第8回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次

6 ふれあい動物施設におけるヒトと動物の共通感染症対策について
 
○畠山 薫1)、笹川 はる2)、田島 日出男2)、原 樹子2)、橋崎 文隆2)、内谷 友美1)、奥野 ルミ1)、小西 典子1)
高橋 正樹1)、横山 敬子1)、門間 千枝1)、貞升 健志1)、保坂 三継1)、甲斐 明美1)、矢野 一好1)
1)東京都健康安全研究センター 微生物部、2)(財)東京動物園協会 恩賜上野動物園
 
【目的】
  ふれあい動物施設は、動物と接する機会の少ない来園者が、様々な動物に直接触れることができるため、動物愛護の普及啓発や情操教育の場として重要である。一方で、これらの動物を原因とする腸管出血性大腸菌の集団感染事例等が報告されているように、動物由来感染症に感染する危険性がある場でもある。このため、利用者への注意や、施設の衛生管理、動物の健康管理のみならず、動物を動物由来感染症起因菌フリーにすることが、重要になってくる。今回、ふれあい動物施設で飼育されている動物に対して、動物由来感染症起因菌の実態調査をするとともに、除菌等を試みたので報告する。
 
【材料と方法】
  材料:都内ふれあい動物施設で飼育されている健康な反芻家畜(牛2頭、ヤギ・ヒツジ8群(25頭)、ラマ1頭)、馬2頭、ロバ1頭、ブタ2頭、家禽(アヒル3群(9羽)、ニワトリ6群(30羽))の糞便を検査材料とし、検査を行った。 
 
  方法:検査は、サルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、病原大腸菌(毒素原性大腸菌(ETEC),腸管出血性大腸菌(EHEC)、病原血清型大腸菌(EPEC))、エルシニアの検出を行った。サルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、エルシニアは糞便から直接および増菌分離培養を行った。病原大腸菌は、PCR法で各病原遺伝子の検出を行い、陽性の検体からは菌分離を行った。病原体が検出された個体(群)は抗生物質等の投与により除菌を試みた。
 
【結果と考察】
  サルモネラ、エルシニアは検出されなかった。アヒル3群中3群、ニワトリ6群中5群から、C.jejuni が検出された。また、アヒル3群、ニワトリ1群から表皮剥奪性毒素を産生する黄色ブドウ球菌が検出された。ラマからは、EHEC O139:HNM(VT1,VT2産生)、が検出された。この結果を受けて、ふれあい動物施設では、来園者のふれあい前後の手洗いをより一層強化する、飼育施設の定期的な消毒を行う等の衛生管理の周知徹底を行った。
  また、EHECが検出されたラマは隔離し、抗生物質投与を行ったが、2回目の除菌確認検査でEHEC/ETEC OUT:HNM(VT2,ST産生)が検出され、最終的に除菌確認されるまでに3ヶ月以上要した。健康な動物からEHEC等の除菌を行うには時間を要し、その間、他への拡散も危惧される。このため、動物の定期的な病原体検査を行い、ふれあい動物施設内の蔓延を防止するとともに、検出された際の動物に対しての処置や除菌方法の検討も必要であると考えられた。
 
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