大会長挨拶
大会長 岡田 尚巳
(東京大学医科学研究所遺伝子・細胞治療センター 分子遺伝医学分野 教授)
この度、2025年7月23日(水)~25日(金)の3日間、東京都のホテル雅叙園東京にて、第31回日本遺伝子細胞治療学会・学術集会 (JSGCT2025)を開催する運びとなりました。今回のテーマは「国際貢献と新たな時代の幕開け」といたしました。
遺伝子治療は、分子病態に基づく明確な作用機序と臨床的効果により高い注目を集めています。がんや遺伝性疾患を対象とする遺伝子治療用製品は急速に市場化が進んでおり、欧米を中心に日本でも販売承認の実績が増えております。これに伴い、遺伝子治療に使用されるベクターの効率的な製造工程開発、安全性を高めるための厳格な品質管理基準が求められています。このことにより、患者に対する治療効果が最大限に引き出されることが期待されています。細胞治療においても体性幹細胞の利用や造血幹細胞、CAR-T等が次々と開発され、様々な疾患に対する治療法の進展が期待されています。
しかしながら、その過程では経験の蓄積とともに、国内での製品開発の停滞、研究人材の不足などの課題も見えてきており、今後もリアルワールドの情報活用と、それを反映した世界に通用する基盤技術の開発が求められています。
このため、国産技術の海外展開・技術導出を進めると同時に、日米欧の三極による情報交流や規制当局の国際協調に積極的に参加する姿勢が重要と考えます。近年は企業関係者の参加も増え、産官学交流の場となっていますが、国内の優れたシーズや将来性を積極的に社会に発信するため、米国遺伝子細胞治療学会や規制当局の関係者を招いて今回の学術集会を開催したいと考えています。
本学術集会が、将来を見据えた活発な議論の場となり、参加される皆様にとって有意義なものとなることを心から願っております。