%の値上
げで、大学など研究機関が抱える研究・資料購入費を圧迫している。(下記日経記事)
科学出版社のビジネスモデルは研究者からの搾取
論文を労働の成果物と考えれば,研究者と出版社の間には,農奴と地主の関係以上の搾取が行われている.なぜならば,農奴の場合には耕地,農機具が貸与されるが,出版社は研究者個人に対して何の支援も行わないからだ.
研究はビジネスではない.研究者はビジネスマンではない.だから自分が研究者生命を賭けた論文も,自分にとっては商品ではない.しかし,出版社はその論文
を商品として仲間の研究者達に売りつける.
著作権は出版社の利権ではない.また研究費はその研究成果を多くの研究者の間で共有するためにある.出版社のやっていることは,研究者達から搾取する行為である.Gates Open Research GORに対して研究者達がわくわくしているのは,研究を食い物にして自分達から搾取してきた出版社に対抗し,研究という社会貢献を推進する研究者達を支援しようという「俠気」をGORに感じるからである.
スウェーデンがElsevierジャーナル購読の更新をしない(2018/5/21)
フロリダ州立大学はElsevier学術誌包括購読をやめて最も必要なものだけを購読する(2018/6/12)
ドイツとスウェーデンの研究機関がElsevierジャーナルの閲覧権利を今月失った(2018/7/31)
AI研究者が大手学術誌に投稿拒否、論文はだれのもの(218/9/29)
ビル・ゲイツ氏、論文公開で世界主導 論文は誰のものか(2018/10/6)
世界屈指のドイツ研究組織Max Planck SocietyがElsevierジャーナル購読打ち切り(2018/12/27)
Wileyがドイツ全域の700を超える学術機関からの論文を無料公開する(2019/1/21)
伊藤穰一の対エルゼビア戦略(2019/4/4)
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Wileyがドイツ全域の700を超える学術機関からの論文を無料公開する BioTodayニュースレター 2019年1月21日
研究報告を誰もが無料で利用できるようにするドイツの取り組みProject
DEALと米国ニュージャージー州ホーボーケン(Hoboken)本拠の学術出版大手Wiley(ワイリー)が合意に至り、Project
DEALに名を連ねるドイツ全域の700を超える学術機関からのWiley雑誌掲載論文が無料公開されます。
Wileyは購読料を毎年受け取り、Project DEAL加盟機関はWileyの1997年からの学術誌報告を全て利用することができます。
年間購読料はProject DEAL加盟機関からのWiley雑誌掲載論文数に基づいて決まります。
German Institutions and Wiley Reach Open-Access Publishing Deal
Groundbreaking deal makes large number of German studies free to public
Wiley and Projekt DEAL partner to enhance the future of scholarly research and publishing in Germany
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世界屈指のドイツ研究組織Max Planck SocietyがElsevierジャーナル購読打ち切り BioTodayニュースレター 2018年12月27日
科学者14,036人が携わる84の研究所を運営する世界屈指のドイツ研究組織Max Planck Societyが、ドイツのオープンアクセスの取り組みProject DEALを支持する他の200近いドイツの大学/研究所に倣い、現在の契約が切れる今年いっぱいでElsevier(エルゼビア)雑誌購読を打ち切ります。
Max Planck Society電子図書館からElsevierの約2,500誌を利用することは来年1月から不可能となりますが、研究に必要な場合にはなんとかなるようにしているとのことです。
Max Planck Society discontinues agreement with Elsevier; stands firm with Projekt DEAL negotiations
Max Planck Society Ends Elsevier Subscription
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ビル・ゲイツ氏、論文公開で世界主導 論文は誰のものか 日経新聞 2018年10月6日
「迅速性、透明性のある出版物です」。学術論文を公開する英文サイト「ゲイツオープンリサーチ」を開くと、こんなうたい文句が目に入る。運営するのは米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ夫妻による「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」。サイトを開設した2017年に数百人の研究者を助成し、その論文をサイトで公開している。
