北米看護系大学院−留学案内


I. 何のために行くのか?:留学の目的と条件

説明: image北米の看護大学院で勉強する目的は何でしょうか?そこでしか学べないことでしょうか,日本でも学べることなのでしょうか?日本の看護系大学院は,199741日現在修士課程が14校,博士課程が5校あり,最近の新設を併せるとかなり多くなってきています。学位・資格の所得後,いずれ日本に戻るつもりでしょうか,現地に滞在するつもりでしょうか?異文化での生活,英語という言葉のハードル,そして経済的な面などに関して,一度冷静に留学の目的と条件,メリット・デメリットを考えてみましょう。

1.英語力

授業に参加するには,英語力試験のTOEFL550点以上(コンピュータ式なら213点以上)が一般的な「必要最低条件」です。それ以外にも,1)膨大な文献・教科書を速く読める,2)早口やボソボソ声の英語も聞き取れる,3)質問や意見をクラスやグループワークで述べたり,プレゼンテーションができる,そして4)膨大な量の英文がきちんと書ける能力が必要です。とりあえずTOEFLの基準をクリアしても,英語を使いこなすには現地での慣れが必要です。本格的な授業が始まる前に,または授業の履修と平行して,現地の大学付属のESL(English as a Second Language)という「英語を母国語としない学生のための英会話・英文のクラス」を取ったり,TutorとかEditor(英会話の指導や英文を添削するアメリカ人)に英語を磨いてもらうことも必要な場合があります。

日本で基準をクリアしてから渡米するのが理想ですが,日本で英語に集中して勉強できない場合も多いと思いますので,ESLのある大学にF1ビザの学生として留学し,そこで英語を伸ばしてから出願するという方法もあります。ただし,渡米後も英語が伸びない場合は経済的にも心理的にも大変な負担になるという点で,「ESLへの留学」は一長一短です。

2.批判的能力・創造的能力

アメリカのすべてが日本より進んでいるとか優れているということは決してありません。もちろん日本より進んだ技術や考え方は大いに参考になります。ただ,アメリカの理論や方法論が発展してきた文化・社会的背景や価値体系・宗教観などを抜きにして,日本に紹介したり無批判に取り入れることは混乱や誤解を生む危険があります。これらアメリカの理論・方法論のメリット・デメリットを考慮し,日本の文化・社会的背景の特性と照らし合わせる作業が必要です。

3.経済力

最初の年度は授業に追いつくのが大変で,働いている余裕はまずないです。I-20という公式の入学許可書を得るには,最低初年度の学費+生活費+健康保険+予備費(おおよその合計=学費1万数千ドル+生活費1万ドル)の残高証明または奨学金拠出者の証明が必要です。数学期ないし1年目が終わり勉強に慣れてきた頃に,Graduate Assistantship (Research AssistantTeaching Assistant)という仕事に恵まれたら幸せです。 F-1ビザの学生は学内(on campus)のアルバイトが週20時間上限で許可されます。給料の他に授業料一部免除の特典が得られることもあります。

4.異文化・多文化

言うまでもなく日本の文化を離れ,アメリカの文化の中で生活するわけですが,アメリカに滞在している日本の方々とのつながりや,日本からの「文化の輸出」に触れることもあります(日本のアニメ映画や番組はほとんど英訳されて上映されている)。日本以外の国の人たちに,日本のこと(文化,社会,宗教,政治などなど)を聞かれて,どう表現していいか分からなかったり,実際自分も良く知らなかったりで,改めて英語で日本のことを調べなおしたりということもよくあります。これらは,日本を外から見直す良い機会かもしれません。

アメリカには,国籍や人種・民族が複雑に入り混じった歴史があり,それに伴う「違い」からくる不信や誤解,偏見や差別などの問題も根強く残っている部分もありますが,違いや多様性,少数派の価値や文化に敬意を払おうとする努力と敏感さは,日本も見習ってよいのではないかと思います。

5.修了後の進路(現地就職,日本帰国)

卒業後の就職先が現地か日本に帰国するのかにより,準備・勉強の中味も違ってきます。現地就職でしたら,移民ビザまたは永住権(グリーンカード)取得の手続きや看護師免許取得が必須です。一時滞在で学位取得後帰国することが目的でしたら,常に日本の状況と照らし合わせ,学んだことを建設的に批判すること(constructive critique)や日本の文化や社会に応じた導入方法などを考え合わせる能力も必要になってきます。


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2008-05-14
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