たばこ教育を組み立てるにあたって、考えたこと

令和7年(2025)4月18日

タバコの健康教育を題材に健康教育の組み立て方についてお話します。
健康教育は「何を」だけではなく、「誰に」「何処で」も大切です。
分煙というかたちで禁煙席を設けましょうという法的取り組みは2003年に健康増進法ができて始まりました。
そのころは男性で半分近くの人がタバコを吸っていました。

ごく一部のハイリスクの人というよりも、人口全体に広く呼び掛ける、ポピュレーションアプローチが喫煙者を対象に行われていました。
最近は、その成果もあって男性の喫煙率は4分の1ほどに半減しました。そうすると、喫煙している人への働きかけは、ハイリスクアプローチとなります。
ポピュレーションにたいしては、今吸っていない人が新たに、喫煙を始めないようにという内容になります。

少数派となっても喫煙を継続している人たちは、一方的に話しかけても、責められる様に感じるだけで、苛立ちや怒りを煽りかねません。 その際は、話しかけ方としては、エマニチュードの考え方を取り入れます。目立たない服装や抑制的な発音・態度で、相手を刺激せず、同意を得ながら接触します。
1回で論破しようとせず、少しずつ話をすすめて、結論を急がず、相手の意見や気持ちを表出させ、熟慮が形成するまで、寄り添います。

一方で、ポピュレーションアプローチに場合は、ぁ~楽しかったとか思い出に残り、ほかの人にもこんなことがあったよと話したくなるような手掛かりを相手に与えるようにします。
メッセージは「文章」だけではありません、服装や態度、音や物など、複合的に組み合わせます。チームを作ったり、作戦を練ったり、ノンテクニカルスキルが必要です。

タバコを止めてもらうために、日本循環器学会では「すわん君」というゆるキャラを作りました。
タバコを止めると元気になるよお金も溜まるよ時間とお金で新しい楽しいことが始められるよという歌をつくりました。
メッセージを見てもらうために、双子の女の子にコスプレをしてもらい、ダンスをしている動画を作りました。
相手に不安を与えず、心理的な安定を確保します。ストレスを軽減して、どんなメッセージをうけたか、思い出しやすい状況を組み合わせていきました。
聴衆も歌を口ずさんだり、体を動かしたり、文字を暗記するだけでなく、禁煙を訴えるチームの一員に加わりやすい状況を生み出します。
これもノンテクニカルスキルのうちのクルーリソースマネジメントになります。。(着ぐるみを借りた 写真 文章

高校生向けに禁煙の授業を請け負いました。
その時考えたのは、タバコだけが悪いわけでも無い、それを伝えようということです。
1970年代は公害が酷く、タバコの煙の前に、工場や発電所、車の排気ガスで、肺がんになるまえに、喘息で死ぬ時代でした。
そういう体験は21世紀産まれの若者は知りません。
日本ではIHやガスでの調理です。しかし、発展途上国では、薪や石炭を燃やして調理しています。暖房もそうです。
WHOはタバコだけでは無く、そのような空気の汚染も問題にしていますよと、伝えます。
日本でも、煙が問題になる場合がある。特に焼き肉屋は煙路火災や煤煙悪臭の近隣苦情があります。
植物の細胞はポリフェノール、リグニンでできている、不完全な燃焼で発がん性のある芳香族化合物ができるのは、タバコに限らなりません。
タバコの火は900度、ニコチンの沸点は270度、先の火からニコチンが出るわけではない、火より口側の葉っぱが暖められて、ニコチンが揮発することで体に取り込まれる。
タバコがなければ、火事も減る。喫煙者で肺機能が悪くなっても酸素を吸いながら火事を起こしたり、アルコールに火がついたりする。行動変容ができないからこその火事。
タバコが家庭になければ、乳幼児のタバコの誤食はなくなる。タバコより、加熱式カートリッジのほうが小さく呑み込みやすい。気管にも詰まりかねない。
タバコがなければ虐待も減る。児童虐待を見逃さない&虐めを見逃さない。
タバコは一酸化濃度が高くなる。大気の規制は6ppm、いっぽう喫煙者の呼気は25ppm。粉じんの大気汚染規制値や有機溶媒濃度は喫煙室では上回る。
水たばこという吸い方があります。廻しのみで順番がそう回ってこない。中庭などの屋外で吸う。中東ではそんなものです。
でも、日本では換気が行き届かない屋内で、紙巻きたばこの様にせっつきながら吸う。そうなると発生する一酸化炭素で救急搬送されるヒトが多くなります。
炭で加熱するので300ppmまで水たばこ(シーシャ)の一酸化炭素濃度が上がってしまいます。
タバコは吸い口を触るが、ウイルスや細菌もフィルター越しに喉におちるので、罹患しやすくなる。タバコを吸う前に手を洗う喫煙者はいない。吸いさしを捨てた後に手を洗う喫煙者もいない。
タバコは報酬系にさようして、ドパミンを分泌させて満足感を与える。しかし、繰り返しの刺激でドパミンの在庫がきれると、チェーンスモーキングになる。
ニコチンがストレスを減らすのではなく、下駄を履いた状態に慣れて、ニコチン依存が形成されてしまう。
タバコだけでなく、大麻も同様、THCが無ければ急性の大麻精神症状は生じず違法ではないと大麻を商売にしようとする人が多い。CBDはニコチンと同じで報酬制を空回りさせるだけで、依存は同様に形成される。
ないとおもっていても、精製が上手くいかなかったり、品質検査に手違いがあったりして、THCが検出される例は多い。もちろん、意図的に低濃度から高濃度へ顧客獲得のために誘導していく売り主もいる。
タバコも躊躇するような人と違って、たかがタバコとおもうひとは、なににもかににもリスク許容度が低く、薬物や賭博など生活に困難を抱えやすくなる。


昔は、価格も高く、身分制もあり、酒もタバコも滅多に手に入りませんでした。皆でお祭りなどの折に分け合っていました。
饗応、一体感を生み出すツールであり、依存耽溺の対象ではありませんでした。健康被害が想定される量を独り占めするのは困難でした。
仲間意識ということでは、虐めのツールでもあります。一緒に吸うことで、仲間として認め合う一方で、一人よゐこを演じると排除の対象にされかねません。
吸ったという弱みを握られれば、足抜けも難しくなります。
社会の関係性と薬理作用とで止めるのも困難になるのはタバコも大麻も同じです。


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