シャント手術


シャント手術は水頭症という脳の中に水がたまってくる病気を治療するために行われます。脳の中では、脳室という場所で,脳脊髄液(髄液)という無色透明な液体が一日におよそ500ml作り出されています.この脳脊髄液は,脳室の中から狭い道を通って,脳の表面に流れ出て,最終的には,血管の中に吸収されていきます。常に循環する新しい髄液で頭蓋内は満たされています。水頭症とは,脳脊髄液の血管への吸収が不充分になったり,流れ道がつまったりして,脳脊髄液が脳室の中に通常より多量にたまってしまった状態をいいます.この結果,大量にたまった脳脊髄液が,脳を圧迫することになり脳の働きに悪影響を与えます.原因としては、クモ膜下出血,脳出血などの脳血管障害、脳腫瘍、細菌性髄膜炎などの感染性の脳疾患、頭部外傷、先天性の脳奇形等があります。
 シャント手術は、たまってしまう脳脊髄液を体内の他の場所へ逃がしてやる手術で、脳脊髄液の流れ道を新たに作る,いわゆるバイパスのようなものです.
実際のバイパスの経路としては,1)脳室から,おなかの中へ脳脊髄液を流す.(脳室-腹腔シャント)、2)脳室から,心臓のそばの太い静脈へ流す.(脳室-心房シャント)3)腰の背骨の中にある脳脊髄液を,おなかの中へ流す.(腰椎-腹腔シャント)などがありますが、本邦においては、図の脳室-腹腔シャント(V-Pシャント)が最もよく行われています。

髄液シャント術:V-P(脳室-腹腔)シャントの概略

頭蓋骨に小さな穴をあけて頭蓋骨と脳の間の膜を開き、脳室カテーテルを側脳室(左右に一つずつある側脳室のうち通常右側)に挿入します。皮下にシャントシステムを通すため頚部と側腹部に小切開を加えます。
脳室の圧を調節するバルブを所定の位置に挿入したあと、トンネル状の手術器具を使って耳の後ろ、首、胸の皮下に腹腔カテーテルを通しておきます。皮下に通したカテーテルと脳室カテーテルを接続します。脳室からの脳脊髄液の流出が良好なことを確認した後に腹膜を小切開して腹腔内に腹腔カテーテル端を挿入します。これで脳脊髄液は脳室からチューブを通って腹腔内へ流れ込むわけですが、腹腔内では腹膜から液は吸収され体の中の循環にもどります。

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