尿道狭窄症でお悩みの方へ

防衛医科大学校病院 泌尿器科堀口明男 Official Site

初診から治療まで

診療予約から初診まで

現在おかかりの病院の先生に診療情報提供書を作成してもらい、病院の事務の方に診察の予約をしていただきます。詳しくはこちらをご参照下さい。手術をお急ぎの方は、毎週月曜日に連携施設の西埼玉中央病院で出張手術をしておりますので、そちらへご紹介することも可能です(診察や検査は原則として防衛医科大学校病院で行います)。

初診

初診時に行う検査と診察の流れは以下の通りです。

  • 問診票の記入、これまでにかかった事のある病気、服用薬の確認
  • 身体検査(怪我の具合や尿道、会陰部の診察をします)
  • 尿流測定(尿の勢いを見る検査、自力排尿が出来る方のみ)
  • 手術日の予約(原則的に来院された順番で手術の予約を確保します)
重要①:診察や検査は全て外来で行いますので、初診時に入院の準備をする必要はありません。
特に遠方から来院される患者さんはご注意下さい。
重要②:尿道の安静を保つため、定期的に行っている尿道ブジーや内尿道切開を中断し、尿道カテーテルを取り除く必要があります。
定期的な尿道ブジーや内尿道切開を受けている、あるいは尿閉のため尿道カテーテルを留置されている方は尿道に慢性的な炎症を起こしていて、狭窄部が安定していません。炎症を鎮めるためには内尿道切開やブジーを中断し、尿道カテーテルを抜去して尿道を安静にする必要があります。狭窄部が安定するためには尿道の安静を開始してから最低3ヶ月かかります。3ヶ月待たずに検査を行うと、左下図のように狭窄部を過小評価してしまいます1。かわりの尿排出ルートとして膀胱ろう(右下図)を作成する必要があります。膀胱ろうの作成は初診時に持参いただく診療情報提供書のお返事で地元の先生にお願いするようにしています。もちろん初診前に作成していただいても構いません。
尿道の安静について
尿道の安静について
膀胱ろうイメージ
膀胱ろうイメージ
重要③:禁煙を守ってください。
適量のお酒は問題ありませんが、喫煙は創の治りを極端に悪くします。手術が決まったらすぐに禁煙するようにしてください。禁煙を守れなかったために再狭窄してしまう場合あります。ご注意ください。

2回目の診察

“尿道の安静”が終わったあと(たいてい手術の約1-2ヶ月前になります)2回目の診察に来ていただきます。2回目の診察で行う検査は以下の通りです(詳しくはこちら)。1日でほぼ全ての検査をおこないますので、終了するのが夕方以降になる場合があります。遠方から来院の方は所沢市近郊もしくは都内に宿泊を予約されることをお勧めします。

  • 採血、心電図、レントゲンなど全身麻酔前の検査一式(心電図異常がある場合や心疾患の既往がある方は循環器科の先生の診察を受けていただくことがあります)
  • 尿道造影検査(尿道に造影剤を注入してレントゲン写真をとり、狭窄部位や範囲を調べる検査です)
  • 内視鏡検査(尿道内の粘膜の状態を観察する検査です)
  • MRI検査(怪我による狭窄や複雑な狭窄の場合に行います)
  • 尿培養検査(尿の細菌を調べます。尿道形成術に尿の感染は大敵です。手術前に使用する抗菌薬を選ぶための検査になります)

検査結果をみて、その場で適切な手術方法を決定します。手術の概要を説明し、手術同意書をお渡しします。2回目、もしくは次の3回目の診察時に入院日を決めます。入院に必要な物品は外来看護師から説明いたします。特に浴衣(2~3着必要です)、タオル(8~10枚程度)、ワンサイズ小さめのブリーフもしくはボクサーパンツ(2~3着、創の密着度を高めるために必要です)を入院時にお忘れになる方が多いのでご注意下さい。入院に関してご注意いただく点はこちらをご参照下さい。

