明・十三陵付近の温室レストラン(2002年11月2日昼食)
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 明・十三陵付近に建設されている展示会場にどのような日中医学交流史の展示をするか、その現地打ち合わせがこの日の目的だった。そのため中国科学院生物物理研究所の宮丹助教授が朝、なんと自家用車でホテルに迎えに来たのが驚きの最初。高速道路でわずか30分ほどで、かつてあんなに遠かった明・十三陵あたりになり、同仁堂の施設に着いたのも驚き。すでに中医薬大学の梁永宣さんと、同仁堂旅游部門の史総経理も姚経理の車で到着していた。午前中は壮大な当施設と展示会場、旅游部門が現在建設中の巨大な温泉施設に案内され、その規模と中国の高度成長ぶりに喫驚。しかも、20年前の留学中に教えを受けた中薬学の顔正華教授が診療に来ていたのにも驚いた。

 そこで昼食ということで案内されたのが、同仁堂施設から徒歩数分にあるレストラン。建物中心にある客席は天井まで吹き抜けの巨大な円形温室内にあり、日光が降りそそぐ。驚きの連続で店名の記録も忘れたが、同行していた院生の久保君がメニューか伝票をのぞき見たところ、一品がみな百元以上だったという。写真以外にも蒸し魚や面白い飲み物などが出たと思うが、全ての器が和食のように凝っており、料理ごとに違う。これまでの中国体験で初めて見たスタイルである。

 さて上左はご覧のように、エビの唐揚げと茹でたてを右上の花椒塩をつけて食べる海鮮料理。台湾でもよくあるが、この北京で生きたエビを使っており、プリプリと美味しかった。上右はブツ切り鶏肉唐揚げの四川味。久保君は一口で飛び上がっていたが、私は辛味の中の花椒の香りがたまらず、ずいぶん食べた。生きたエビさえあれば上左は簡単だが、私のウデに上右の再現は難しいと思う。
 上左はラムリブ肉の唐揚げで、柔らかく、パリパリと香ばしく揚げてある。フランスやイタリアの料理にあるラムリブのローストとはまったく違う未体験の味だった。右上は小松菜のあえ物ないし炒め物。ニンニクと塩味だが、不詳干し魚の千切りも交じっており、アンチョビーと雰囲気は違うが、絶妙な旨味と香りを出していた。
 上左は麻辣豆腐。昨晩も同じものを食べたが、香りも含めた上品さは本日のに軍配が上がる。上右はご覧のとおり、ただのミニキュウリとミニトマトで、右側の器に入っている甜麺醤(小麦粉が原材料の甘味噌)を付けて食べる。にしても、およそ中華料理ではない。そもそも調理も加熱もしていない。しかし二日酔いだったせいもあろうが、かなり美味しかった。特にミニキュウリは味・歯ごたえともに未体験で、人工のすごさを思い知った。

 左はクラゲの香菜あえ物と豚耳。ノンベーの私を配慮して注文した酒肴らしいが、昼間は絶対に飲まない主義を幾度も話し、ビールほかのアルコール飲料を強く固辞した。むろん二日酔いのせいもあったのだが。

 さて上掲のエビやキュウリの料理とともに、これは一種の前菜だが、いずれも日本なら主菜に十分になりうる。それにも増して注意いただきたいのは、本料理のみならず、前菜ぽい上掲の海老料理・生キュウリともに、パセリとニンジン(エビ料理は心裏美)による装飾がなされていることである。

 食べることを目的としない装飾など、中国で実際に見たのは初めてである。この日は夕食のみならず、その後の温泉でも初体験ばかりで驚いた。中国は変化の真っ最中であることを実感した一日だった。