論文をただ載せるのではない。学術誌を発行する出版社の「専売特許」だったはずの論文の評価機能も備える。新興企業「F1000」社に論文評価を委託することで、研究の助成から評価までを一貫して手がける仕組みを自らつくった。透明性を高めるために、評価の担当者名やその内容に関するリポートを公開する。サイトを閲覧すればコメントできるようにした。第三者の目にさらすことで、助成した研究に対しても厳しい意見が集まる。評価途中でも論文をいち早くサイトに公開しており、無料で誰でも読める。
同財団による研究助成は17年の1年間で47億ドル(約5400億円)にものぼる。サイトに投稿された論文は既存の出版社には投稿できない。つまり有望な研究者を囲い込めるようになる。読者の購読料で成り立つ従来型モデルには脅威だ。文部科学省科学技術・学術政策研究所の林和弘・上席研究官は「このモデルが成功すれば出版社を介さずに評価を受けた論文が世に出るようになる。学術界にゲームチェンジが起こる可能性がある」と話す。
米国発のモデルは海を渡る。英国、フランス、オランダといった欧州11カ国の研究助成機関が9月上旬、支援した研究者の論文投稿先について、20年以降は無料で読める学術誌だけに限定すると宣言した。読者が購読料を支払う学術誌をなくし、誰もが無料で論文を読めるようにする――。これが宣言の狙いだ。購読料の代わりに研究者が論文の公開料を支払えば、出版社のビジネスも成り立つという。英国大学協会によると現在、学術誌の85%が購読料を受け取っており、出版社にビジネスモデルの転換を求めている。
研究助成機関以外では、学術誌の出版前にインターネットで論文を公開する動きが広がっている。横浜国立大学の西島喜明准教授は4月、赤外光を吸収する材料を開発した成果に関する論文を、17年にできたばかりの公開システム「ケムアーカイブ」に投稿した。
化学分野では、既にネットなどに公開された論文の掲載を認めない学術誌も多い。それでも西島准教授は公開に踏み切った。「なるべく早く成果について他の研究者と議論し、次の研究につなげたかった」。公開後、海外の研究者たちから反響があり「新たな知見を得ることができた」。ネットの爆発的な普及で、限られた世界でのみ知識を共有する既存の枠組みは崩れつつある。論文をいち早く公開しようとする動きが鈍かった化学、生物学にも新しい時代の波は確実に押し寄せている。
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AI研究者が大手学術誌に投稿拒否、論文はだれのもの(日経 2018/9/29)(以下抜粋)
「私たちは人工知能(AI)と機械学習の分野において無料で自由な研究環境で走ってきた。アクセスを制限したりする出版物は時代に逆行する」世界で活躍する総勢約3000人のAI研究者がこの文書に署名した。きっかけは学術雑誌大手の英独シュプリンガー・ネイチャーが2019年1月に創刊するAIのオンライン学術雑誌「マシンインテリジェンス」。機械学習の専門誌で、同社が発行する世界で最も有名な科学誌「ネイチャー」の姉妹誌だ。そもそもAI分野は研究のスピードが速く、論文を無料で投稿するサイトを設けて発展してきた。AIで世界最高峰の学術誌である「JMLR」や著名なAI研究者が一堂に集まる国際会議「NIPS」などが代表例。現在は国や企業が競争力の基盤だとして研究資金を提供する。一部の資金は税金で賄われるため研究は公共性のある行動であり、その対価を出版社が独占するのはおかしいという意見も多い。
欧州では出版社への不満が全分野に広がり、国一丸で反発する動きが出ている。ドイツは7月、大学の学長協会がオランダのエルゼビア社との交渉決裂を宣言し、200近くの研究機関で同社の学術誌を読めなくなった。フランスでも4月に100前後の研究機関がシュプリンガー・ネイチャーの1000以上の学術誌について購読契約を打ち切った。研究者が論文の公開料を支払っている以上、購読料を値下げすべきだ主張した。出版社が発行する学術誌の価格が値上がりしている。大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)によると、海外の自然科学系学術誌の2018年の年間購読料の平均は1誌あたり平均2895ドル(約32万円)。1990年の9倍に達した。1年間で平均8%の値上げで、大学など研究機関が抱える研究・資料購入費を圧迫している。
背景にあるのは出版社の寡占だ。研究者が論文を掲載する海外学術誌は、日本の図書館などが支払う購読料ベースで、シュプリンガー・ネイチャー、エルゼビア、米ワイリーの3社が50%を占める。ほぼ寡占状態で、出版社の値上げ要求に断れない状況になっている。