3回目の診察

2回目の診察時に提出した尿培養検査結果を確認して、適切な抗菌薬を処方します。抗菌薬の服用は原則として手術の7日前からになります。遠方から来院の方は3回目の診察の代わりに、地元の病院に尿培養検査と抗菌薬の処方をお願いするか、通常よりも早めに入院していただき、抗菌薬治療をします。術前の抗菌薬治療は術後の創感染、尿道周囲膿瘍の予防に極めて重要です。

入院から手術まで

入院は手術の4〜5日前(手術前週の金曜日)になります。遠方から入院される方や、点滴の抗菌薬投与が必要な方はもう少し前に入院していただきます。入院後に尿培養を再検査して、きちんと抗菌薬が効いているかを確認します。尿が無菌状態になっていれば、抗菌薬を続けながら外泊に出ても構いません。

手術前日に麻酔を担当する先生の診察があり、麻酔の方法に関する説明を受けます。

手術前日に下剤の内服を行います。口腔粘膜を利用した手術を予定されている場合には、口腔内ケアのためのうがいをしていただきます。

手術当日朝にシャワー浴をしていただきます。抗菌薬治療と同様に、創感染、尿道周囲膿瘍の予防に極めて重要です。普段よりも入念に時間をかけて、陰嚢~会陰部~肛門周囲を洗うようにしてください。

陰部の剃毛は手術室で麻酔がかかってから行います。手術前にご自分で行わないようご注意ください。

手術から退院まで

球部から後部尿道の手術では肛門の上から陰嚢までの切開をします。振子部尿道の手術ではペニスと陰嚢の間を切開します。手術時間は狭窄部切除・尿道端々吻合術で2〜3時間、口腔粘膜を利用する尿道形成術で3〜4時間程度です。

手術後は術式によらず、原則的に48時間ベッド上安静になります。口腔粘膜の生着を促すことと、創からの出血を予防するためです。

口腔粘膜を採取した場合には、粘膜保護剤と痛み止めの入ったうがい薬で毎日うがいをします。

手術後は尿道にカテーテルを入れておきます。これは尿を排出する目的だけではなく、吻合部や形成した部分を安静にして、良い形に仕上げるために必要です。いわば、骨折した時に使うギプスやシーネのような役割です。抜くときが来るまで大事に扱ってください。

手術後の止血と粘膜移植した場合は粘膜の固定のため、創の上を厚いガーゼで覆い、テープでしっかり固定します。固定は安静が解除される手術後3日目に外します。

創は埋没縫合で閉じますので、抜糸は不要です。防衛医大病院の近隣にお住まいの方は(尿道カテーテルをつけたままになりますが)、手術後7日目以降で退院することも可能です。

術後数日間は点滴の抗菌薬、以降は内服の抗菌薬になります。抗菌薬の内服は尿道カテーテルが抜けるまで続けます。

術後2週間目に尿道造影を行い、問題が無ければ尿道カテーテルを抜き、自力での排尿を始めていただきます。自力での排尿を初めて数日問題がなければ、尿流測定で尿の勢いを確認して退院となります。膀胱ろうを留置されている方は退院前に取り外します。

退院後の注意事項

手術後3〜6ヶ月間は自転車、バイクの運転、長時間の座った姿勢は控えるようにしてください(手術部位を圧迫してしまうためです)。

創や陰嚢の違和感、鈍痛、しびれは手術3ヶ月から半年程度持続します。時間とともに軽快しますので心配する必要はありません。

退院後の飲酒は適量であれば問題ありません。喫煙は創の治りを著しく悪くします。手術が終わった後も極力禁煙するようにしてください。

退院後の通院は原則として、手術後3ヶ月、6ヶ月、1年目になります。手術後1年目以降は患者さんの状態により変わります。毎回の診察で、問診票の記入、尿流測定検査をおこないます。

急な症状の悪化などで連絡が必要な場合は、防衛医大泌尿器科外来に連絡していただくか、horiguchi-jua@umin.ac.jpへメール連絡をしてください。

引用文献

  1. Terlecki RP, Steele MC, Valadez C, et al: Urethral rest: role and rationale in preparation for anterior urethroplasty. Urology 77:1477-1481, 2011
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