国が「少国民」に牙を剥く時
アウシュビッツは決して誇張ではなかった
最初の悲劇
1945年5月24-25日に皇居が空襲を受けてほぼ全焼した(*1)後の大本営発表の内容がどうだったか?私は知りません。しかしそれと一切関係なく、生き残った都民の気持ちは容易に想像できます。「皇居を含めて首都が焼け野原になって本土決戦も何もないもんだ。もうこの国の負けは決まった」と、この時点で誰もがそう思っていても、シャーマン戦車/B29(*2)に対する竹槍戦法*3の訓練はその後2ヶ月半も続いたのでありました。敗北が近くなると国家は市民に対してますます残酷な仕打ちをするようになるという典型例です*4)。

*  小学生ではなく「少国民」(子どもと学ぶ太平洋戦争 総務省
*1 中央区 歴史年表。同年3月10日夜の下町を中心とした、いわゆる「東京大空襲」では皇居や山の手方面は難を逃れたので、「皇居には爆弾が落ちなかった」と信じている向きが多いようですが、それは間違いです。
*2 日本では戦時中に竹やりでB29を落とす訓練をしていたというのは本当ですか?(Quora)
*3 竹槍(アンサイクロペディア)
*4 死んでもバケツを離しませんでした(参考→木口小平之像
1945年3月10日の東京大空襲で10万人が亡くなっても政府方針は不変だった。3月15日の新聞は「夜間暴爆 あすへの戦訓 / 初期消火と水」(読売報知)、「初期消火と延焼防止 最後まで頑張れ」(朝日新聞)と重々しい。さらに「死の手に離さぬバケツ 火よりも強し社長一家敢闘の跡」(読売報知1945年3月14日付)と防火活動による死を美化し、「消火を忘れた不埒(ふらち)者」(読売報知 同年4月16日付)、「防火を怠れば処分」(読売報知 同年4月28日)という恫喝めいた記事が続いた。
1945年8月6日・9日に原子爆弾が投下されても、防空法による避難禁止と消火義務は維持された。防空総本部が発表した原子爆弾への対策は、「軍服程度の衣類を着用していれば火傷の心配はない」、「新型爆弾もさほど怖れることはない」、さらに「破壊された建物から火を発することがあるから初期防火に注意する」という。建物が破壊される惨状でも消火活動をさせたのだ。(大前 治 「空襲から絶対逃げるな」トンデモ防空法が絶望的惨状をもたらした~国は「原爆が落ちても大丈夫」と喧伝 現代ビジネス 2017.08.14

二度目も悲劇として
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「コロナ終息はいつ?」「ワクチン不信感」 ビオンテック上級副社長に聞く(日テレNEWS 2022年2月26日)
新型コロナウイルスとの闘いは、いつ終わるのか。「本当は体に良くないのでは」など、新型コロナワクチンへの“不信感”が一部で根強く残っています。ファイザーとワクチンを共同開発したビオンテック・上級副社長のカタリン・カリコ博士に、話を聞きました。(※詳しくは動画をご覧ください(2月25日放送『news zero』より)
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日本テレビ系で放送された番組とその解説記事はYahoo!ニュースで紹介されており、そのコメント欄「おすすめ順」(2022年2月26日05時39分)では、ワクチンに対するネガティブな論調が全て陰謀論であるかのようなコメントがワクチン懐疑論よりも上に来ています。こんな小細工をしなければならないほど大本営が追い込まれていることがわかります。そもそもほとんどの視聴者が、「このおばさん誰?」と思ったでしょう。 それにしても「ワクチン不信感」を払拭するのに、こともあろうに開発者を登場させるなんて!ディオバンの宣伝にノバルティスの社長を出すより始末が悪い、最悪の世論操作手法です。

   まあ、そのぐらい「安心・安全なワクチン」に相応しい人物がいなかったということなんでしょうね。確かに私の周りには「ワクチンを打って本当によかった」って笑顔を見せてくれる人は一人もいません。皆さんの周りはどうですか?そして小学生への接種を決めた先生方、そして打ち手となる先生方の同僚、部下、大学同級生、行きつけのお店の従業員、そして何よりもご家族の率直な意見をお訊きになりましたか?質問はとっても簡単です。「ワクチンを打って本当によかった。心からそう思っていますか?」。そうして初めてわかるでしょう。「ワクチンを打って本当によかった」って笑顔を見せてくれる人は、先生の周りにも一人もいない ということが。

今回もまた「二度目は喜劇として」とはとても言えません。大東亜戦争では戦況が絶望的になればなるほど、より弱い立場にある、学生から(学徒動員)、女性(*6)、生徒(*5)、児童まで利用するようになりました。女子小学生による竹槍訓練の写真は、『こんな「少国民」までお国のために命を捧げようとしているのに、お前ら非国民は何をやっとるのか!恥を知れ恥を!』。そんな怒号にこの子達が利用されたのです。こどもへのワクチン接種もまたn度目の悲劇であり、これもまた、「ワクチンで自由になろう」は誇張でも何でもないと、改めて「戦い」を旗印に掲げた国家に戦慄を覚えるのでした。

*5 大塚 英志 戦時下の「共助」論 防毒マスクと「女生徒」
*6 「ていねいな暮らし」の戦時下起源と「女文字」の男たち

2.26事件の日に
癩予防法の悪夢再び:n度目も悲劇として。「日本のアウシュビッツ」と呼ばれた負の遺産
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