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ドイツとスウェーデンの研究機関がElsevierジャーナルの閲覧権利を今月失った BioTodayニュースレター 2018年7月31日
TheScientistによると、全国的な購読契約の交渉で折り合いがつかず、ドイツとスウェーデンのおよそ300の大学や研究機関がエルゼビア(Elsevier)発行の新たな論文の閲覧権利を今月失いました。
スウェーデンのおよそ85の研究機関を代表するBibsam ConsortiumはElsevierとの契約を更新しないことを決めており、ドイツのおよそ200の研究機関を代表するProject DEALはElsevierと合意することができませんでした。Elsevier発行の論文の閲覧権利を失うことは大きな痛手だとする研究者がいる一方でBibsam ConsortiumやProject DEALの方針を支持する研究者もおり、たとえばElsevier発行の科学誌からのピアレビューの依頼には応じない、あるいはElsevier以外の論文にこれからは投稿するという研究者2人の見解をTheScientistは伝えています。
[ドイツとの合意不成立の知らせ] Elsevier is committed to reaching national agreement with Project Deal
Universities in Germany and Sweden Lose Access to Elsevier Journals
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フロリダ州立大学はElsevier学術誌包括購読をやめて最も必要なものだけを購読する BioTodayニュースレター 2018年6月12日
まだ協議は続いていますが、出版大手・エルゼビア(Elsevier)の学術誌全部を購読する包括契約はバカ高くて(exceptionally high)値上がりする一方で継続不可能なのでフロリダ州立大学(FSU)は今年いっぱいでその包括契約を止めて来年からは最も必要な学術誌のみ購読する予定です。
FSUの包括契約の費用は毎年少なくとも4%は上昇しており、現在は200万ドル近くに達しています。また、FSUはElsevierと同州大学連盟の20年前のいい加減な契約のせいで他より多く払っています。この契約により、FSUと同じ内容の包括契約にセントラルフロリダ大学は100万ドル未満(less than $1M)、フロリダ国際大学は100万ドルちょっと(just over a million)、南フロリダ大学はおよそ150万ドル(about $1.5 million)を払っています。
North American Universities Increasingly Cancel Publisher Packages
Changes to FSU's Elsevier 2019 Subscriptions
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スウェーデンがElsevierジャーナル購読の更新をしない BioTodayニュースレター 2018年5月21日
スウェーデンの85の大学/研究機関を束ねるBibsam Consortiumが6月末で切れる出版最大手Elsevier(エルゼビア)との契約を更新しないことを決めました。スウェーデンの研究者は毎年およそ4,000の報告をElsevierの雑誌を介して出版しており、Bibsam Consortiumは2017年にElsevierジャーナル購読料1200万ユーロに加えて出版手数料1300万ユーロを払いました。Bibsam Consortiumは、その加盟大学/研究所がElsevierのジャーナルに出版した報告を無料閲覧できるようにし、無理のない購読料でElsevierの1900のジャーナル全てを閲覧できるようにすることを求めていましたが、Elsevierはその要求を受け付けませんでした。Bibsam Consortiumの加盟大学/研究所は7月以降も1995-2017年にElsevierジャーナルに出版された報告は引き続き閲覧可能ですが、7月以降出版の購読料を要するElsevierジャーナル報告は閲覧できなくなります。Bibsam Consortiumはオープンアクセス論文を探したり、著者に連絡してコピーを得るなどの対処を加盟大学/研究所にアドバイスしています。スウェーデン政府は研究成果報告の即時無料閲覧を2026年までに達成することを目指しており、その取り組みを前進させるべくBibsam ConsortiumはElsevierとの今回の契約打ち切りを決めました。
Sweden stands up for open access - cancels agreement with Elsevier
Sweden Cancels Agreement With Elsevier Over Open Access
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