14 複数の機序で弱毒化された狂犬病生ワクチン株の作出 |
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中川 敬介、○伊藤 直人、杉山 誠 |
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岐阜大学・応用生物科学部・人獣共通感染症学研究室 |
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【背景と目的】 |
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パスツールによって狂犬病ワクチンが確立されてから100年以上が経過しているにも関わらず、本病の世界的な撲滅にはほど遠い状況にある。その一因として、現行の不活化ワクチンが高価なため、本病による被害が集中する発展途上国におけるワクチンの普及が困難になっていることが挙げられる。一方、不活化ワクチンよりも安価な弱毒生ワクチンには病原性復帰や残存病原性などの安全面の懸念がある。そのため、弱毒生ワクチンの使用は、現在、野生動物に対する経口免疫に限定されている。以上の状況より、発展途上国におけるワクチンの普及率を改善するためには、安全性の高い弱毒生ワクチンの確立が重要と言える。 |
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現行の野生動物用弱毒生ワクチン株(SAG2株)は、ウイルスG蛋白質上の1アミノ酸変異によって弱毒化されていることが知られている。すなわち、同アミノ酸が野生型に置換した場合、ウイルスは強毒化する。一方、別の弱毒固定毒Ni-CE株の弱毒化には、G蛋白質以外のウイルス蛋白質が主要に関与することが明らかとなった(Shimizu et al., Virus Res., 2007)。そこで今回、Ni-CE株のG蛋白質にSAG2株と同様の弱毒化関連アミノ酸変異を導入することにより、複数の機序により弱毒化された、より安全な生ワクチン株の作出を試みた。さらに、マウスへの接種実験を行い、その安全性及び免疫原性を検討した。 |
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【材料と方法】 |
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Ni-CE株の遺伝子操作系を用いて、G蛋白質333位のアルギニンを弱毒型のグルタミン酸に置換した変異株Ni-CE AG株を作出した。105フォーカス形成単位(FFU)のNi-CE 株及びNi-CE AG株を6週齢マウスに脳内接種し、感染マウスの体重変化を2週間観察した。また、102〜106 FFU のNi-CE株 及びNi-CE AG株を4週齢マウスに筋肉内接種し、2週間後に得られたマウス血清の中和抗体価を測定した。さらに、同免疫マウスに50%致死用量の25倍量の強毒株(CVS株)を筋肉内接種することにより攻撃試験を実施し、各ウイルスの50%感染防御用量(ED50)を算出・比較した。 |
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【結果と考察】 |
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Ni-CE株及びNi-CE AG株を脳内接種されたマウスでは、死亡する個体は認められなかった。Ni-CE株感染マウスの体重が一過性に減少したのに対し、Ni-CE AG株感染マウスの体重は減少しなかった。このことから、Ni-CE AG株がNi-CE株よりも弱毒化されていることが示唆された。106 FFU のNi-CE AG株を免疫されたマウス血清中の中和抗体価の幾何平均値は0.57国際単位(IU)/mlであり、Ni-CE株免疫マウス(0.59 IU/ml)との間に顕著な差は認められなかった。また、Ni-CE AG株のED50は8.0 x 104 FFUであり、Ni-CE株の7.7 x 104 FFUと同程度であった。これら成績は、Ni-CE AG株の免疫原性がNi-CE株と同等であることを示している。 |
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