運営委員長あいさつ
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令和7年7月より、日本小児肝臓研究会の運営委員長を務めさせていただくことになりました近藤宏樹と申します。これまで本研究会を築き、支えてこられた諸先生方に心より感謝申し上げますとともに、小児肝疾患の診療と研究のさらなる発展に全力で取り組んでまいります。

小児の肝臓病は、胆道閉鎖症や遺伝性肝疾患、自己免疫性肝炎、B型・C型肝炎などのウイルス肝炎、さらには原因不明の小児急性肝炎まで多岐にわたります。医療の進歩により、多くの子どもたちが救われるようになりましたが、慢性的な経過をたどり、長期にわたり通院や治療が必要な場合も少なくありません。特に、肝移植後の患者さんを含め、成人期を迎える症例は年々増加しており、成人診療科への移行を支える「成人移行支援」が重要な課題となっています。思春期から少しずつ、自ら病気や薬を管理できるよう支援し、無理なく成人診療へとつなげる体制づくりが求められます。

近年、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)やアラジール症候群などの遺伝性胆汁うっ滞症では、次世代シークエンサーを用いた遺伝子診断が普及し、より早期かつ正確な診断が可能になってきました。また、日本全国の患者情報を集約する『小児期発症の肝疾患を対象とした多施設前向きレジストリ研究(CIRCLe)』が整備され、実臨床のデータが蓄積されています。こうした基盤の上で、新規治療薬の開発も進んでおり、IBAT阻害薬などが実用化され、かゆみの軽減や生活の質の向上が期待されています。

今後は、ゲノム解析や分子解析の進歩により、より個別化された診療の実現が見込まれるほか、再生医療や遺伝子治療といった革新的治療法の開発も視野に入っています。原因不明の小児急性肝炎についても、全国的な調査研究が進められており、原因解明と治療法確立への道筋が少しずつ見えつつあります。

本研究会では、基礎研究・臨床研究・全国レジストリを効果的に連携させ、国際的ネットワークとの協力も深めながら、小児肝疾患の診療向上と若手医師の育成を推進してまいります。そして、子どもとそのご家族が安心して治療を受けられる医療環境づくりに貢献していきたいと考えております。

会員の皆さまのお力をお借りしつつ、本研究会をさらに発展させてまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

令和7年8月

日本小児肝臓研究会運営委員長 近藤 宏樹